『ラムネモンキー』(フジテレビ系)、『リブート』(TBS系)、『ばけばけ』(NHK総合)の脚本と主題歌の奇跡的な組み合わせ、ドラマファンも驚いた『探偵さん、リュック空いてますよ』(テレビ朝日系)の演出と『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)の今泉力哉監督による連続ドラマという企画……
3人のドラマライター=藤原奈緒、明日菜子、北村有と、ドラマレビュー記事の編集を手がけるオレンジいわさきが、2026年冬ドラマを振り返りつつ、4月からいよいよスタートする春の新ドラマについても展望する。
※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
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Bialystocks、鈴木雅之 feat.篠原涼子、秦基博……印象的だった主題歌たち
オレンジ:前回の記事では、2026年冬ドラマで印象的だった俳優について話しましたが、ここからは脚本、演出、キャスティング、企画、音楽など、作り手の面で印象に残った人や作品について伺いたいと思います。
明日菜子:脚本が印象的だったのはやっぱり『ラムネモンキー』の古沢良太さんですね。連ドラでここまで楽しませてもらって感謝しかないです。音楽も良くて、劇伴音楽も担当していたBialystocksは、主題歌の“Everyday”も含めて全て良かったです。
オレンジ:『ラムネモンキー』のBialystocksは素晴らしかったですね。今までも『先生のおとりよせ』や『きのう何食べた? season2』などテレ東ドラマで主題歌は手掛けていましたが、連ドラの劇伴は初めてとのことです。メンバーの甫木元空さんは映画監督としても活動されていて、過去の映画音楽に似たテイストを感じさせつつ、本作の古い時代設定に見事にマッチした音楽を作り上げていました。
明日菜子:主題歌だけでなく劇伴まで担当されているからこそ、作品全体の統一感が凄かったです。
オレンジ:既存のミュージシャンが劇伴まで手がけるチャレンジは、映画では数多くあっても、ドラマではまだ珍しいですが、今後は今泉監督によるドラマの劇伴をHomecomingsが全て担当するといった展開もあるかもしれません。ドラマを通じてミュージシャンを知る新しい流れを生んだことも含め、『ラムネモンキー』は素晴らしい仕事だったと思います。
明日菜子:『冬のなんかさ、春のなんかね』のHomecomings“knit”も、ドラマの空気感を軽やかにしてくれる素晴らしい曲だと思いました。今期は主題歌が全体的に豊作で、『リブート』のMr.Children“Again”もすごく良かったですね。
北村:私も今期のドラマの主題歌は好きなものが多いですね。『俺たちバッドバーバーズ』(テレ東系)のポルカドットスティングレイ“Boy Boy”のロックな感じや、『パンチドランク・ウーマン』(日本テレビ系)の鈴木雅之 feat.篠原涼子“Canaria”も曲単体として非常に魅力的でした。
明日菜子:あの歌謡曲のようなメロディは確かに耳に残ります。『パンチドランク・ウーマン』はむしろ主題歌の方に寄せて、内容をサスペンスでなく愛憎劇に振り切ってみてほしかった!
北村:あとは深夜ドラマの『マトリと狂犬』(MBS)のGero“イノチケズリ”も、曲単体で見たらすごい好きですね。
オレンジ:主題歌の中では、『未来のムスコ』(TBS系)の秦基博“ポケットに魔法を入れて”も印象的でした。これまでに秦さんが手掛けてきたドラマの主題歌以上に、今回は強く印象に残る曲だったと感じます。
藤原:音楽では、『替え玉ブラヴォー!』(NHK総合)のラストで流れるつらっPとおこっPのテーマソングの使い方も、同じNHK夜ドラの前作『ひらやすみ』(NHK総合)の劇中歌“Keep on rolling”に続いて効果的で良いなと感じました。
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『ばけばけ』ふじきみつ彦、『リブート』黒岩勉の脚本の力
藤原:脚本では、やはり古沢良太さんや今泉力哉さんの凄さを改めて思い知らされましたね。
オレンジ:脚本について、僕は『ばけばけ』のふじきみつ彦さんを挙げたいです。正直、『バイプレイヤーズ』(テレ東系)などこれまでのふじきさんの作品から予想していたものを超えてきました。個人的には、最近の朝ドラの中でもベストに入る作品です。コメディで笑わせつつグッと来させるセンス、そして最終回直前の「無音で30秒キープする」ような演出も成立させる物語の説得力が見事でした。
明日菜子:それは本当にそうですね(笑)。主題歌賞もハンバート ハンバート “笑ったり転んだり”で間違いないです。
オレンジ:今期の脚本では『リブート』の黒岩勉さんも流石でした。毎回楽しませる要素を設けつつ、先々の展開を緻密に仕込んで、後から鮮やかに回収していく。一香(戸田恵梨香)のリブートなど視聴者が予想していたであろうことの先にある感動を伝える手腕に、脚本家のトップランカーとしての凄みを感じました。
明日菜子:最近は日常系のドラマが多く、ダイナミックな展開を書く人が少ない中、黒岩さんのような「ザ・ドラマ」を感じさせる脚本は貴重です。是非いつか大河ドラマも書いてほしいですね。ふじきさんについても、初めて長期のドラマを書き切るという大きな挑戦の中、CMプランナーや放送作家などの経験を経てきたふじきさんならではの多角的な視点が『ばけばけ』の脚本には詰まっていたと感じます。
藤原:『ばけばけ』は日常の機微はもちろん、終盤は、彼の本分である作家業と、家族のために生きることの間で悩むヘブンの姿が描かれていることが印象的でした。最終週の前半などは実在の人がモデルだからこそ、その「ウラメシサ」を描くんだと、すごくスリリングな展開のような気がして、固唾を呑んで見守らずにはいられなかったです。2人の夫婦愛を愛おしく描きつつ、何かを失いながら生きていくことの残酷さについて考えさせられました。
明日菜子:ふじきさんの脚本もハンバート ハンバートさんの主題歌も、トキさんのモデルとなった小泉セツさんの手記『思ひ出の記』を参考に制作されているんですよね。あれだけ「私には書けない」と言っていたおトキちゃんが、最終的に手記を書き、そこに帰結するラストが素晴らしかった。
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『探偵さん』の演出、『冬のさ春のね』の企画がもたらしたドラマの新たな可能性
オレンジ:演出面では『探偵さん、リュック空いてますよ』が面白かったです。沖田修一監督が軸となりつつ、近藤啓介監督や東かほり監督といった若手にエピソードを任せる座組が機能していました。「お湯」が主役の第5話「Electric 蟻電流 スチームdeathボイス」には、非人間的なものに命を吹き込むのが得意な東監督を起用するなど、適材適所のスタッフィングも作品の広がりを生んでいました。空を飛ぶシーンのあえての「チープさ」など、一般的な演出家ではやらないような遊び心のある演出も良かったです。
明日菜子:沖田監督だけでなく、各監督の個性にもフォーカスした作品だったのですね。
オレンジ:そうなんですよ。良いフックアップだと思います。あと、キャスティングでは『リブート』の東仲恵吾プロデューサーの功績が大きいですね。今までにも『ラストマンー全盲の捜査官ー』『グランメゾン東京』『99.9-刑事専門弁護士-』など日曜劇場を手がけてきた方ならではの豪華な布陣を見事に実現させていました。また、企画賞をあげたいのは『冬のなんかさ、春のなんかね』の道坂忠久さん。もともとバラエティ出身の方ですが、ドラマ制作に入ってから『街並み照らすヤツら』や『ホットスポット』など既存のドラマの枠組みを外れた印象的な作品を次々と生み出しており、注目すべきプロデューサーだと思います。
明日菜子:プライム帯の連ドラ全10話を今泉力哉監督に任せたというのも、よくぞ呼んでくれたという感じでしたね。
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2026年春ドラマ展望。豪華ラインナップのオリジナル脚本とヒットメイカーの新作
オレンジ:続きまして、いよいよ始まる2026年の春ドラマについて展望を伺えればと思います。
明日菜子:2026年の春ドラマは、例年より盛り上がる豪華なラインナップだと感じています。冬ドラマは、オリンピックや選挙で放送が休みになるなどの影響もありましたが、その分、春ドラマに力を蓄えていた局が多いのではないでしょうか。
北村:まだあらすじを確認した程度ですが、面白そうな作品が多いですね。特に日曜劇場で堤真一さんが帰ってくるのは楽しみです。『東京サラダボウル』(NHK総合)、『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)を手がけた金沢知樹さんの完全オリジナル脚本でパラスポーツを描く『GIFT』(TBS系)ということで、日曜劇場の新しい挑戦に期待しています。
藤原:『舟を編む〜私、辞書つくります〜』(NHK総合)、『あの子の子ども』(カンテレ)の蛭田直美さん脚本『銀河の一票』(カンテレ)や、『マイダイアリー』(テレビ朝日系)、『わたしの一番最悪なともだち』(NHK総合)の兵藤るりさん脚本『時すでにおスシ!?』(TBS系)など脚本家陣も楽しみな作品が多いです。あと、日曜10時の『エラー』(テレビ朝日系)を手がける弥重早希子さんは、『3000万』(NHK総合)を手掛けた脚本家さんの1人なんですよね。全てオリジナル脚本のようで、今期はオリジナル脚本のドラマに期待しています。
オレンジ:個人的には『銀河の一票』のプロデューサーが『大豆田とわ子と三人の元夫』『エルピス-希望、あるいは災い-』(共にカンテレ)などの佐野亜裕美さんであることや、岡田将生さん・染谷将太さん主演の『田鎖ブラザーズ』(TBS系)のプロデューサーが『アンナチュラル』『最愛』(共にTBS系)などの新井順子さんであることなど、ヒットメーカーのプロデュース作が同クールに並ぶという点にも注目しています。
明日菜子:私も『銀河の一票』は楽しみすぎます。蛭田直美さんは、『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(カンテレ)でも一部の回の脚本を担当されてましたが、今回は、全話をオリジナルで描かれる政治ドラマということで、非常に楽しみです。