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XG、LNGSHOT、A$AP Rockyなど、1〜2月の注目新譜を音楽ライター3人が語る

2026.3.5

#MUSIC

音楽にまつわる今のトピックについて、ライター / 批評家に語り合ってもらう座談会。今回は、DJ泡沫、セメントTHING、つやちゃんの3人に、2026年1〜2月にリリースされたタイトルの中から、イチオシを上げてもらった。後半では、1月23日(金)に遂にリリースとなったXGの1stアルバム『THE CORE – 核』について、また、XGの魅力について、3人に聞いた。「What’s NiEW MUSIC」第12回。

2000年代前半のR&Bを想起させるK-POPの新グループ

—みなさんがここ数ヶ月で注目したリリースタイトルを教えていただければと思います。まずはDJ泡沫さん、いかがでしょうか?

DJ泡沫(以下、泡沫):私はLNGSHOTの“Moonwalkin’”というデビュー曲ですね。K-POPなんですけど、もともと自分もアイドルをやってたパク・ジェボム(=ジェイ・パーク)というラッパーが、はじめてプロデュースしてデビューさせたボーイズグループです。

泡沫:K-POPは少し前まで、反復性の高い、あまりボーカルが前面に出てこない感じの曲が流行だったんですけれど、LNGSHOTの曲は正統派R&Bという感じで、それが意外だったし印象的でした。最年少メンバーのボーカルがジャスティン・ビーバーみたいだと話題になっていましたね。

セメントTHING(以下、セメント):ルイくんですよね。すごく話題になってましたよね。

泡沫:はい。いま声変わりをして少し変わったんですけど、Jackson 5の頃のマイケル・ジャクソンとかジャスティン・ビーバーを彷彿とさせるような声で。あと、プロデューサーのパク・ジェボム自身はラッパーだけど、4人グループのうち3人がボーカルで、ラッパーが1人しかいないんですよ。それも意外でしたね。いわゆる第2世代(※)が好きな人はすごく好きなんじゃないかと思います。

※2005年〜2013年頃に活躍した東方神起、BIGBANG、少女時代、KARAらを指して「K-POP第2世代」を呼ぶ。

つやちゃん:2000年代前半から中期ぐらいのR&B、ニーヨ(Ne-Yo)とかアッシャー(Usher)の感じですよね。懐かしいなと思いました。

セメント:彼らは確か去年、正式デビューする前にミックステープを出しているんですけど、そういうところもR&B / ヒップホップのマナーを守っているというか。上モノが1990年代〜2000年代のR&Bっぽいスイートさ、メロウさで、ビートには今のヒップホップやトラップの要素が入っていて、ジェイ・パークの曲をもう少しアイドルポップス向けに翻訳したようなところもあるなと思いました。制作陣にアイオア(IOAH)、シンセイン(XINSAYNE)、マーブ(Marv)といった、Kヒップホップ周りの人がたくさん参加してるんですよね。アイドルグループなんだけれども、今までのジェイ・パークの仕事との連続性もあって、Kヒップホップの文脈でも聴けるのが面白かったです。

泡沫:たしかにそうですね。2010年代の真ん中ぐらいまでは、K-POPのボーイズグループの中でヒップホップが流行っていたんですけど、しばらくアイドルシーンとヒップホップが離れていましたよね。その後韓国のヒップホップアーティストがアイドル化してきた時期もありましたが、10年経って今またアイドルの方から久しぶりにちょっとヒップホップ感のあるグループが出てきているというのは感じました。

セメント:デビューEPに入っている“FaceTime”という曲は、*NSYNCとかBackstreet Boysが歌っていてもおかしくない感じですよね。それと、振り付けがキレを重視した感じじゃなくて、緩いんです。レイドバックしてるというか、ラフな感じがある。それであのメロディーで甘いというのが、R&Bの旨みのようなものがすごく出ていて、ジェイ・パーク印だなと思いました。

つやちゃん:他に近い音楽性のグループを考えていたんですが、LDH所属のPSYCHIC FEVER from EXILE TRIBEを想起しました。

セメント:しました、しました。韓国でやるとこうなるんだと思った。

泡沫:なるほど。目指してるところは同じですよね、きっと。

セメント:そうですね。1990年代〜2000年代の、R&B / ヒップホップ文化のボーイズグループへの翻訳というか。

ハイパーポップ×K-POPの混淆

—セメントTHINGさんのおすすめリリースタイトルはいかがですか?

セメント:僕は、アンダースコアーズ(underscores)の“Do It”という曲の、イヴ(Yves)が参加したリミックスです。アンダースコアーズはサンフランシスコ生まれのフィリピン系アメリカ人アーティストで、MilkfishというDJ名義もあるシンガーなんですけど、SoundCloudとかに音源を投稿して注目を集めた後に、2021年にデビューアルバム(『fishmonger』)をリリースしています。ハイパーポップ周りの人たち——ポーター・ロビンソン、ダニー・ブラウン、ジェーン・リムーバーとか、オーケールー(Oklou)とも一緒にやっていて、ハイパーポップからパンクっぽい曲まで、何でもやるジャンル分けが通用しない人です。その最新シングルの“Do It”という曲が、K-POPっぽいんですよね。

泡沫:へえ!

セメント:というのも、この人はめちゃくちゃK-POPから影響受けているんです。K-POPのリミックスも発表してるし、DJミックスにも第2世代〜第3世代あたりのK-POPを入れまくっています。あと、K-POPのファンエディットアカウントを運営してたんじゃないかって言われてるんですね。あくまで推測なんですけど。しかもそのファンエディットのアカウントの名前が、2ndgenbias(2nd gen bias)=第2世代贔屓って言うんですよ。

—すみません、ファンエディットとは何か、簡単に説明いただけますか。

セメント:例えばアイドルだったら「このメンバーの好きなところ集」とか、そういった動画をファンが自分で勝手に編集して公開する文化です。アンダースコアーズの場合は、K-POPのMVをたくさん集めて、「K-POPの曲作りにはこういう傾向がある」というのを発表してたらしいんですね。それってほとんどそのまま曲作りにつながるじゃないですか。それがこの人の音楽的な感性を育てたひとつなんだろうなと思ったんです。ピンクパンサレス(PinkPantheress)もそうですけど、K-POPに影響を受けてポップミュージックを作る世代がもう出てきたんだな、しかも、ピンクパンサレスもアンダースコアーズも、どちらもイヴとコラボするんだな、と。

セメント:イヴというのは、LOONA(日本名:今月の少女)というK-POPグループのメンバーとしてデビューした人で、いまはソロでやっているんですけど、ソロの作品がエレクトロニックミュージックとしての評価が高いんですね。そういう、K-POPを背景に持っている人たちが、またここで出会って、それがハイパーポップコミュニティからものすごく祝福されている。K-POPがポップミュージックの文法の中に入ってきて、インディの領域からもK-POPの文法を共有するものが出てくるという、良いフィードバックのループ、文化の変化の兆しを感じて、感慨深かったです。

泡沫:イダレ(=今月の少女 / LOONA)にいた子がそういうところに引っ張りだこというのは、すごくわかる気がします。韓国の人たちもよく把握できていないうちから、海外でそうやって広まりつつあるのは面白いですね。

セメント:イダレは元々海外のクィアなファンからの人気が高かったんで、ハイパーポップとの親和性は高かったんですけど、もうこんな未来になったのかと思いましたね。

直感的で「とっ散らかった」面白さのラップアルバム

—では、つやちゃんさんの1枚はいかがですか?

つやちゃん:はい。私は最近だとエイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)のアルバム『Don’t Be Dumb』を挙げたいです。エイサップ・ロッキーは、セールスだけで言ったらトラヴィス・スコット、ケンドリック・ラマーやプレイボーイ・カーティ(Playboi Carti)とかと名前が並ぶようなラッパーなんですけど、なかなかどういった特徴があって、どういう作風なのかが見えにくいんじゃないかと思うんです。今回もそうなんですけど、いつも、なんかわけわかんないアルバムを作るんですよ(笑)。

https://open.spotify.com/intl-ja/album/4itKk52E9ZCdWUQcFAkud9

つやちゃん:キャリア的にも中堅からベテランになりつつあるので、もっと作風が整頓されたり、洗練に向かってもいいのに、今回のアルバムも雑然としていて、直感的にやりたいことをやりたい放題やったみたいな感じの作品なんですね。そこが自分が好きなポイントでもあるんですけど。今までの過去の作品の要素が詰まった音楽性になっていて、それもあってとっ散らかった感があり、そのとっ散らかった感が好きで、けっこう聴いてますね。

あと、以前からファッションシーンとの結びつきが深くて、去年はRay-Banのクリエイティブディレクターに就任したり、CHANELのハウスアンバサダーをやったりもしています。それで、音楽制作のアプローチの仕方も、どこかファッション的なものを感じるんです。「かっこいいからやってみた」「異質のものを組み合わせたらどうなるかな」という、ファッションスタイリングに近いような手法ですね。以前からそうでしたけど、今作でそれがますます極まったような気もしていて。

セメント:リードシングル、“Punk Rocky”でしたっけ? あれを聴いたときにすごくびっくりしちゃって。ヒップホップというか、ロック曲ですよね。MVが異様に不穏だし、ウィノナ・ライダーとか出てくるし、たしかにいろんなアイディアが詰め込まれているのを感じましたね。断片的なところが逆に現代的でいいのかもしれないです。

https://www.youtube.com/watch?v=lCp0BmcFPQ8

つやちゃん:アルバムのアートワークをティム・バートンが手がけていたり、ドーチー(Doechii)とコラボしてたりとか、いろんな人が出てくるんですよね。タイラー・ザ・クリエイターともやってて、ウィル・アイ・アムも客演しています。

セメント:彼は常に次に流行りそうな曲調は押さえていたりするので、彼なりの今のシーンに対する「こういうモードもありなんじゃないか」という提言として考えると、面白いなと思いました。

XGの1stアルバム、ライターらはどう聴いた?

—国内の話題作でいえば、XGの1stアルバムも発表されましたね。こちらはみなさんどう聴かれましたか? つやちゃんさんにはNiEWでレビュー記事も書いていただいていますね。

なぜXGは世界を熱狂させる?『THE CORE – 核』で示す「正しさ」の先にあるポップの未来

つやちゃん:はい。サウンド的に「びっくり仰天!」みたいなことは意外となくて、正統派のR&Bや、トラップ、ブーンバップ、ハウス等いろんなサウンドに真正面からXGが挑んでいったというアルバムでしたね。でも、レビューでも書かせてもらったんですけど、それをメンバーみんながすごく楽しそうにワクワクしながら作っている、歌っているのが、すごく良いなと思います。そういうところがXGの個性で、正統派にやる曲にもXGのワクワク感が加わることで、アルバム全体のカラーやムードが変わってくるんだなと、XGの凄さをそこで感じましたね。

セメント:僕はXGを“MASCARA”で好きになったので、ポップスやR&BをやっているXGがけっこう好きなんですよ。だから今回だと“GALA”とか“HYPNOTIZE”などの、ガラージとかハウス系の曲が良いなと思いました。つやちゃんがおっしゃる通り、今までの活動の延長のサウンドでありつつ、いろんなことをやっていて、それを全部昇華できるスキルの高さが印象に残りました。

https://youtu.be/cUfDOS2SINM?si=vZF8V0tA4pCxMJOf

セメント:あと、WINDOWSENという中国のファッションブランドと密接にコラボしていて、“GALA”のMVではカスタムのルックを採用していますよね。トランスヒューマン的、ポストヒューマン的なイメージというのが、こういうグループが提示するものとしては新しいなと思っています。未来的というのは、元々あったコンセプトではあるんですけれども、「どういう存在でもそこにあることができる、単一の身体性にとらわれない」といったビジョンが、今回のアルバムではよりはっきりと打ち出されていました。そういう点で、XGはクィアなファンに訴えかけるものがめちゃくちゃ強くて、これぐらい訴える力が強いのは他にARTMSとかXLOVぐらいだなと思います。

非人間的なコンセプトと、個人の実存感。両方を可能にする高いスキル

—いまファッションのお話もありましたが、XGの、そうした音楽以外のクリエイティブの部分についてはいかがですか?

泡沫:服装も、宇宙人に近いというかね。レディー・ガガとかもそういうところがありますけど、ジェンダーレスを超えて、いま人類を超えようとしているのかなという感じがしています。人間が考えるありきたりの線を超える、「これはきれいだったりかわいいものなのか?」というラインのギリギリを攻めているというか。それでいて、見ていて楽しかったり、美しかったりという線は守っているんですけど。

https://www.youtube.com/watch?v=8cEdndsuzSE

泡沫:それって、K-POPではできないことだと思うんですよ。はっきりと境目をつけない、と言うんですかね。「XGがやればもうそれがXGの曲」で、ジャンルは何をやってもいい。それはアイドル——って言っていいのかわからないですけど、アイドル的なグループの強みだと思っています。そういうアイドル的な良い部分もあるし、音楽的にもすごく突き詰めていて、両方満足できる。アメリカや韓国のグループは、ジャンルやジェンダーを固定したがるところがあるんですけど、XGはそこの曖昧さに日本的なものを感じます。そういう意味でオンリーワンだと感じましたね。

つやちゃん:自分たちを宇宙人って言ってるじゃないですか。そういった設定を置いているのは、J-POPでもK-POPでもないという意味ももちろんあるんですけど、それ以外にも、宇宙に飛ぶことで地球上のいまの社会を分類している国籍や人種、ジェンダーといったものから一旦距離を取るという効果もあると思うんです。そこには良い面・悪い面が両方あると思うんですけど、現状は、その視点で社会を切り取ることで生まれる面白さが、多くの人を魅了しているのかなと思います。

セメント:そうですね。XGのコンセプトには、あまりにも人間離れしすぎてついていけなくなるリスクもあると思うんですけれども、ただ、みんなの歌やダンスには、個々の人間としての実在感を感じさせるものがある。息づかいであったり、感情を、ものすごく感じさせるレベルに達してますよね。そういうところで実在感を担保している、担保できるだけのスキルがあるというのは、このコンセプトをやる上での強固な土台として重要だったんじゃないかなと思いました。土台がしっかりしてるからどこまでも飛べる、みたいな。

泡沫:まさに。

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