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映画『落下の解剖学』を解説。社会的な地位のある女性が直面する不公正をどう描いたか

2024.2.22

#MOVIE

©2023 L.F.P. – Les Films Pelléas
©2023 L.F.P. – Les Films Pelléas

『カンヌ国際映画祭』の最高賞「パルム・ドール」に輝き、女性監督史上3人目となる最高賞受賞者を生み出したのが、映画『落下の解剖学』だ。『ゴールデン・グローブ賞』でも2部門の受賞を果たし、きたる『アカデミー賞』にも、フランス映画として作品賞を含む5部門にノミネートされているなど、その勢いは、とどまるところを知らない。

また、フランス本国で公開3週目にして興行収入1位を獲得したという事実が示すように、賞レースに強いだけでなく、多くの観客の心に届く内容を持つ作品でもある。本作『落下の解剖学』は、どういう点がそんなにも賞賛され、人の心を打つのだろうか。ここでは、そんな本作が描いているものが何なのかを考えていきたい。

※本記事には映画本編の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

『アカデミー賞』5部門にノミネート。多くの観客の心を掴んだ物語の概要

物語の発端となる場所は、ドイツ人作家サンドラ(ザンドラ・ヒュラー)の夫サミュエル(サミュエル・セイス)が生まれ育った、フランスの人里離れた雪山の山荘だ。夫婦は息子ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)、そして1匹の犬とともに、そこに住んでいる。

ある日、息子のダニエルが散歩から帰宅すると、父・サミュエルが頭から血を流し、自宅の前の地面に横たわっているところを発見する。ダニエルには交通事故による視覚障がいがあったが、わずかな視力で父親の倒れている姿に気づいたのだ。山荘の中にいた母・サンドラは、ダニエルの声を聞いて駆けつけたが、夫はすでに息を引き取っていた。

『落下の解剖学』予告編

警察による検死の結果、死因は頭部の外傷だと結論づけられる。おそらくは屋根裏から外へ落下し、頭を物置の屋根に打ちつけた後、地面に倒れ込んで絶命したと考えられるが、問題は、過失で落下するとは考えにくい環境だったということだ。ならば残された可能性は、自殺か他殺、ということになる。そしてもし他殺であれば、そのときに山荘にいたサンドラ以外に犯行は不可能なのだ。

取り調べのなかで次第に疑惑の目が向けられたサンドラは、殺人罪で有罪になることを避けるため、親交のある弁護士のヴァンサン(スワン・アルロー)とともに、夫の死因が自殺だったことを証明しなければならなくなる。しかし、サンドラにとって不利となる証拠が発見され、夫婦にまつわる秘密や嘘が、裁判で次々と明るみになっていく。果たして、裁判のゆくえと、サンドラの運命はどうなるのか……。

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