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今泉力哉監督と一緒に考える。人とわかり合う難しさとどう向き合う?

2023.10.10

#MOVIE

「社会の常識から考えたらタブー視されていることも、あらゆる視点から疑って考える作品をつくっていきたい」

─人間関係を諦めてしまう前に、堀がとった行動には励まされるものがありました。安心や信頼関係を築いていくことは、容易いことではない。そうしたときに、できることの1つがあのシーンにあった気がします。

今泉:いい意味で「相手に期待しすぎない」ということは、誰かと深い関係になろうとするときに大切なのかもしれないですね。信頼したいという気持ちは大事だけれど、自分が求めたことを相手ができなかったときに「なんで?」と否定してしまうと関係は築けない。

自分と他人は違うことを大前提として、ほんの少しでも理解してくれたり、わかってくれたりしたことを大げさに喜ぶくらいのほうが、関係をつないでくれるのかもしれない。だけど、「怒ること」も愛がないと難しいことですし、一概には言えないですが。

─怒ったり嫉妬したりするほど他者に愛情を向けられている、とも考えられますもんね。

今泉:そうですね。……嫉妬と言えば、全然関係ない話かもしれないんですけど、先日Twitter(現在はX)のDMで、知らない女性から恋愛相談めいたメールが届きまして。彼女いわく、「彼氏の浮気を疑っていてスマホを見てしまいました」といった内容で、読み進めたら「でも、彼のスマホを見たら、彼も今泉監督にDMで『彼女が浮気しているけれど、好きだから許してもいいと思うか』みたいな相談をしていて。で、『もう一度彼女のことを信じてみようと思います。もっと好きになってもらえるようにがんばります。』って書いてあって。彼が自分を好きなことが確認できてよかったです。それだけ報告して、もう浮気しないよう今泉監督に誓います」って言葉で締められていて。

─カップルの仲を取り持った、今泉監督。

今泉:いや、僕を通さず勝手にやってくれって思いましたけど(笑)。僕からは「まず、恋人のスマホを見るな!」「あと、浮気をするな!」って返事しときました。ただ、これまで恋人のスマホを見てもいいことなんか1つもないと思っていたのに、いいことも起こるんだっていう驚きがありました。稀すぎますが。

─(笑)。今泉監督の映画のワンシーンにありそうですね。

今泉:『窓辺にて』(2022年)もそうでしたけど、社会の常識から考えたらダメだとされていることも、「本当にダメなのだろうか?」とあらゆる視点から疑って考える、みたいなことはこれからも描きたいです。

たとえば恋愛物語の結末として、一生添い遂げることが素晴らしいものとされていますけど、それだけじゃない。僕はある1日、ある季節の間だけでも「たしかに一緒にいた」という事実も大事なんじゃないかと思うんです。そうした瞬間を映画におさめていきたいです。

─最後になりますが、今泉監督にとって本作はどういうものになりましたか?

今泉:さきほどの「死を語るシーン」など、葛藤はありながらも、すごく気をつけながらつくりましたし、張り詰めたものが映画の強度を生んでいるのかなとも感じます。とにかくあらゆるシーンに悩んだ映画でした。

ただ……未だに悩ましいです(笑)。編集も撮影も演技も満足いくもので、自分たちのできることは最大限、力を出し切りましたけど、「あのシーンはあったほうがよかったかな」とか「あそこは削るべきだったか」とか、正解がわからなくて難しい。早く公開されて、みなさんの賛否を聞きたいです。

『アンダーカレント』場面写真 ©豊田徹也/講談社 ©2023「アンダーカレント」製作委員会

─「否」の意見も聞きたいですか?

今泉:否定的な意見こそ、聞きたいですね。映画は自由に受け取っていいものだし正解もないので。ユーモアを求めて観た人の「重くてあまり好きじゃない」といった意見とか、自分では想像もしていない解釈とか。そういう言葉に触れるとまた違う角度から映画を考えられます。いろいろな感想をもらえてやっと、この映画に対して落ち着ける気がします。

『アンダーカレント』

公開日:10月6日(金)全国ロードショー
監督:今泉力哉『愛がなんだ』『ちひろさん』
音楽:細野晴臣『万引き家族』
脚本:澤井香織『愛がなんだ』『ちひろさん』
原作:豊田徹也『アンダーカレント』(講談社「アフタヌーンKC」刊)
製作幹事:ジョーカーフィルムズ、朝日新聞社
企画・製作プダクション:ジョーカーフィルムズ
配給:KADOKAWA
出演:真木よう子、井浦新、リリー・フランキー、永山瑛太、江口のりこ、中村久美、康すおん、内田理央
©豊田徹也/講談社 ©2023「アンダーカレント」製作委員会

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