8月3日(土)より公開される、和歌山毒物カレー事件を多角的に検証したドキュメンタリー映画『マミー』の本予告が解禁された。
1998年7月、夏祭りで提供されたカレーに猛毒のヒ素が混入、67人がヒ素中毒を発症し、小学生を含む4人が死亡した和歌山毒物カレー事件。犯人と目されたのは近くに住む林眞須美。凄惨な事件にメディアの報道は過熱を極めた。彼女は容疑を否認したが、2009年に最高裁で死刑が確定。今も獄中から無実を訴え続けている。
同作では、目撃証言や科学鑑定の反証を試み、彼女が夫・林健治とともに犯した保険金詐欺事件との関係を読み解いていく。作中では健治が懲役6年の実刑判決を受けた保険金詐欺の実態をあけすけに語り、確定死刑囚の息子として生きてきた林浩次(仮名)が、なぜ母の無実を信じるようになったのか、その胸のうちを明かす。また、監督を務めた二村真弘が、捜査や裁判、報道に関わった者たちを訪ね歩き、なんとか突破口を探ろうとするうち、事件にのみ込まれていく様子も映し出されている。
公式サイトでは、数々のドキュメンタリー作品を監督してきた大島新、映画『福田村事件』の監督を務めた森達也、漫画家の押見修造、ジャーナリストの丸山ゴンザレス、ライターの武田砂鉄ら著名人からのコメントも公開されている。
この映画はスクープだ。そして誤解を恐れず言えば、痛切なるエンタメ作品だ。「執行されてしまったら取り返しのつかないことになる」と思い、調べ始めた二村真弘監督の取材の深さはもちろん、撮影・構成・編集などの表現力も一級品。同業者として脱帽、と同時に嫉妬した。
大島新(ドキュメンタリー監督)
もしもあなたが、当時の報道をそのまま信じ込んでカレー鍋にヒ素を入れたのは林眞須美死刑囚に決まっていると思っているのなら、絶対にこの映画を観て衝撃を受けるべきだ。その後に考えてほしい。自分たちは何を間違えたのか。なぜ思い込んだのか。
森達也(映画監督、作家)
衝撃的な「映画」だ。事件の当事者の人々の、語る内容はもちろん、その語り口、声、身体は、こちらの安易な予断を悉く裏切っていく。家族の、親子の、夫婦の、人間の計り知れなさ。膨大な時間の中の絶望と、しかし、それに抗う力を感じた。
押見修造(漫画家)
和歌山カレー事件には被害者、加害者、報道、警察、検察……多くの関係者がいる。それぞれの立場から見え方が異なる事件である。では、自分は当時どう見ていたのか。今はどうなのか。本作を鑑賞後に見方を修正する必要があるのか、どうなのか。自問自答と決断を迫る作品だ。
丸山ゴンザレス(ジャーナリスト)
多くの人が「その話はもうやめてくれ」と逃げる。なぜ、逃げるのか。なぜ、カメラの前で語らないのか。各人の後ろめたさが渦となり、問いかけてくる。
武田砂鉄(ライター)
さらに、監督を務めた二村真弘、プロデューサーを務めた石川朋子からのコメントも到着した。
私は何かとんでもない思い違いをしているのではないか。取材中、何度も自問した。林眞須美は手練れの詐欺師で、ふてぶてしい毒婦で、夫をも殺そうとした冷酷な人間であったはずなのに、取材によって得た事実はそれとは全く違う姿を映し出していた。これで死刑判決が下されたのか…。空恐ろしさを感じた。
二村真弘
この企画は、いくつかのテレビ局に持ち込んだが「死刑判決が確定している事件を扱うのは難しい」と言われ実らなかった。それなら映画にしようと監督が撮影に入ると、取材先で度々新聞やテレビの記者に出くわした。しかし、彼らは冤罪の可能性について取材していても、大々的に報じることはなかった。死刑判決にこれだけ疑義があることがわかっていて、なぜ。監督の疑問と憤りが、今回の映画の原動力になっている。
石川朋子
映画『マミー』
8月3日(土)より[東京]シアター・イメージフォーラム、[大阪]第七藝術劇場ほか全国順次公開
監督:二村真弘
プロデューサー:石川朋子、植山英美(ARTicle Films)
撮影:髙野大樹、佐藤洋祐
オンライン編集:池田聡
整音:富永憲一
音響効果:増子彰
音楽:関島種彦、工藤遥
製作:digTV
配給:東風
2024 年/119 分/DCP/日本/ドキュメンタリー
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