2026年1月期の冬ドラマが後半戦を迎える。映画監督が手掛けた作品も目立った今期のドラマについて、ライター陣に振り返ってもらった。座談会の前半は、朝ドラ『ばけばけ』、大河ドラマ『豊臣兄弟!』、そして、注目を集めている日曜劇場『リブート』と『冬のなんかさ、春のなんかね』の話題から。
※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
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映画監督作と一話完結ものが目立った2026年冬ドラマ
—2026年1月頃から放送している冬期のドラマの中で、皆さんのお気に入りドラマなどについて語って頂きたいと思います。まずは冬ドラマ全体を見て、どのように感じられていますか?
藤原:私は、映画監督が手掛けた作品が多いことを、とても嬉しく思ってます。沖田修一監督の『探偵さん、リュック開いてますよ』(テレビ朝日系)と阪元裕吾監督の『俺たちバッドバーバーズ』(テレビ東京系)と今泉力哉監督・山下敦弘監督などの『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)と、いずれも楽しんでます。
北村:作風としては、従来通りの恋愛もの、医療もの、考察サスペンスなど王道もある反面、『未来のムスコ』や『探偵さん、リュック開いてますよ』などSF要素・ファンタジー要素が入った作品もチラホラあるのが面白いですね。前期の『じゃあ、あんたが作ってみろよ』のようなメガヒット作品は無いですが、個人の好みにマッチした作品が多く放送されているイメージがあります。
明日菜子:冬季オリンピックがあった影響か、間にお休みの期間があったりしたので、全体的に、考察やミステリー、一話完結ものなど、いつ見ても話が分かる作品が多いですよね。そのせいもあって、プライム帯(※)はシリアスな作品が多い印象です。その中でも、フジテレビは特徴的で、『東京P.D. 警視庁広報2係』『プロフェッショナル 保険調査員・天音蓮』など事件を解決する作品、サスペンスものに振り切ってる感じがします。
※プライム帯:1日のテレビ視聴率が最も高い夜間。日本では主に19:00~23:00。
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阿佐ヶ谷姉妹による語りという発明。朝ドラ『ばけばけ』
—今、放送中のドラマということで、NHK総合で放送中の、朝の連続テレビ小説『ばけばけ』と大河ドラマ『豊臣兄弟!』についても伺わせてください。過去の朝ドラ・大河と比べていかがでしょうか。
藤原:『ばけばけ』は、最初の頃は、夫が研究者に近い仕事をしている夫婦もので、長屋など町の人々が端々まで生き生きと描かれている感じが『らんまん』(2023年)に近いと思っていたのですが、それとも違って、独自の路線を貫いている感じがします。特に松江編(2026年2月第3週まで)の終わり方がすごくて、主人公夫婦や家族と同等の扱いで、ヘブン(トミー・バストウ)と錦織(吉沢亮)、トキ(髙石あかり)とサワ(円井わん)となみ(さとうほなみ)の友情を描いているのが、このドラマの特徴だと思います。
北村:ふじきみつ彦さんによる脚本の素晴らしさはもちろんですが、私は、とにかく画面の構図の素晴らしさにも感心させられていて、情緒的な見せ方にもグッと来ています。先ほど、藤原さんが挙げた松江編の終わりのシーンもそうですし、年末の第65回のトキとヘブンが手をつなぐシーンも、言葉無しで心情を見せていきますよね。これまでの作品と比べても、朝ドラの15分という放送時間の使い方も贅沢だと思いますし、新しさがあると思って見ています。
明日菜子:私、改めて、おトキちゃんがすごい好きだなと思って……。なんでなのか考えていたら、髙石さんが好きなのもありますが、おトキちゃんって、今のドラマには珍しいドジっ子ヒロインの系譜だと思うんですね。
「てへへ」みたいな顔で許せちゃう感じのおおらかなヒロイン。おサワちゃんとのシーンもそうでしたけど、周りの人の気持ちを察するのがあまり得意ではないからこそ、攻撃を受けやすい。でも、やっかみも受け入れるような懐の深さがあるんですよね。最近の朝ドラのヒロインって、攻撃されたら、それに立ち向かう人が多かったと思うんですけど、おトキちゃんの場合は、受け入れる。彼女がそのようになったのには、幼少期にド貧乏だった背景があって、自分の心を鈍くしないと生きていけなかったという設定はすごく面白いなあと思っています。そこの建付けが、特に後半パートには効いてきているなと思いました。
あと、従来の朝ドラと違うところでいうと、阿佐ヶ谷姉妹さんの語りが発明的ですね。最近の朝ドラは、視聴者のヘイトコントロールみたいなものがすごく大事だと思うんですが、阿佐ヶ谷姉妹のお二人の語りは、視聴者がツッコみたくなるところに「まあまあ」みたいな感じで入るから、溜飲が下がるんですよね。姉の江里子さんが基本的に語りをされてますが、とてもナレーションが上手い。脚本のふじきさんと縁もあるということも含めて、奇跡の三段重ねだなと思いました。
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人間臭い戦国大河ドラマ『豊臣兄弟!』
—続いて、『豊臣兄弟!』についても聞かせてください。
藤原:『豊臣兄弟!』は久々の戦国時代を描いた大河ドラマなので、戦のシーンも含めた残酷さに驚かされます。一方、主人公が農民からスタートなので、より身近な存在として描かれていると感じますね。
北村:戦国大河にしては、戦の扱いと同等に、兄弟の関係性や2人の恋愛、結婚した後にどうなるかなど人間模様に強く焦点を当てている印象がありますね。戦国時代を生き抜いてきた彼らの強すぎる印象というよりは、人間臭い側面を前面に出そうとする脚本の意図があるのかなと思いながら、見ています。
明日菜子:菅田将暉さんによる竹中半兵衛のビジュが良すぎませんか(笑)。あと、やっぱり白石聖さんがとても良かったですよね。出演されていた「あさイチ」で一ヶ月ぐらい前にオファーがあったと話されていて、急な抜擢でしたが、芝居の上手さはお墨付きですよね。お顔の雰囲気が近しい浜辺美波さんと白石さんという2人のヒロインだからこその文脈も生まれていて、運命的なハマり役だと思いました。なので、思ってた以上に早く退場してしまって悲しいです。
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「二面性」を楽しむ考察ドラマ。日曜劇場『リブート』

—皆さんには、現時点(2026年3月3日)での2026年冬ドラマベスト3+αを事前に挙げていただきましたが、ここからはその内容も踏まえつつ、2026年冬ドラマについて語って頂きます。まずは、今期の注目作『リブート』について、お願いします。
北村:ベストでも2位に挙げましたが、今期の考察枠として象徴的な作品だと思って見ています。個人的にも黒岩勉さんの脚本が好きで、同じ日曜劇場の『マイファミリー』(2022年)とかが好きな人は好きなんじゃないかな。物語の土台に家族愛や夫婦愛みたいなものがあるので、愛する人のために選択を迫られるみたいな展開が好きだと、ハマって見られると思います。
今作のキーワードは「二面性」かなと。鈴木亮平さんが一人二役をやっているのはもちろんですが、裏組織のトップ・合六(北村有起哉)の組織も、表はクリーンだけど、裏では汚いマネーロンダリングをやっているとか。あと、冬橋(永瀬廉)が、表では、NPO法人の職員として身寄りのない子ども達のための居場所を作ってあげる活動をしているけれども、裏では合六の仕事の実行役みたいな。そういう裏表の構造が際立つ作品になっていますね。
藤原:私は結構、残酷な感じが怖くて、遠目に見ているんですけど、やはり鈴木亮平さんが、二役を演じるのが凄いと思いますし、考察ものとしても展開が全く読めないので、全体的にすごいなあと思って見ています。
明日菜子:脚本の黒岩さんは、最近ずっと安定してヒットを打っていて、お名前を聞いて「この作品は大丈夫かもしれない」と思える脚本家の筆頭のお一人だと思います。あと、先日、一人二役の鈴木亮平さんが同じ画面に2人いるというシーンがありましたよね。私は数々のドラマで、一人二役を演じる俳優さんが2人、同じ画面にいて、おもろい画になっちゃうのを見てきたんですけど、どう考えても鈴木亮平さんがこの世に2人いないと成立しない場面があった! 鈴木さんのお芝居もすごいし、CGやVFXなどの技術もすごいなと思いました。
公式の紹介でも「エクストリームファミリーサスペンス」と冠されていますが、展開が早すぎて、ついにリブートが合六にも、監察官の真北(伊藤英明)にもバレてしまったし、そもそも早瀬は何のためにリブートしたんだっけ? と思いながら見ています(笑)。