ディズニー&ピクサー最新作『トイ・ストーリー5』が、公開2週目を迎えて2週連続で動員数トップを獲得し、『アナと雪の女王2』や『ズートピア2』を抜いて、歴史的な大ヒットを記録している。
そんな注目度の高いシリーズ最新作を語る上で、前作4作目に寄せられた賛否両論の声は、避けて通れないだろう。
4作目では、ウッディが長年の仲間と離れ自分の人生を歩んでいくという結末に対し、長年の作品ファンが違和感や深い喪失感を覚え、批判の声もあがっていた。なぜあそこまで議論が巻き起こったのか。それは、シリーズの根幹にあった「おもちゃの美しいルール」をピクサー自らが破壊してしまったからにほかならない。しかし、全5作の歴史と現実の時の流れを俯瞰したとき、ディズニーが描いた「タブレットとおもちゃ」という物語と、4作目がもたらした痛みを伴う破壊の必然性がくっきりと浮かび上がってくる。

まず、シリーズ黄金期を支えた「おもちゃの美しいルール」の危うさに触れておきたい。1〜3作目は、誰もが知る感動的な名作。しかし裏を返せば、それは「持ち主に愛されることだけが存在価値」という自己犠牲と従属の物語とも言える。子供の成長や心変わりによって、おもちゃたちは常に「捨てられる恐怖」に怯え続け、子供への過剰な依存こそが、彼らを縛る美しくも残酷な呪縛となっていた。
では、なぜ4作目の展開が必要だったのか。劇中の具体的な描写から、彼らの「実存的危機と自立」を紐解くことができる。
4作目で再登場したおもちゃであるボー・ピープは、特定の持ち主を持たず、折れた腕をテープで補修し、スカンクの車のおもちゃを乗り回して、たくましく外の世界を生き抜いていた。彼女は「所有されなくても、おもちゃは存在意義を持てる」ことを自らの姿で完全に証明している。
そして、その姿に心を揺さぶられたウッディは、最終的にボニー(持ち主)の元へ帰ることをやめ、移動遊園地でボー・ピープと共に生きる道を選んだ。長年の作品ファンから「子供を捨てての恋愛逃避行」だと猛反発を食らったこの選択。しかし、この「掟破り」とも思える決断によって、ウッディに「子供の関心がなくても自分の価値は消えない」という精神的な自立をもたらしたと言える。
これを踏まえて、最新作で彼らが「タブレット」という脅威に対して見せた反応と、その着地点に目を向けてみたい。
思い返せば、ウッディは1作目で「最新の宇宙のおもちゃ(バズ)」に持ち主の愛を奪われるとパニックになり、バズを窓から突き落とす。最新作でも、彼らは当初タブレットに子供の関心を奪われ、かつてのように敵視して排除しようと試みている。もし3作目までの「子供の関心こそが全て」という価値観のままだったとしたら、同作はそのまま「タブレットなんていらない、やっぱりおもちゃだけで遊ぶのが一番」という、浅はかな「アナログ至上主義」を描く物語になっていたに違いない。
しかし、彼らは4作目において「子供に遊ばれなくても自分たちの価値は揺るがない」という余裕と自立をすでに獲得していた。だからこそ、タブレットに対する初期のパニックや拒絶反応を乗り越え、客観的で前向きな答えを導き出すに至っているのだろう。

同作のおもちゃたちが最終的に変化を受け入れられた背景には、キャラクターとしての確かな「成熟」がある。そして、それに圧倒的な説得力を持たせているのが、シリーズを通してウッディとバズの声優を務める唐沢寿明と所ジョージの存在にほかならない。
所ジョージ コメント
初めのうちは仕事だからやっていたのに、今やバズを演じるのも5作目。次があったらやりたいなって気持ちになっちゃうもん。
バズは、初めは自分がおもちゃだということを知らなくて『ヘルメットを開けると酸素がなくて死んでしまう!』とか言ってたくせに、今やもう『俺はプラスチックだ』とか言ってんじゃない?実際には飛べないのに飛ぼうとしていて、実際に飛んだら『これは飛んでるんじゃない、落ちてるんだ』とか言って、分かってるのもまた面白いよね。
初期の作品では、ウッディとバズのどちらも、トラブルが起きると早口でまくし立ててパニックを起こしていた。しかし同作では困難なシーンであっても、彼らの言葉の端々にゆったりとした落ち着きや「間」が自然と滲み出ている。1作目から約30年、キャラクターと共に歩んできた声優陣だからこそ出せるその絶妙なニュアンスが、「パニックを乗り越え、新しい環境に馴染んでいく」という彼らの成長に深みを与え、作品を陰ながら支えているように感じる。
確かな成熟を経たおもちゃ達が行き着いたのは、タブレットを排除せず、「共存」を選び取るというディズニーの現代的なアンサー。

「どちらか」を選ぶのではなく、フィジカルなおもちゃでも遊ぶ選択肢も残しつつ、タブレットによって、さらに遊びの幅や想像力が拡張されていくという見事な着地点を見せている。リアルとデジタルが混ざり合って、お互いの魅力を引き出し合う、現代のカルチャーにおける「新しい遊び」を完璧に提示してみせた。
4作目での痛みを伴う精神的自立と、キャラクターと共に成長してきた声優陣の自然な成熟。それらを経た彼らは、デジタルデバイスという未知の存在や新たなキャラクターたちと出会い、そこからどのような関係性を築いていくのか。もはや「おもちゃ」という枠組みを超え、したたかに新しい遊びを創り出していくウッディやバズたちの姿に、スクリーンを通してあなたは何を感じるだろうか。
映画『トイ・ストーリー5』

7月3日(金)全国劇場公開
■監督:アンドリュー・スタントン(「トイ・ストーリー」シリーズ、「ファインディング・ニモ」「ファインディング・ドリー」)
■共同監督:ケナ・ハリス
■製作:リンジー・コリンズ
■全米公開日:6月19日
■原題:Toy Story 5
■日本公開:7月3日
■配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
■声:唐沢寿明(ウッディ)、所ジョージ(バズ)、日下由美(ジェシー)、広瀬アリス(リリーパッド)、佐野勇斗(スマーティー・パンツ)、竜星涼(フォーキー)ほか
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