メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

『ロイヤルホテル』監督と考えるハラスメントの実状。「No」と言えるようになるには

2024.7.26

#MOVIE

すべてに声を挙げることは難しい。だから、小さな違和感でも話す、その繰り返しではないか

─息苦しさはありつつも、パブの主人のパートナーがふとした時にハンナに手を差し伸べてくれたことに心救われました。「星は好き?」と、休憩を提案しながら外のバックヤードに連れて行ってくれるシーンも好きです。

キティ:私は彼女で一本撮りたいくらい好きです(笑)。ドキュメンタリーに登場しないキャラクターですが、ああいう雑多な男社会には女性がもう一人ほしいと思って加えました。演じた俳優自身もとても親切で、強い部分があって、本来の彼女が持つエネルギーを映画に活かしました。

─シスターフッド的な視点で本作を観ると、家父長制に飲み込まれるリブをハンナは必死に救おうとします。ハンナほど強く在ることは難しいかもしれませんが、被害を訴える女の子と連携するために大事なことについて、キティ・グリーン監督はどのように思われますか?

キティ:非常に難しいテーマですよね……すべてに声を挙げることはなかなか難しいので、小さな違和感でも話す、その繰り返しなんだと思います。

実際に私は『アシスタント』と『ロイヤルホテル』、両作品で小さな違和感の積み重ねを描いてきました。冒頭でも話しましたが、思うのは、どんなに些細な瞬間だろうと早い段階で「No」と伝えたり話したりできていたら、ひどいことにならずに済んでいたのではないかということです。#me too運動以降、アメリカでも語る言葉が生まれ、何かあったときに駆け込む場所やリソースが出てきました。ハラスメントに対して正直であり、オープンでありやすくなってきたと思うんですね。ただ、一筋縄ではいきません。システムや習慣というのは一晩で変わるものではないですし、常々「どうしたらいいの?」と思う場面に遭遇します。

『ロイヤルホテル』場面写真

─主人公もたびたび「どうしたらいいの?」と言っていました。

キティ:たとえば自分が違和感を感じたとき、いつ立ち上がっていいのか、誰を信用していいのか、悩みますよね。『ロイヤルホテル』は駆け込む場所がないけれど、『アシスタント』は便宜上「人事部」という場所があります。彼女はそこに駆け込みますが、裏切られてしまう。頼る先が一つというのは危ないですし、もっと私たちは、どこのラインを越えたら許せないのか、オープンに議論をすべきだと思います。そして、お互いにできるだけ助け合って、やがてどこの場所にいても皆が安全に感じられるような環境ができあがっていけばいいなと思います。

『ロイヤルホテル』

2024年7月26日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
監督・脚本:キティ・グリーン
脚本:オスカー・レディング
プロデューサー:リズ・ワッツ、エミール・シャーマン、イアン・カニング
撮影:マイケル・レイサム
作曲:ジェド・パーマー
出演:ジュリア・ガーナー、ジェシカ・ヘンウィック、ヒューゴ・ウィーヴィング、トビー・ウォレス、ハーバート・ノードラム
配給:アンプラグド 
2023/オーストラリア/91分/2.39:1/カラー/5.1ch/字幕:田沼令子

© 2022 Hanna and Liv Holdings Pty. Ltd., Screen Australia, and Create NSW

オフィシャルサイト:https://unpfilm.com/royalhotel/

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS