DYGLが4月、自主企画イベント『Crossing 2026』を開催する。今回のツアーでは、沖縄でTexas 3000、大阪でテレビ大陸音頭、愛知でZAZEN BOYS、そして東京でkanekoayanoをそれぞれ招聘。「交差点」の冠にふさわしく、ここでしか見れない対バンを繰り広げる。
2012年の結成以来、全編英詩のギターロックを追求してきたDYGLは、昨年リリースの5thアルバム『Who’s in the House?』で新たなフェーズへ突入。パンキッシュな初期衝動を解き放つ現在のモードは、目下制作中の次作でさらに先鋭化しているという。
そんなDYGLがいま、シンパシーを寄せているのがテレビ大陸音頭だ。2024年、”俺に真実を教えてくれ!!”のバイラルヒットで音楽シーンからお茶の間にまで衝撃を与えた彼らは、大学に進学した現在も、予定調和を拒む破天荒なライブで観客を圧倒し続けている。世代が一回り離れた両バンドが惹かれ合う理由とは。DYGLの秋山信樹と下中洋介、テレビ大陸音頭の千代谷竜司と鈴木隆太郎に、様々なアングルから語り合ってもらった。
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相思相愛なDYGLとテレビ大陸音頭の出会い

─LIQUIDROOMで開催された『UNDERCITY』でテレビ大陸音頭のライブをご覧になったということで、いかがでした?
秋山:新しいヒーローを観ている気持ちでした。なんかゲームが変わる瞬間ってあるじゃないですか、「この発想なかったな」みたいな音を聴いて。それは別に世の中的に新しいとかだけじゃなくて、自分の中でいろいろ音楽を聴いているうちに、音楽観みたいなものが固まっちゃったりするんですけど、テレビ大陸音頭の曲もパフォーマンスもそれを壊してくれて、新しいワクワクがありましたね。
千代谷:嬉しい……。
─喜び方が素朴で良いですね(笑)。
秋山:俺も嬉しくて、ついライブを観ていると分析してしまう頭になってしまうんですけど、テレビ大陸音頭を観ている時の「今何観てるんだろう」みたいな気持ちになるときの感覚が本当に好きなんですよ。

─下中さんはライブを観てどうでした?
下中:音楽を作る人には、肉体的なビートの感覚がある人とない人がそれぞれいるなとは思ってるけど、彼らは完全にその感覚がある人たちで、僕はそういうバンドが好きで。どの曲も絶対に身体が反応するパートがしっかりあって、あとは無駄が全然ない。グルーヴが1個あったらそれを邪魔する要素が全然ない演奏になってると思って、本当に良かったっていうか勉強になりました。
─べた褒めですね。
下中:あと、さっき秋山がヒーローって言ってたけど、ライブの随所で千代谷くんが言う言葉が全部、すごい主人公っぽくて。なんか少年漫画見てるみたいで、心が熱くなりますね。
─「主人公感」って言われてますけど、どうですか。
千代谷:札幌でライブしたときに、1曲目に熱いEMOというかeastern youthみたいな曲をやったんですけど、そのライブを観てくれた人から「『BLUE GIANT』を見てるようだ」って言われたのが残ってて。漫画も好きだし、「自分はヒーローになったるんだ!」みたいなマインドは持ってるかもしれない。

2023年に北海道札幌市の高校軽音部で結成された4人組オルタナティブロックバンド。1980年代のポストパンクやニューウェーブに影響を受けたサウンドでSNSを中心に注目され、“俺に真実を教えてくれ!!”がSpotifyバイラルチャートで1位を獲得。2025年には『FUJI ROCK FESTIVAL』の「ROOKIE A GO-GO」にも出演。
─テレビ大陸音頭への思いを一気に語ってもらったけど、逆にDYGLのことは以前からご存知でしたか?
千代谷:小6とか中1とかで音楽に興味を持ちだして掘っていくうちに、YouTubeの「みのミュージック」でNo BusesとかDYGLを知って。“A Paper Dream”、“Spit It Out”とか入ってるアルバム『Songs of Innocence & Experience』(2019年)でめちゃくちゃくらいましたね。
─思った以上に相思相愛だけど、鈴木さんはどうですか?
鈴木:コロナの頃に車のCMをやられてたじゃないですか。僕はあれでDYGLの名前を知りました。
千代谷:あの曲はマスタリングまで自分たちでやられたんですか?
下中:“Sink”が収録されてる3rdアルバム『A Daze In A Haze』はhmc studioの池田(洋)さんに録音からミックスまでやってもらって、マスタリングは木村健太郎さんです。ちなみに最新のアルバムは、ステファニーというエンジニアさんが録音からマスタリングまでやってくれています。4thアルバム『Thirst』は録りもミックスも自分たちでやってますね。
鈴木:音がすごい良くて、そうなりたいなって思ってます。

2012年、大学のサークル内で結成された東京都出身の4人組オルタナティブロックバンド。US / UKインディーロックやガレージパンクを血肉としたサウンドでグローバルな評価を確立してきた。2025年には5thアルバム『Who’s in the House?』をリリース。数々の大型フェスでも熱狂的なライブを披露し、存在感を放っている。
秋山:もうなってるけどね(笑)。別に音に正解とか不正解があるわけじゃないけど、テレビ大陸音頭は自分たちの鳴らしたい音の方向も、めちゃくちゃ見えてるなと思って。
別のメディアでインタビュー受けてるのを読ませていただいたんですけど、メンバー間の話し合いで出てくるアーティストが、みんな同じ方向に見えてるのがすごいなと思って。俺らの場合は好きなものが被ってるところとそうじゃないところが結構激しいから、アルバムごとに違うバンドみたいになっちゃって。実際セットリストを組むときに、これどういうバンドとして見せればいいんだろうって結構難しいところもあります。
今の時点でテレビ大陸音頭は音楽の方向性だったり、曲の中でいろいろ面白い実験をしてるけど、いつも「これがテレビ大陸音頭っぽい」っていう軸があるのがすごいなって思ってます。軸があるのに、まだジャンルとしても言葉が追い付いてないし、追いつく前には次に行きそうな感じとかライブからもすごく感じられたんで、音作りの面では俺らのことを気にしなくて良いと思います(笑)。
千代谷:やりたいことがまだ全然見えてないんです。自分たちのことを全然理解し切れてないというか、何が自分たちらしいのかまだ全然見えてないままやってます。

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「似てる」が勝ったらボツ。オマージュとオリジナリティの境界線
下中:今日聞こうと思ってた話なんですけど、例えば音楽を作るときに、ある程度ジャンル感というか、カテゴライズされるものがないと訳わからないものとして捉えられちゃうじゃないですか。とはいえカテゴライズされたら面白くないし、テレビ大陸音頭ってそのあたり絶妙なバランスだから、どう考えてるのかなって気になってて。でも今聞いた感じ多分無意識なんですね?
千代谷:そうですね。無意識かもしれないっすね。
鈴木:でも、これあれに似てるねって言ったら即ボツとかありますし、まんま一緒の時とかあるね。Minutemenのリフそのままとか。
秋山:それはOKしたパターンもあるってことですか?
千代谷:あります。
秋山:似てるけどOKとかの、その境目はどうなってるんですか?
千代谷:かっこ良かったらOK(笑)。
秋山:似てるしかっこ悪いってなっちゃったらダメと。
千代谷:そうっすね。自分たちがうまく消化しきれているか、しきれていないかみたいな。

下中:かっこいいより似てるが勝ったらボツ?
千代谷:でもthe pillowsの“ガールフレンド”にめちゃくちゃ似てる曲があって……俺は結構好きだったんだけど、他の3人が「the pillowsだねこれは」って(笑)。
─でもDYGLもあるでしょ? 「あのフレーズっぽいな」みたいな。
秋山:曲を出してから、言われて気づくみたいなことはありますね。でもやってる最中から、これはマジで似すぎてるからここのフレーズだけ変えてほしいって思う時もあるし、自分で変える時もある。でも、似てるけどありか、似ててなしかの境目結構難しいですね。たしかに「DYGLっぽくなってたらあり」っていう風に思ってるかもしれないですね。
─ちなみにMinutemenの曲はもうリリースされてるんですか?
鈴木:音源では出してないですね。
─なんていう曲名?
千代谷:えっと……“Minutemen”っていう曲です。
一同:(笑)
秋山:ちなみに俺らもまだここから曲名変えようとしてるんですけど“The Cramps”って曲もあります。
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「新たな気づきをくれるバンドとクロスオーバーしていく方が、今の自分たちにとって刺激になると思って」(秋山)
─そんなテレビ大陸音頭をDYGLが今度のツアーに呼ぶっていうことで。いい顔ぶれじゃないですか、Texas 3000、ZAZEN BOYS、kanekoayano、そしてテレビ大陸音頭っていう。これはどういうブッキングの妙があったんですか?
秋山:自分たち的には、USのオルタナとかUKインディー、ポストパンクリバイバルから影響を受けてるような、近いことをやっている日本のバンドと仲良くなりがちだったんです。でも、違うフィールドでやっていてもそれぞれのスタイルがあって、音楽的なエネルギーをもらえたり、新たな気づきをくれるバンドとクロスオーバーしていく方が、今の自分たちにとって刺激になると思って。だから今回は、純粋にライブを観たいなと思えるバンドに声をかけさせていただいたって感じですね。

─だからツアータイトルが『Crossing』だと。世代もキャラも違う、すごい4組ですよね。だってZAZEN BOYS大好きでしょ?
千代谷:大好きっすね。
─ZAZEN BOYSの好きなポイントは?
千代谷:ZAZEN BOYSの好きポイントは……あんなことをやってるのってZAZEN BOYSぐらいしかいないし。ZAZEN BOYSみたいなことやってたら「ZAZEN BOYSみたいだね」って言われるし、めちゃくちゃ音楽性は奇天烈なのに踊れるし。
─テレビ大陸音頭は以前からZAZEN BOYSが好きと語っていたけど、DYGLからZAZEN BOYSが出てきたのはちょっと意外っていうか。なぜZAZEN BOYSを呼んだんですか?
下中:フェスでZAZEN BOYSと一緒になる機会があったんですけど、楽屋の姿とかステージ横でライブを観ていてもアティチュードというか音楽への集中力の鋭さが他のバンドと違うし。ちょっと1回交わってみたいなって。

─秋山さんはどうですか? ZAZEN BOYSへの思いとか。
秋山:元々は大学の同級生や先輩から教えてもらってNUMBER GIRLとZAZEN BOYSの存在を知ったんですけど、バンドの凄さが本当に分かったのは、実際にライブを観始めてからですね。海外のポストパンクとは全然違うアプローチで日本語を構築しているし、何より演奏のタイム感が普通じゃない。軸がぐにゃんと歪んだり、ブレイクの後に普通はカウントできないところで入ってきたり。これって今のテレビ大陸音頭にも言えることなんですけど、そういうアプローチのライブに惚れ込んだって感じですね。
─なるほどね。でも確かにさっきの話にも出た「身体性」というか、リズムが演奏にあるみたいな話はまさにZAZEN BOYSに当てはまる気がしますね。
秋山:そうですね。その身体性みたいなことはすごく話してて。自分たちもアルバムをリリースしていくなかでいろんな変遷があったんですけど、コロナ禍で外に出られない時期に出した2枚のアルバムは、如実に身体性を失ってて。当時はそれにも気づかずやってたんです。
その後、5枚目のアルバムを作る時に「何か足りないな」と思って、みんなで話し合ったり分析してみたら、リズムが先に自分の体を上げてくれて、そこにメロディーが乗っかってくるっていう身体性のようなものが、1st、2ndアルバムの時は偶然あったことに気づいて。それから一番意識してる部分が身体性なんで、今回のツアーにはそこに合うバンドが集まっているのかもしれないですね。
─ああ、でも確かに4組ともライブの身体性がヤバイっていう。だってTexas 3000も相当「身体性ライブ」でしょ。テキサスも好き?
千代谷:大好きっすね。それこそ『Weird Dreams』ってツアーの札幌で呼んでくれて。その時に初めて間近で観たんですけど、崎山(崎山洋孝 / Dr)さんのドラムがデカくて、すごすぎましたね。あと、みんなやっぱ楽しそうに演奏してたのが自分的にすげえなって思ってて。
鈴木:演奏してない時もあの雰囲気ですしね、崎山さん。

秋山:本当に喋ってるのと全く同じリズムで叩いてる。3人とも人柄がそのまま音になってて、しかもそれがちゃんとひとつになってる。
─そっか。人間力も確かにヤバいかもしれないな、kanekoayanoさんもね。
秋山:ライブであれだけの期待を集めておきながら、アンコールをやらないとかって、実際に決断すればできることなのかもしれないけれど、誰にでもできるわけじゃないし、アーティストのムードとして合う合わないもありますよね。そういうスタンスすらも、すごく素敵だなと思っています。
秋山:さっきZAZEN BOYSに対して下中が「音楽をやっている」と言ってましたけど、時代によって音楽の伝え方や流行りが変わっても、結局いつの時代でも「音楽が真ん中にある人」が自分たちは好きなんです。どのバンドも自分たちのスタイルがしっかり伝わっていて、ブランディング的な面でももちろん成功しているとは思うんですけど、その手前にいい意味での不器用さが少し見えるというか。「自分は音楽としてこれが好きだ」というのが伝わってくる人たちが好きなのかもしれないですね。
