音楽にまつわる今のトピックについて、ライター / 批評家に語り合ってもらう座談会。今回は、DJ泡沫、セメントTHING、つやちゃんの3人に、2026年1〜2月にリリースされたタイトルの中から、イチオシを上げてもらった。後半では、1月23日(金)に遂にリリースとなったXGの1stアルバム『THE CORE – 核』について、また、XGの魅力について、3人に聞いた。「What’s NiEW MUSIC」第12回。
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2000年代前半のR&Bを想起させるK-POPの新グループ
—みなさんがここ数ヶ月で注目したリリースタイトルを教えていただければと思います。まずはDJ泡沫さん、いかがでしょうか?
DJ泡沫(以下、泡沫):私はLNGSHOTの“Moonwalkin’”というデビュー曲ですね。K-POPなんですけど、もともと自分もアイドルをやってたパク・ジェボム(=ジェイ・パーク)というラッパーが、はじめてプロデュースしてデビューさせたボーイズグループです。
泡沫:K-POPは少し前まで、反復性の高い、あまりボーカルが前面に出てこない感じの曲が流行だったんですけれど、LNGSHOTの曲は正統派R&Bという感じで、それが意外だったし印象的でした。最年少メンバーのボーカルがジャスティン・ビーバーみたいだと話題になっていましたね。
セメントTHING(以下、セメント):ルイくんですよね。すごく話題になってましたよね。
泡沫:はい。いま声変わりをして少し変わったんですけど、Jackson 5の頃のマイケル・ジャクソンとかジャスティン・ビーバーを彷彿とさせるような声で。あと、プロデューサーのパク・ジェボム自身はラッパーだけど、4人グループのうち3人がボーカルで、ラッパーが1人しかいないんですよ。それも意外でしたね。いわゆる第2世代(※)が好きな人はすごく好きなんじゃないかと思います。
※2005年〜2013年頃に活躍した東方神起、BIGBANG、少女時代、KARAらを指して「K-POP第2世代」を呼ぶ。
つやちゃん:2000年代前半から中期ぐらいのR&B、ニーヨ(Ne-Yo)とかアッシャー(Usher)の感じですよね。懐かしいなと思いました。
セメント:彼らは確か去年、正式デビューする前にミックステープを出しているんですけど、そういうところもR&B / ヒップホップのマナーを守っているというか。上モノが1990年代〜2000年代のR&Bっぽいスイートさ、メロウさで、ビートには今のヒップホップやトラップの要素が入っていて、ジェイ・パークの曲をもう少しアイドルポップス向けに翻訳したようなところもあるなと思いました。制作陣にアイオア(IOAH)、シンセイン(XINSAYNE)、マーブ(Marv)といった、Kヒップホップ周りの人がたくさん参加してるんですよね。アイドルグループなんだけれども、今までのジェイ・パークの仕事との連続性もあって、Kヒップホップの文脈でも聴けるのが面白かったです。
泡沫:たしかにそうですね。2010年代の真ん中ぐらいまでは、K-POPのボーイズグループの中でヒップホップが流行っていたんですけど、しばらくアイドルシーンとヒップホップが離れていましたよね。その後韓国のヒップホップアーティストがアイドル化してきた時期もありましたが、10年経って今またアイドルの方から久しぶりにちょっとヒップホップ感のあるグループが出てきているというのは感じました。
セメント:デビューEPに入っている“FaceTime”という曲は、*NSYNCとかBackstreet Boysが歌っていてもおかしくない感じですよね。それと、振り付けがキレを重視した感じじゃなくて、緩いんです。レイドバックしてるというか、ラフな感じがある。それであのメロディーで甘いというのが、R&Bの旨みのようなものがすごく出ていて、ジェイ・パーク印だなと思いました。
つやちゃん:他に近い音楽性のグループを考えていたんですが、LDH所属のPSYCHIC FEVER from EXILE TRIBEを想起しました。
セメント:しました、しました。韓国でやるとこうなるんだと思った。
泡沫:なるほど。目指してるところは同じですよね、きっと。
セメント:そうですね。1990年代〜2000年代の、R&B / ヒップホップ文化のボーイズグループへの翻訳というか。
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ハイパーポップ×K-POPの混淆
—セメントTHINGさんのおすすめリリースタイトルはいかがですか?
セメント:僕は、アンダースコアーズ(underscores)の“Do It”という曲の、イヴ(Yves)が参加したリミックスです。アンダースコアーズはサンフランシスコ生まれのフィリピン系アメリカ人アーティストで、MilkfishというDJ名義もあるシンガーなんですけど、SoundCloudとかに音源を投稿して注目を集めた後に、2021年にデビューアルバム(『fishmonger』)をリリースしています。ハイパーポップ周りの人たち——ポーター・ロビンソン、ダニー・ブラウン、ジェーン・リムーバーとか、オーケールー(Oklou)とも一緒にやっていて、ハイパーポップからパンクっぽい曲まで、何でもやるジャンル分けが通用しない人です。その最新シングルの“Do It”という曲が、K-POPっぽいんですよね。
泡沫:へえ!
セメント:というのも、この人はめちゃくちゃK-POPから影響受けているんです。K-POPのリミックスも発表してるし、DJミックスにも第2世代〜第3世代あたりのK-POPを入れまくっています。あと、K-POPのファンエディットアカウントを運営してたんじゃないかって言われてるんですね。あくまで推測なんですけど。しかもそのファンエディットのアカウントの名前が、2ndgenbias(2nd gen bias)=第2世代贔屓って言うんですよ。
—すみません、ファンエディットとは何か、簡単に説明いただけますか。
セメント:例えばアイドルだったら「このメンバーの好きなところ集」とか、そういった動画をファンが自分で勝手に編集して公開する文化です。アンダースコアーズの場合は、K-POPのMVをたくさん集めて、「K-POPの曲作りにはこういう傾向がある」というのを発表してたらしいんですね。それってほとんどそのまま曲作りにつながるじゃないですか。それがこの人の音楽的な感性を育てたひとつなんだろうなと思ったんです。ピンクパンサレス(PinkPantheress)もそうですけど、K-POPに影響を受けてポップミュージックを作る世代がもう出てきたんだな、しかも、ピンクパンサレスもアンダースコアーズも、どちらもイヴとコラボするんだな、と。
セメント:イヴというのは、LOONA(日本名:今月の少女)というK-POPグループのメンバーとしてデビューした人で、いまはソロでやっているんですけど、ソロの作品がエレクトロニックミュージックとしての評価が高いんですね。そういう、K-POPを背景に持っている人たちが、またここで出会って、それがハイパーポップコミュニティからものすごく祝福されている。K-POPがポップミュージックの文法の中に入ってきて、インディの領域からもK-POPの文法を共有するものが出てくるという、良いフィードバックのループ、文化の変化の兆しを感じて、感慨深かったです。
泡沫:イダレ(=今月の少女 / LOONA)にいた子がそういうところに引っ張りだこというのは、すごくわかる気がします。韓国の人たちもよく把握できていないうちから、海外でそうやって広まりつつあるのは面白いですね。
セメント:イダレは元々海外のクィアなファンからの人気が高かったんで、ハイパーポップとの親和性は高かったんですけど、もうこんな未来になったのかと思いましたね。