書籍『アートワーカーズ 制作と労働をめぐる芸術家たちの社会実践』が3月26日(火)にフィルムアート社から刊行された。
ジュリア・ブライアン=ウィルソンによる同書は、1960年代から1970年代のアメリカで「アートワーカー(芸術労働者)」と名乗ったアーティスト / 批評家たちと、その活動に迫った内容となっている。
「アートワーカー」は、ベトナム反戦運動をはじめとして、フェミニズム運動、ブラックパワー運動、ゲイ解放運動、大規模なストライキなどの政治的 / 社会的な運動がアメリカで多く起こったことから生まれた集団的アイデンティティ。芸術に関わるすべての行為を「労働」と捉え、芸術作品 / 仕事(アートワーク)の意味を拡張し、当時の社会不安に立ち向かった。
同書は、「アートワーカー」としてカール・アンドレ、ロバート・モリス、ルーシー・リパーハンス・ハーケを取り上げ、作品や活動をケーススタディとして分析し、社会への関与の実相を明らかにする構成となっている。また、カラーの口絵のほかに、90点を超える図版を掲載。当時の活動をより詳しく伝える内容となっている。ブックデザインは熊谷篤史が手がけた。
日本語版の刊行にあたり、読者に現代の問題として議論してもらえるきっかけとなるよう、各章に専門家による解題が追加されている。
なお、フィルムアート社の特設ページからは、プロローグ部分の一部が試読可能となっている。
『アートワーカーズ 制作と労働をめぐる芸術家たちの社会実践』
ジュリア・ブライアン゠ウィルソン=著
高橋沙也葉/長谷川新/松本理沙/武澤里映=訳
目次
日本語版への序文
プロローグ
ラディカルプラクティスに向けて│ベトナム戦争時代
1 アーティストからアートワーカーへ
連合のポリティクス│アート対ワーク│一九六〇年代後半から七〇年代初期におけるアメリカの労働ポスト工業化社会における職業化
【解題】 「境界」をめぐるアーティストたちの闘争──AWC解説 笹島秀晃
2 カール・アンドレの労働倫理
レンガ積み│ミニマリズムの倫理的土壌│アンドレとアートワーカーズ連合│物質を問題にする/問題を物質にする│戦中のミニマリズム
【解題】 カール・アンドレの階級闘争 沢山遼
3 ロバート・モリスのアート・ストライキ
仕事/作品(ワーク)としての展覧会│スケールの価値│アーティストと労働者、労働者としてのアーティスト│プロセス│デトロイトと建設労働者/ヘルメット集団(ハードハット)│ストライキ│勤務時間中のモリス、勤務時間外のモリス
【解題】 ワーカーとしてのロバート・モリス──「脱物質化」のジレンマのなかで 鵜尾佳奈
4 ルーシー・リパードのフェミニスト労働
女性たちの仕事│アルゼンチン訪問│三つの反戦展│アートについて/として執筆する女性たち│抗議を工芸(クラフト)する
【解題】 個人的なこと、集団的なこと、政治的なこと──執筆家(ライター)/活動家(アクティビスト)としてのルーシー・リパード 井上絵美子
「挑発」としての批評とアクティビズム 浜崎史菜
5 ハンス・ハーケの事務仕事(ペーパーワーク)
《ニュース》│AWCとコンセプチュアルアート──美術館を脱中心化する│情報(インフォメーション)│ジャーナリズム│プロパガンダ
【解題】 制度批評のありか──ハンス・ハーケと情報マネジメントの芸術労働 勝俣涼
エピローグ
謝辞
訳者あとがき
註
索引
著者略歴/訳者略歴/解題執筆者略歴/註訳者略歴
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