9月6日(金)より全国公開されている映画『ナミビアの砂漠』(英題:Desert of Namibia)の舞台挨拶が、9月17日(火)にBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下で開催された。
舞台挨拶には、主人公・カナを演じた河合優実と、監督・山中瑶子が登壇した。河合は都内を中心に満席回が続出するなどの大ヒットを受け、「自分の好きな映画館で舞台挨拶ができて嬉しいです」と挨拶。「身近な人や友人が今年見た中でぶっちぎりで好きですと言ってくれました。関係者の方も映画館に観に行ってくれていて、色んな人が楽しみにしていたんだなと実感しました」と反響を喜んだ。山中も「このBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下で上映していただきたいという強い想いで映画を作りました」と続け、満席の観客に向けて「映画を観終わったあと、建物から出て前と後ろを見たらその理由が分かると思います。映画と現実が接続されているんです」とコメントした。
何に対しても情熱を持てず、恋愛ですらただの暇つぶしだと感じている21歳の主人公・カナについて、河合は「カナについても(意見が)様々で、取材とか受けてもライターさんとか自分自身と重ねる人もいるし、全くの他者として見る人もいる。こんなに多面的な映画なんだと分かった」と話し、山中は「共感できるできないが分かれやすいなと公開してから感じました。そうじゃないところでも楽しんでもらえると思っているので、好きなように観ていただきたい」と、鑑賞者の意見を踏まえて改めて作品をアピールした。
2024年には6月公開の『あんのこと』と『ルックバック』に続き、3本目の主演映画が公開され、いずれも異なる役で、それぞれが大きな反響を呼んでいる河合。「幸せなことだと思います。それぞれの作品で全く違うチャレンジができたのも一番良かったです。私を違う作品で観てくれた方が、毛色の違う作品も観に来てくれているので、参加できて良かった。ほんとに色んな意味で幸せだと思ってます」と感謝を述べた。また、その中でも20代の主人公・カナを演じたことについては、「これまではどうしても年齢的なことで高校生の役とか多かったですし、下の年齢の役を演じることが多かった。『あんのこと 』やカナも含めてですが、これからのことを考えると、その時にしかできない役に出会っていけてるなと思ってます」と振り返った。
「今まで見たことのない河合さんを撮りたかった」と話していた山中。カナという役を作りあげる上で河合は「脚本をいただく前から何度か(監督と)お会いしてお話する機会があって。作品についてではなく、身の回りのこととか、お互いが感じていること、山中監督が映画で描きたいことを話しました。なので、キャラクターについてゼロから話す必要が無いのがすごく良かったです」と明かし、山中は「河合さんとお会いしてこういう映画を作る予定です、とは言わずに、お互いの家族の話とか、東京で今生きている気分・ムードの話をしました。自分一人だと偏ってしまうところですが、友人知人、また全然知らない人など、いろんな人の話をいっぱい聞くことによって、普遍性も得られて多面的なキャラクターになると良いなと思って(脚本を)書いてました」と、キャラクターをつくり上げていく上での背景を明らかにした。
その後はSNSで募集された質問に答えた2人。「感情の波が激しい役柄を演じる際、どのようにして気持ちを切り替えていますか?」という質問に、河合は「どんな役でも感情の波はあります。心に定まっているものはないんですけど、ベースとして、今演じている役柄に日常生活でも持っていかれるということは無いんです。できるだけ冷静に自分が演者としてできることは何だろうと考えてます」と回答。カナについても「自分でエンジンをかけないと心が追いついてこないということももちろんありました。ただ気持ちだけ先走って振り回されようということはないです。できるだけ生の気持ちがでるようにしよう」と心がけたことを述べた。山中は「地に足がついているというか。河合さんとして現場にいるなと思います。いい意味で河合さんから出てきているカナだなと思います。勘だけでは絶対できない領域にいるな、と感じます」と、撮影で実感した河合の凄さを述懐した。
『ナミビアの砂漠』というタイトルについて、 「他には悩まなかったのでしょうか 撮影の段階で決めたのか 撮り終わってから決めたのかも気になります」との質問も。山中は「ナミビアでてこないじゃないか、行っていないじゃないかと思うかもしれませんが、カナにとってのナミビアの砂漠っていうのが、人との距離感だったり、色々な物との距離感の象徴としてあるんです。そのアイディアは脚本を書いている途中で浮かびましたが、このタイトルが名画の感じがしてしまって集客には向いてないかもと不安になりました。けれど、出来上がったものをみたら、この映画はどうみても『ナミビアの砂漠』でした」と説明。撮影時にタイトルへの不安を明かされていた河合は、正式にタイトルが『ナミビアの砂漠』になったことを聞かされたとき、「お客さん入らなくていいと思っているのかなと思った」と当時を振り返って会場の笑いを誘った。
撮影後に感じたお互いの魅力、新発見したことについては、「(山中は)すごくピュアな人だなと思っていて。自分が信じていることとか、逆に疑っていることも含めて、そこに対する思いが強くてまじりっけが無くて素敵。ずっとそのままでいて欲しい」と河合が伝えると、「どうなってほしくないとかありますか?」と山中から逆質問。河合は「怖い飲み会とかに行かないで欲しい」と応じた。
それを受けた山中は「一切ずるくない。打算的なところがない。なんかすごく物事とか人をフラットに見てくれる」と河合を評し、「取り乱して電話した時に、それは山中さんの基本ですから大丈夫ですよって言ってくれた。とっても優しいし、河合さんにも変な人が付かないで欲しい」と続けた。
最後に河合は「ほんとうに色んな感想をみてますし、凄く満ち足りた気持ちです。なので皆さんも映画がはじまったら、浸る気持ちで観て頂けたら嬉しい。そして何が感じることがあったら、自分の中に残してほしい」と呼びかけ、山中は「河合さんが演じたカナっていう21歳の東京近辺に住んでいるという限定的な人物を描いているので、わかるわからないで楽しんでいただけると思うんですけど、それだけじゃないことも発見してもらったり、持ち帰ってもらえると嬉しいです」と発言。それぞれの言葉で会場にメッセージを残し、舞台挨拶を締めくくった。
『ナミビアの砂漠』
脚本・監督:山中瑶子
出演:河合優実
金子大地 寛一郎
新谷ゆづみ 中島歩 唐田えりか
渋谷采郁 澁谷麻美 倉田萌衣 伊島空
堀部圭亮 渡辺真起子
製作:『ナミビアの砂漠』製作委員会
企画製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2024『ナミビアの砂漠』製作委員会
公式サイト happinet-phantom.com/namibia-movie
公式X @namibia_movie
公式Instagram @namibia_movie
2024年/日本/カラー/スタンダード/5.1ch/137分/PG12