現代の私たちは、スマートフォンやSNSがもたらす情報の濁流の中で、つい「自分のペース」を見失ってしまう。
Z世代を代表する超絶技巧のデュオ・DOMi & JD BECKが約4年ぶりに放つ新作『WHO ASKED?』は、そんな社会のスピード感から意図的に距離を置き、純粋に「自分たちのための音楽」を極限まで突き詰めた末に産み落とされた。
アメリカ・テキサス州のダラスでのミニマルな生活、数か月に及ぶ狂気的な楽譜制作、そしてアンサンブルの「錨」として自身の脆い声を導入するまでの過酷なプロセス。他人の評価や期待を一切遮断し、絶対的な自信とピュアな遊び心で我が道をゆく2人の現在地に迫った。
INDEX
「8時間睡眠、8時間音楽、8時間娯楽」。自分をコントロールし「余白」を作る

2018年のNAMMショーでの出会いを機に結成された、ドミ(Key)とJD・ベック(Dr)による2人組ユニット。SNSでの演奏動画をきっかけに即座に高い評判を呼び、ハービー・ハンコックやサンダーキャットなど数々の名だたるアーティストと共演を重ねる新世代デュオ。2020年の「Adult Swim Festival」でアリアナ・グランデらと共演したほか、シルク・ソニックのシングル「Skate」を共作し大きな話題を呼ぶ。2022年にはアンダーソン・パーク主宰レーベル「APESHIT Inc.」および名門「ブルーノート・レコード」と契約し、デビュー・シングルをリリースした。
ー前作の後、SNSから少し距離を置き、ダラスで「8時間睡眠、8時間音楽、8時間娯楽」という規則的でミニマルな生活を送っていたそうですね。現代の私たちはスマホやSNSのスピード感に疲れ、「自分のペース」を見失ってしまうことがよくあります。この生活スタイルは、あなたたちの心の平穏や、音楽をつくるモチベーションにどんな良い影響を与えてくれましたか?
DOMi & JD BECK:スマホやSNSなんかに邪魔されないようにしていて。音楽を作ることが地球上で一番好きなことだから。
結局のところ、「自分をコントロールすることができるかどうか」は自分たち次第。8時間しっかりと仕事をして、8時間たっぷり寝たとしても、まだ毎日8時間も自由な時間が残っていて、好きなことができる。
とはいえ、アルバム制作のためにこれほど細かくスケジュールを組んだのは、初めてのことで。4か月で、アルバムにおけるすべての「音符とリズム」を楽譜作成ソフトで書き上げたり、本当にたくさんのことをやることができました。
マイナス面を挙げるなら、頭をリフレッシュさせるための十分な「休み」の重要性に気づいていなかったことで。2年間ぶっ続けでやったせいで、完全に燃え尽きた時もあって、良い教訓になりました。
ー過去に「音楽が金儲けの道具になっている現状を変えたい」と語り、今作を「完全に自分たちのために、利己的に作った」とおっしゃっていましたね。純粋な楽しさを守り抜き、他人の目を一切気にせず「これで完成」と決断を下すために、日々の生活や制作で意識しているマインドセットを教えてください。
DOMi & JD BECK:僕らは直感に従って、道徳的に正しくないと思うことから距離を置くようにしていて。特定のルールがあるわけじゃないけど、大抵は直感で「これだ」ってわかる。
でも、「これで完成だ」と決断するのは、僕らにとっても常に戦いで。今回の制作で学んだのは、何度も試してうまくいかない時はもっと早く方向転換しなきゃいけないし、1つのアイデアに固執しすぎないように、十分な「余白」を作らなきゃいけないってことです。