反町隆史、大森南朋、津田健次郎のトリプル主演が話題となったドラマ『ラムネモンキー』(フジテレビ系)も、いよいよ最終回を迎える。
最終回直前の第10話で事件の真相が明らかになった後、Bialystocks” Everyday”をBGMに、3人が恩師への思いを吐き出す丘の上のシーンは感動的だった。
大ヒットドラマを手掛けてきた脚本家・古沢良太ならではの巧みなストーリーテリングが、毎回視聴者を驚かせてきた本作について、前半を振り返った記事に続いて、毎クール必ず20本以上は視聴するドラマウォッチャー・明日菜子がレビューする。
※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
INDEX
真相は明らかになり、物語は最終回へ

『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)や『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)の古沢良太が原作・脚本を手がける『ラムネモンキー』が、いよいよ最終回を迎える。中学時代を過ごした丹辺市で人骨が発見されたというニュースが報じられたことを機に、吉井雄太 / ユン(反町隆史)、藤巻肇 / チェン(大森南朋)、菊原紀介 / キンポー(津田健次郎)は久々の再会を果たす。人骨は、かつて自分たちが所属していた映画研究部の顧問「マチルダ」こと宮下未散(木竜麻生)なのではないか――。美人教師失踪事件を追うなかで、くすぶった人生を送るおじさんたちの物語が、ふたたび動き出していく。
近所で「魔女」と恐れられた黒江の婆さん(前田美波里)の孫娘であり、幻の映研部員だった恵子(瑞島穂華 / 水野美紀)との再会により、3人と白馬(福本莉子)は事件の真相へと一気に近づいた。大地主だった黒江の婆さんは、丹辺市の未来都市開発計画に最後まで反対していたため、悪質な地上げ屋に目をつけられていたのだ。当時は、その後のタバコの不始末による火事で亡くなったとされていたが、実際は放火による殺人だったことも判明した。
さらに、映研の部室として使われていた部屋の屋根裏からは、中学生だった3人が制作した自主映画『ラムネモンキー 炭酸拳』のビデオテープが見つかる。それは、唯一行方がわからなかったNo.12で、祖母の死により丹辺市を離れることになった恵子が、マチルダに託したものだった。そしてそのビデオには、黒江の婆さんに詰め寄る大物代議士・加賀見六郎(荒井志郎 / 高田純次)の若き日の姿をとらえた映像が上書きされていた。ビデオテープとともに残されていたマチルダの書き置きには「Don’t trust Clark(クラークを信じるな)」という一文が。その「クラーク」とは、ユンの兄・健人(松村雄基)のことだったーー。
INDEX
全ての事件の黒幕は大物代議士・加賀見だった

中二病を再発させた50代の中年男性3人の物語は、回を重ねるごとに、エモーショナルになっていった。青春時代=懐かしい昭和の「あの頃」を振り返るプロセスは、楽しいだけのものではない。無邪気に思い描いていた理想の自分といまの自分とのギャップだけでなく、そこに至るまでの過程とも、向き合わざるを得ない。あの選択で良かったのか、あの時もっと上手くやれたんじゃないか。2025年の現在にユン、チェン、キンポーがやっているのはまさに、自分が歩んできた人生との対峙なのだ。
最終回直前となる第10話「マチルダの帰還」は、そんな3人の葛藤や決意が、プリンとラムネの対比を通して描かれる、ほんとうに素晴らしい回だった。
マチルダ捜索に巻き込まれた警察官・鶴見(濱尾ノリタカ)のファインプレーにより、ユンたちに白馬を加えた4人は、暴力団「白狼会」の構成員だった竿竹売りの鳥飼(村上航)を経由して、マチルダを葬った実行犯とされる「アホの八郎」こと多胡秀明(佐久本宝 / 梶原善)へとたどり着く。なぜマチルダは殺されたのか。それは、加賀見が黒江の婆さんの死に関与した証拠となるNo.12のビデオテープを、加賀見に断固として渡さなかったからだった。
加賀見といえば、ユンが兄・健人と共に若いころから世話になり、ユンの贈賄容疑にも関わっていた人物。贈賄容疑を追う警察の狙いは、もっぱら大物代議士である加賀見にあり、ユンの逮捕はそのための足がかりに過ぎなかった。そして4人は、いよいよ加賀見のもとを訪れる。すでに加賀見宅にいた健人に一度は阻まれるものの、ほどなくして面会を許される。秘書からは体調がすぐれないから会えないと言われていた加賀見は、にこやかにお気に入りのプリンを食べていた。
INDEX
「ほっこりプリン」という「毒」

37年前の丹辺市で、いったい何があったのか。最近、ユンの家族を脅迫しているのは加賀見ではないかと、4人は詰め寄る。だが、真実の代わりに加賀見から差し出されたのは、甘さ控えめで、食べるとほっこりするという「なつかし濃厚プリン」だった。(そのときの加賀見は、さながら「お主も悪よのう……」とにじり寄る悪代官のようだった。)
このプリンは、「毒」の象徴だ。一時は再開発計画に反対していたものの、目先の利益ほしさに加賀見に買収された丹辺の人々が、知らず知らずのうちに飲まされていたものと同じ「毒」なのだ。
だが、そんな「毒まんじゅう」こと「ほっこりプリン」を、その場で突き返すどころか、各々が一度家まで持ち帰ってしまうというのが、『ラムネモンキー』のどこまでも人間臭いところで、筆者がたまらなく好きなところでもある。
加賀見にプリンを突き返していたとしても、ユンたちの胸には引っかかりが残ったはずだ。清廉潔白に生きてきたと胸を張れる人間なんて、そう多くはない。長い人生のなかで、悪気なくほっこりプリンを口にしたこともあれば、それが毒だとわかっていながら飲み込んだこともあるだろう。だって、大人になるということは、大切なものや守りたいものが、どんどん増えていくことだから。