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SB19が語るグローバルでの成功と壁。フィリピンが抱えるビザの問題、「P-POP」の現状

2026.4.11

SB19

#PR #MUSIC

フィリピン発のボーイグループ・SB19の勢いが止まらない。

2026年3月27日にリリースされたニューアルバム『Wakas at Simula』には、BE:FIRSTとのコラボ楽曲“Toyfriend”が収録されているほか、アメリカの『Lollapalooza』や日本の『SUMMER SONIC』といった世界的な大型フェスへの出演も次々と決定。まさに世界を席巻し始めている。

彼らのクリエイションの根底にあるのは、自らの事務所「1Z Entertainment」を立ち上げ、楽曲や映像制作のすべてを担う「セルフプロデュース」への並々ならぬ覚悟だ。

7000以上の島、180以上の言語をもつといわれるフィリピンから「P-POP」を牽引する彼ら。今回のインタビューでは、新曲に込めた社会構造へのユーモアあふれるカウンターから、「世の中のノイズ」に抗い自分らしさを貫く信念まで。異なる5人の個性がひとつに混ざり合う、SB19の現在地を紐解く。

5人の個性×セルフプロデュースが生み出す、SB19の音楽

─まずSB19とは、どのようなグループでしょうか。

パブロ:僕たちはそれぞれ違う個性を持つ5人が集まったユニークなグループです。音楽を作るときには、それぞれの個性やスタイルといった「材料」を持ち寄り、ひとつに混ぜ合わせるからこそ、豊かな作品ができる。そうやって、SB19にしか生み出せない音楽を作っているんです。

SB19(エスビーナインティーン)
フィリピン出身の5人組ボーイグループ。パブロ、ジョシュ、ステル、ケン、ジャスティンの5人で構成。フィリピン発のポップ(P-Pop)を世界的なジャンルへと牽引し、世界各地でのツアーをソールドアウト。2026年3月には『D.U.N.K. Showcase in K-Arena Yokohama 2026』に出演し、BE:FIRSTとのコラボ曲“Toyfriend”を披露した。2026年は『Summer Sonic』や『Lollapalooza』への出演も決定しているほか、3月27日には前述のコラボ曲を収録したニューアルバム『Wakas at Simula』をリリース。

―パブロさんが楽曲のプロデュースの中心を担っているかと思いますが、個性やスタイルといった「材料」を大切にするうえで、どのようなことを意識していますか。

パブロ:ボーカル面でいうと、それぞれのパートに対して「誰が一番楽曲のメッセージを上手く表現し、届けられるのか」を本気で考えてます。それぞれ声域が違う5人の声を活かすために、メンバーのことを思い浮かべながら曲を作っていくんです。「ここは低音パートだからケン」「ここは高音だからステルかな」「遊び心あるパートだから、ジョシュか僕がいいかも」って。

ジョシュ:パブロは生まれながらにして、ストーリーテラーなんですよ。昔から詩を書いてたし、たしか小説みたいなものも書いてましたね。出会った当初は、正直ちょっと変わった人だと思っていたんですけど、付き合いが長くなるにつれて理解できるようになったんです。パブロって、頭の中のあらゆることを言語化するのが得意なんですよ。それは彼の大きな強みのひとつだと思っています。

パブロ:だから、僕は最高なんですよ(笑)。

パブロ

―とはいえ、セルフプロデュースでアーティスト活動をしていくのは、なかなか簡単なことではないと思うんです。

パブロ:「SB19」を表現するのに一番適した方法がセルフプロデュースだったんですよね。練習生時代は、ステージの見せ方を教えてくれる授業以外に何も教えてもらえなくて。歌い方やダンス、レコーディングまで、自分たちで勉強したり、お互いに教え合ったりしてスキルを磨くしかなかったから、今でも自分たちの経験や、やり方を大切にしている節があるんです。それこそ以前は、メンバーが振り付けを作ったり、ミュージックビデオをディレクションしたり、制作に関わるほとんどのことを自分たちでやっていたくらい。だから僕たちは、新しい曲を作ったり、何かを発信するときは、まずみんなで集まって、自分たちでしっかりとベースを作ってから、僕らをよく理解してくれているチームにサポートしてもらって、より良い作品へと進化させていくんです。

ジョシュ

宇多田ヒカル、ONE OK ROCK、藤井風……彼らが影響を受けた日本のアーティスト

―セルフプロデュースを行っていくうえで、影響を受けたアーティストはいますか。

パブロ:世界には、本当にたくさんの素晴らしいアーティストや作品が存在していますよね。僕自身、最近は舞台や映画をよく観るんですけど、音楽とは直接関係なくても、そういった芸術からは様々なインスピレーションをもらっています。世界中に溢れている美しいものや素晴らしいものに、少し立ち止まって目を向ければ、何かしら得られるものがあるんじゃないかな。

ステル:自分たちの過去の出来事からインスピレーションを得ることもあります。でも、僕たちは5人グループで、それぞれ人生に対する視点も違うから、ケースバイケースですね。

ステル

―ちなみに、影響を受けた日本のアーティストはいますか?

パブロ:ONE OK ROCKですね。高校と大学の頃、一番好きなバンドでした。“Be the light”や“Wherever you are”とか力強いし、元気になる曲ばかりです。

ジョシュ:宇多田ヒカルかな。たしか彼女は、たくさんのオリジナルサウンドトラックを手掛けていますよね。

ケン:僕はWANDSが大好き! (<大都会に僕はもう一人で>と“世界が終るまでは…”を歌い出す)日本のバンドも日本の曲も、僕らは大好きですよ。

ケン

ジャスティン:自分にとっては、RADWIMPSかな。『君の名は。』で曲を聴いて、いいなと思いました。

パブロ:いい映画だよね!

ステル:僕は車を運転しているときに、藤井風をよく聴きます。彼の曲を聴くたびに、かつて愛媛に住んでいた頃の記憶が蘇ってくるから、大好きなんです。

―多種多様な個性や影響源を大切に扱いながらも、グローバル市場もしっかり見据えている印象があるのですが、自分たちの色と世界照準のバランスをとるために、意識していることはありますか。

パブロ:グローバル市場についてか……。本音を言うと、外側のことはそこまで意識していないんですよね。だって、人と真のコミュニケーションを取るために一番大切なのは、自分自身に正直でいることだと思うから。自分たちがリアルなものを発信していれば、ちゃんと伝わるし、本物として感じてもらえる。そして、僕らが作った曲に共感したり、自分自身を重ねたりしてくれると思うんです。

だから、いわゆる「グローバルなサウンド」とか「どうやって好かれるか」みたいなことは、あまり考えていません。肝心なのは、グループとして何を求めていて、個人としてどうあるのか。それが、僕らが「本物」として音楽を作るための方法なんです。

ジョシュ:実際のところ、僕たちの好みもそれぞれですしね。ただ、僕は「どんなことでも信念を持って本気で向き合い、真剣に取り組んでいれば、きっと見つけてくれる人がいるはずだ」と、今でも信じています。

ジャスティン

世の中のノイズに抗い、本来の自分をさらけ出す「リアル」への覚悟

―これまでも話題に出てきた「本物」や「正直」というのは、SB19を語るうえで大切なキーワードかと思います。改めてお伺いしたいのですが、みなさんにとって「リアル」とは、なんですか?

ジョシュ:難しい問題ですね……。

ジャスティン:僕にとって「リアルであること」は、「表現すること」や「決めること」と同じ意味です。自分で決めたこと、それこそが「リアル」。自分がやりたいと思ったからこそ、その行動を選んでいるわけだから。

ケン:僕は「ありのままの自分を受け止めること」だと思います。自分の欠点や弱さも含めてね。痛みとは何か、幸せとは何か、哀しみとは何かをちゃんと認めること。そういう状態が「リアルであること」なんじゃないかな。それに、本当の意味で心を開いていれば、周りの人に対しても自然と「リアル」でいられると思うんです。

ケン

ステル:「リアルであること」は、「居心地のいい場所から一歩踏み出すこと」であり、「失敗を恐れないこと」でもあると思います。大切なのは、その瞬間の自分の気持ちに、正直でいること。どんな些細なことでも、くだらないことでも、個人的なことでも、ためらわずにシェアする。周りの人に心を開いていけば、自分の本当の気持ちを理解してもらえたり、感じ取ってもらえたりすると思うんです。

―ジョシュさんは、どうでしょうか。

ジョシュ:ずっと考えていたんだけど……本当に難しい質問だよね。でも、「リアルであること」って、「目の前にあるすべてが現実ではないと受け入れること」な気がする。

ステル:え、どういうこと?

パブロ:つまり、今のこの時間も現実じゃないってこと?(笑)

ジャスティン:じゃあ、これ(机にあるものを指差しながら)も偽物ってこと?

ステル:そんな!(笑)

ジョシュ:僕の中ではもっと深い意味があるつもりなんだけどな(笑)。でも基本的には、今みんなが言ってくれたようなことだと思います。「リアル」っていろんな解釈ができますよね。

パブロ:僕にとって「リアルであること」は、すごくシンプルだけど、複雑なことでもあると思ってて。特に今の時代は、差別や偏見も多くて、ありのままの自分でいることが難しくなってるじゃないですか。自分に正直でいるのって、すごく勇気が必要なんですよね。でも、自分の日記を誰かに読ませるように心を開くことで、相手にも「自分らしさ」を知ってもらうことができる。

僕たちはそれぞれ違うように見えて、同じような部分もたくさん持っている。みんな感情があるし、時には怒ったりもする。でも、世の中のノイズのせいで、本来の自分を見失ってしまうこともある。だからこそ、音楽を通して本来の自分を思い出せるならば、それが「リアル」ってことだと思います。

パブロ

―みなさんが1Z Entertainment(※)を立ち上げたのも、「リアルである」ための選択のひとつだったりしますか?

パブロ:そうですね。

※1Z Entertainment:SB19が自ら立ち上げ、パブロがCEOを務める事務所。

ジャスティン:僕たちがアーティストとして活動していくなかで、グループとしての意志や、本質を貫くことの大切さをより強く感じるようになったんです。自分たちの足で立ち、本当の自分たちを表現していきたいと考えた結果、1Z Entertainmentを作るという決断をしました。

パブロ:ジャスティンが話してくれたのは、アーティストとしての、つまりSB19としての話だったと思うんですが、僕たちが考える「リアルさ」って関わるすべての人のなかにあるものだと思うんです。なぜなら、この業界はアーティストだけで成り立っているのではなく、クリエイターやアーティストマネージメントなど、たくさんの人が関わっていますよね。そして、そのなかには自分の仕事に情熱を注ぎ、業界をより良くしたいと思っている「リアルな人」もたくさんいる。もしそういう人と出会えたら、1Z Entertainmentという僕らの家に迎え入れて、みんなで業界を底上げしていきたいとも考えています。

―グループ結成からの7年間で、一番大きなターニングポイントを挙げるとしたら、いつでしょうか。

ジョシュ:これまでいろんな困難に直面してきましたが、一番大きかったのは、自分たちのグループ名が使えなくなった(※)ことですね。商標に関して、大きな問題があって。

※2023年の独立時、商標権の問題で一時的に「SB19」の名が使えない時期があったが、同年12月に前事務所と和解し、正式に使用している。

パブロ:結成から5年以上かけて積み上げてきた努力が、一瞬にして消えてしまうかもしれないというのは、本当に大きなストレスでした。しかも、あの時期はワールドツアーも控えていて、すべてをキャンセルせざるを得なかった。当然、ファンやブランド、公演を制作してくれたプロデューサー、パートナーからもたくさん心配の声をいただきました。マネジメント同様に僕らのチームも、法律問題や裁判、PR対応、さらにはこの状況をどうやって業界全体に伝えるかといったことで、かなりのプレッシャーを感じましたね。

ジャスティン:自分たちが活動のなかで本当に望んでいることは何なのかって、真剣に考えました。過去数年で積み上げてきたすべてのことを大切に見つめ直すのと同時に、未来のことも考えて。

ジョシュ:あの期間のおかげで、たくさんの気づきもあったんです。アーティストとしての在り方やこの業界、そして自分たちの人生について、深く考えるきっかけになった。結果として、今あるものや自分たちがやってきたことに対して、より感謝できるようになりましたし、何か問題が起きたときには、すべてをチーム全体で考えて解決しようと試みるようにもなりました。

―困難を乗り越えるときには、どのようなことを大切にしていましたか。

ジョシュ:すべてが繋がっていると思います。新しい課題に直面するたびに、いろんなことを考えさせられる。チームのことはもちろん、自分自身のことも「これからどうなるんだろう?」「この道は正しいのか?」みたいな感じで、頭のなかで自問自答してるんです。でも最終的には、良し悪しに関わらず、腹をくくって選んだ道を正解にしていくだけですね。

パブロ:なんていうか、僕たちはペンギンみたいな感じなんですよ。普段はそれぞれが自立して安定しているけど、すごく寒くて風が強いときには、ギュッと集まる。そんなふうにコミュニケーションを取りながら、支え合っています。

ステル:幸いなことに、僕らには僕たちの決断を支えてくれる強いチームもいて、僕たちが孤独を感じないように全力を尽くしてくれている。活動に必要なサポートをしてくれるのはもちろん、精神的な支えにもなってくれているので、本当に感謝しています。今の自分たちがあるのは、彼らのおかげでもあるんです。

ステル

ユーモアで国境を越える。“VISA”に込めた社会へのメッセージ

―ここからは、楽曲についてもお話を聞かせてください。“VISA”を通して伝えたかったのは、どのようなことでしょうか。

パブロ:個人としても、チームとしても、フィリピン人はとても才能があって、大きな夢を持っています。しかし、自分たちではどうにもできない仕組み(※)によって、私たちの成長や文化・音楽を世界中に広めることが妨げられているのが現状です。実際のところチャンスを掴みやすい環境かどうかって重要じゃないですか。

さらに踏み込んだ話をすると、フィリピンで本当に大きな成功を収めるためには、まず「世界での評価」が必要とされているようにも感じているんです。それがあって初めて、国内から本格的な支持を得られるというか。少し寂しいことですが、現実に大きく影響してくる部分でもあるので、こうした問題について話し合っていきたいんですよね。

※フィリピンのパスポートは世界的に見て自由度が低く、ビザなしで渡航できる国は65カ所に留まるという現状がある。

https://youtu.be/0t6GNcINKeU?si=wbYZlZk-rTxGRiQD

―フィリピンの人たちが深く共感すると同時に、国外へもフィリピンの現状を投げかける作品になったかと思います。制作の時点では、国内外のどちらをターゲットとしていたのでしょうか?

パブロ:両方ですね。これは特にフィリピン国内の問題なんですけど、正直すごくフラストレーションを感じていて。フィリピンには大きな可能性があるのに、その可能性を引き上げるはずの仕組みが上手く機能していないんです。そういう状況が本当に歯がゆくて。

ジョシュ:だからこそ、作品に込めたメッセージを、リスナーだけではなく、いわゆる国の上の立場の人たちにも届けたい。そうすれば、少なくとも「仕組みを変えていかなければならない」という意識が生まれて、古い慣習は進化していくはずだから。

ジョシュ

―国内外へ向けてメッセージ性の強い曲を発信できるようになったのは、SB19の影響力が増してきたという側面もありますか?

パブロ:そうですね。影響力がないうちは、誰も話を聞いてくれない。今でこそ影響を与えられる立場になったけど、それでも僕たちは親しみやすい伝え方を選び続けています。

というのも、“VISA”ではかなり皮肉を込めたアプローチをしていて。何かを証明しようと真正面から訴えかけても、相手は聞く耳を持たなかったり、拒否されたりすることってあるじゃないですか。でも、ユーモアを交えて語りかけると、相手が受け入れやすい。だからこそ、遊び心のある楽曲のなかに意味やメッセージを織り込んで、僕たちの考えを伝えようとしているんです。

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