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範宙遊泳・山本卓卓×曽我部恵一対談 いつか終わる表現活動への向き合い方

2024.7.8

範宙遊泳『心の声など聞こえるか』

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過去の作品を再現する覚悟と恥ずかしさ

―初演が2021年なので3年経っていますけれど、今は、SNSの普及もあって加速度的に倫理観が変貌する社会だと思います。卓卓さんは脚本を書き換えることはしていないでしょうか?

山本:ほとんど書き換えていないですね。倫理観の移り変わりは、本当に激しくて、濁流に流されるみたいだと思います。でも、たとえば、Twitterっていう言葉はXに直さずあえてそのままにしている。3年前の自分と今の自分は別人だから、3年前の自分にリスペクトを持たないといけないと思って。2021年の自分が見ていた景色とか心情は尊重して、今の自分の解釈を乗せようとしました。あと、2021年の感覚を今の倫理観で裁くのには抵抗があります。現在は過去を裁くものでもないし、未来の足を引っ張るためにあるのでもないって。

曽我部:再演する時ってどういう気持ちなんですか? 音楽は30年前に作った曲をライブで急にやったりするから「ああ、そういえばこれ、子供が産まれた時に作ったなあ」って思い出しながら歌ったりするんですけれど、それが普通っていうことですよね。

曽我部 恵一(そかべ けいいち)
1971年8月26日生まれ。乙女座、AB型。香川県出身。’90年代初頭よりサニーデイ・サービスのヴォーカリスト/ギタリストとして活動を始める。1995年に1stアルバム『若者たち』を発表。’70年代の日本のフォーク/ロックを’90年代のスタイルで解釈・再構築したまったく新しいサウンドは、聴く者に強烈な印象をあたえた。2001年のクリスマス、NY同時多発テロに触発され制作されたシングル「ギター」でソロデビュー。2004年、自主レーベルROSE RECORDSを設立し、インディペンデント/DIYを基軸とした活動を開始する。以後、サニーデイ・サービス/ソロと並行し、プロデュース・楽曲提供・映画音楽・CM音楽・執筆・俳優など、形態にとらわれない表現を続ける

山本:そうですね。特に、演劇の場合は座組みがセットになってくるので。大所帯になればなるほど、一人ひとりが過去の想い出を背負っていて、皆の想いがよりたくさん乗って重くなる。それをもう一度、別の俳優さんたちとも軽やかにやりたいんですよね。そして、それには覚悟がいると思います。

曽我部:なるほどね、すごく勉強になるなあ。毎日バンドの練習をしているんですけど、30年前の曲をやろうかってなると、ちょっと面倒くさいなあっていう気持ちがあったりして。でもトライするうちに、「あの時作ったのはこういう意味だったのかなあ」とか、「まだ若かったなあ」とか、色々思うんです。あと、ちょっとヘビーだなあっていう心境にもなるんですよね。30年前から今までの歳月の間の自分の成長や傷、喜びや後悔が堆積しているから。でも軽やかにやりたいとはいつも思っています。

山本:そうなんですよね。

―今のお話ともちょっとかぶるんですけれど、例えばサニーデイ・サービスが『東京』(1996年)の再現ライブを2016年にやられたじゃないですか。ミュージシャンって当然、20年前、30年前の曲をライブでやったりするわけですよね。そういう時に恥ずかしくなったりしませんか? 歌詞やアレンジを変える人もいますよね。

曽我部:うん、その恥ずかしくなるっていうのが今言ったヘビーさですよ。「これ本当にいいのかな?」とか、「若いなあ、まだ分かっていないなあ」とか思ったりする恥ずかしさを超えていくと、そこにぽつんと、年月とかとは関係ない自分がいて、それに出逢いに行く。

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