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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

『ラーメンどんぶり展』レポート。ラーメンから地球の未来に思いを馳せる充実の展覧会

2025.3.20

#ART

来場者が「客」として座ることで完成する展示

のれんには「丼自慢 ラーメン」の文字が。「味自慢」ではないところに、本展ならではのお茶目さが漂う。

続く展示室では、真っ赤なのれんのあるカウンターがお出迎え。ここでは、バラエティ豊かな40名のアーティストたちが考案したオリジナルラーメンどんぶりを見ることができる。ひとつひとつに本人からのコメントが添えられており、誰もがラーメンどんぶりを日常的な「自分ごと」として考え、経験と照らし合わせたり、希望を託したりしながらデザインを考えたことが伺える。気になる作品を見つけたら、ぜひラーメン屋でお馴染みの赤いスツールに腰掛け、どんぶりとじっと対話してみてほしい。この展示空間はそうやって来場たちが「客」として座ることで風景が完成するようデザインされているという。

それでは色とりどり、もはや大喜利かのような魅惑のアーティストラーメンどんぶりたちを、いくつかピックアップしてみよう。

田名網敬一 どんぶり

パッと見てすぐに誰のデザインか分かる、アーティスト / グラフィックデザイナーの田名網敬一によるどんぶりがコチラ。世界の田名網節が炸裂しており、グロテスクなクモの姿が大きく描かれている。美味しく食べさせる気があるのだろうか? と不安になりつつコメントを読んだら、学生時代に食べているラーメンにクモが落ちてきたのがトラウマで、それ以来ラーメンを美味しくいただけない……という嘆きと恨みが込められた作品なのだそうだ。至極納得。この制作を通じて作家にかけられた呪いが解けたことを願う。

片桐仁 どんぶり

その名にちなんでか、元ラーメンズの片桐仁の作品もある。店主のオヤジさんの指がスープに入っている様を騙し絵風に描いた、ふっと笑ってしまうようなどんぶりだ。完食後に現れる片桐の口の中に、中華料理屋でよく見かける「双喜」のマークがあしらわれているのがおめでたい。

佐藤卓 どんぶり

インパクトの強いものが続いたが、アーティストラーメンどんぶりは変わり種ばかりというわけでもない。例えば本展ディレクターであるグラフィックデザイナー佐藤卓の作品は、こんなにも直球勝負だ。近年激減しているという、昔懐かしい「これぞ」なグラフィックを意識し、雷紋に龍・鳳凰を配している。つくづく、スタンダードなラーメンどんぶりのデザインってラーメンをよく引き立てているのだな、と実感させてくれる一作である。

束芋 どんぶり

個人的に最もグッと来たのは、アーティスト束芋によるラーメンどんぶりだ。ラーメンのスープの底に見え隠れする男女。レンゲに、寄り添う裸足の爪先が描かれているのも鮮烈だ。異論はあるかと思うが、親密になった男女が朝方に食べるものといえば、それはラーメンだろう。若さと後悔と汗の匂いが溶け込んだようなデザインに、つい心を掻き乱されてしまった。束芋のコメントには「入れられるラーメンによって、この二人に様々な男女関係を見ることが出来れば面白い」とあったが、塩なのか、それともコッテリ豚骨なのか……あなたならどんな風味に彼らを溺れさせるだろうか。

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