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NEWS EVENT SPECIAL SERIES
みらんと小原晩の交換日記『窓辺に頬杖つきながら』

新刊が出たり、出演&主題歌を担当する映画の情報が出たり。忙しなかった9月の記録

2023.11.7

#BOOK

from みらん #11 ― 9月15日(金)

少しずつ、ほんとうに少しずつ、涼しくなってきたと思わない? もうすぐだふだぶのスウェットを着られると思うと、心に一瞬秋風吹いたりもして。

今は台風の季節だから、あーたーまーわーれーるーな日がたまにある。だからやっぱり晴れてると、きもちがいいもんだね。今朝なんかはそうで、うーんと伸びをしながら目を覚まして、トイレして、顔を洗って、あつあつのブラックコーヒーを飲んだら美味しくて美味しくて、用意したクッキーを食べるのも忘れたくらい。外に出て、難なく予定をこなすと、「あっ」と、今日がお給料日なことに気づく。もしかして、きもちがいいのは、そういうこと、、? すると突然降り出す雨。傘持ってくるの忘れた駅中の私。こういうシチュエーションほんとよくある。私の機嫌は天気なのか、お金なのか、一旦さておき、晩ちゃんならこういうときどうする?

1.雨に降られ濡れながら帰る
2.傘を買う
3.レンタル傘する

とりあえず思いつくのはこの3択かしらね。私はレンタル傘、したことないんだけど、どうなんだろ。あれは私みたいな忘れんぼうに優しくするふりして裏では二ヒヒって顔で小銭稼ぎしてそうだからやだやだ、騙されませんよ、っていつもとおり過ぎるけど、濡れて帰って風邪ひきたくないし、これ以上家にコンビニのビニール傘は要らないしで、今回は目がくらんだなあ。とりあえず、お店をぐるぐる見て回る。はあ、雨に濡れずにこんなにお買い物できるようになってる駅中ってすごい。ぐるぐる、ぐるぐる。折り畳まない、大きくてオシャレな柄の傘もいいね。大事に使えそう。でもちょっと高値。シンプルで、折り畳めて使える無印良品のやつもいいね。でも私のものって感じがしなくて、どこかに出かけた時、忘れてしまいそう。ぐるぐる。前に使ってたボタンひとつで開く折り畳み傘がセールになってる! でもせっかくなら新しいのが欲しいわね。ぐるぐるぐるぐる。

そうして約1時間。ついに買いました。セールになってる、ボタンひとつでは開かないけど、雨風に強い、UVカットもできちゃう、黄色い、シンプルな折り畳み傘。

どしゃ降りの帰り道で傘をさしながら、今日の私の機嫌は黄色だったんかーと思う。晩ちゃんの傘は、何色なんだろー。

やっとこさ、机を買いました。白くて大きな机。組み立てた途端、立派な荷物置きになってしまった。

from 小原晩 #11 ― 9月29日(金)

私の家にはビニール傘が一本だけあります。基本的には傘が苦手だからささないの。一本あるのはすごく良いほう。高校時代からの親友に会う日はなぜか雨の日が多くて、私があまりにも傘をさしてこないものだから「今日は傘をさしてきて」とわざわざ連絡がくるくらい。捨てられた犬みたいにびしゃびしゃの状態で登場することもしばしばです。もう大人なんだからそんなのだめだよね。でも傘をささないほうがなんか落ち着くんだよね。一日の終わりにはどうせ濡れるわけだし。

来ている上着を傘がわりにして歩くことがほんとうに多い。

そういえば外で新しい傘を買うことと、タクシーで帰ることが苦手だなあ。すごくもったいない感じがしてしまう。そういうところは貧乏性というか……。終電を逃すと歩けるだけ歩いてしまう。疲れ果ててからやっと乗る。

さてこの交換日記を書くことを1週間ほど失念しており、ご迷惑をおかけしました。9月23日に新刊『これが生活なのかしらん』(大和書房)が出まして、慣れないことばかりで心と身体がばたばたしており……凡ミスがすごく増えていまして……ほとほと自分が嫌になるよ。

でもとりあえずは無事に出てよかった。

凡ミスと一緒に生きてきたといっても過言ではないよ。しっかりしているような雰囲気なのにしっかりしていないこと、足が速そうなのに足が遅いこと、頑丈そうなのにすぐ体調を崩すこと。自分の見た目のイメージと、本当の自分がかけ離れすぎていて、ときどき申し訳なくなる。悪いギャップ。

ところで、みらんちゃんは凡ミスとは無縁、みたいなイメージがあるのだけれど、凡ミスってする? よかったら教えてください。

from みらん #12 10月2日(月)

晩ちゃんのいろいろを聞いていると、ワイルド〜〜って思います。憧れるんだよな。

私はいつも、今から繋がっている明日と明後日と1週間後の予定ばかり考えては計画を練り、どうしたらスマートに事が収まるか、いかに体力を使わずに済むか、晩酌の時間をどれだけ確保できるか、頭めぐらせている。だから雨に濡れて帰ったら玄関をびちゃびちゃにしてしまって掃除が大変になるだろうとか想像するもんで、基本的に折り畳み傘をバッグに入れてます。

でも人間だもの、凡ミスなんて、付きものよ。バッグを替えるときに入れ忘れることしょっちゅう。いやはや、その程度の凡ミスエピソード求めちゃいませんけれどもと晩ちゃんにつっこまれてしまいそうだけど、思わず、は!!? と声を出してしまうミスを日々連発しています。今日なんかは、エアコンの修理を業者さんに頼んで、カレンダーにも入れていたのにすっぽかし、外に出ていた。業者さんを待たせた挙句、干したままの洗濯物だらけの家に上がらせてしまったり。ほんとうによくない。結果疲れてしまいますわ。繰り返し繰り返し、家でひとりでんぐり返し反省する夜もある。

この前、反省中に、思いっきり笑ってみようと試みた自撮り。

そんなでも、めでたく晩ちゃんの本が出版されたし、私は出演アンド主題歌をした映画『違う惑星の変な恋人』の情報が出たりなど、偉く頑張っているじゃないか。今月はなんと『東京国際映画祭』でレッドカーペットを歩くことになっているらしい私。こけるってば〜〜〜。

お互い忙しないけれど、昨日は時間を縫って、久しぶりに会った。曇りで、時々雨がぱらり降っていたけど、やっぱり晩ちゃんは傘を持っていなかった。愛おしいもんだ。晩ちゃんに会うと、今は今しかなくって、今だけでよくって、楽しいとおもしろいで、それでいいんだって思えるからありがたい。そしていつも美味しいご飯と飲み物がそこにはあって、言葉を絡ませ交わらせ、全然まとまりなんてしないけど、なんだか小さい明かりが灯るような、感じがします。写真家のななこちゃんと合流し、連れられて行ったレストランの名は、そういえば、「灯明」で。ほくほくの秋をいただいたな。なんだかなんとか、やっていけそうです。

灯明のごはん。「酢豚の練習」という料理名だった。

みらん

1999年生まれのシンガーソングライター。
包容力のある歌声と可憐さと鋭さが共存したソングライティングが魅力。2020年に宅録で制作した1stアルバム『帆風』のリリース、その後多数作品をリリースする中、2022年に、曽我部恵一プロデュースのもと 監督:城定秀夫×脚本:今泉力哉、映画『愛なのに』の主題歌を制作し、2ndアルバム『Ducky』をリリース。その後、久米雄介(Special Favorite Music)をプロデューサーに迎え入れ「夏の僕にも」「レモンの木」「好きなように」を配信リリース、フジテレビ「Love music」でも取り上げられ、カルチャーメディアNiEWにて作家・小原晩と交換日記「窓辺に頬杖つきながら」を連載するなど更なる注目を集める中、新曲「天使のキス」を配信/7inchにてリリースした。2023年12月13日には新作アルバム『WATASHIBOSHI』をリリースする。

小原晩(おばらばん)

小原晩

作家。2022年初のエッセイ集となる『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』を自費出版。2023年「小説すばる」に読切小説「発光しましょう」を発表し、話題になる。 9月に初の商業出版作品として『これが生活なのかしらん』を大和書房から刊行。

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