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高木正勝と仏教 映画音楽や「Marginalia」でも目指していた、極楽を作ること

2024.12.26

#MUSIC

音楽家・高木正勝の前後編でお届けするロングインタビュー前編では、2024年に公開された映画『違国日記』と『キッチンから花束を』の音楽制作話から、誰かと一緒に作品を作ることについての作家論を受け取った。

後編では、未公開の新作映画で手掛けた音楽にも関係があり、幼少期から興味があった仏教について、そして自身のプロジェクト「Marginalia」にも通じる、他者を受け入れることについて話を聞いた。そうやって作品の話をしていると、いつのまにか人生論に辿りつくから不思議だ。

心を開いて仲良くならなくても、何かもう1つ、自分がこの状況でも楽しめる視点は絶対ある -高木正勝

高木正勝(たかぎ まさかつ)
音楽家 / 映像作家。1979年生まれ、京都府出身、兵庫県在住。長く親しんでいるピアノを奏でた音楽、世界を旅しながら撮影した“動く絵画“のような映像、両方を手掛ける。NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』、映画『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』『未来のミライ』『違国日記』などの音楽を手がける。近作は、山村にある自宅の窓を開け自然を招き入れたピアノ曲集『マージナリア』、エッセイ集『こといづ』。www.takagimasakatsu.com

仏教に向き合った、未公開映画の音楽

ー2024年に公開された映画『違国日記』と『キッチンから花束を』に加えて、もう一つ作品を録り終わったと伺いました。2024年7月に出演された『FESTIVAL FRUEZINHO 2024』のときに「ずっとやりたかった音楽だった」と仰っていましたが、どんな映画なのでしょうか。

高木:『光る川』という映画です。表には出ていませんが、裏テーマに仏教があって、もうこれは絶対にやりたいと。僕の実家はお寺なんです。ひいおじいさんが岐阜から京都にやってきてお寺を始めたから、幼少期から仏教がずっと身近にあって。でも多くの人と同じで、「南無阿弥陀仏ってそもそも何?」「仏さまって誰?」と思っていました。これまで仏教そのものとは全然向き合ってこなかった。

―どうしてでしょうか。

高木:親と同じ道には進みたくない、みたいなことってあるじゃないですか。やっていることはいいと思うけれど、そのまま継ぎたくはない。不思議ですけれど、そんな感じで離れてしまうものなんですね。

だから今回のオファーをいただいた時、はじめてしっかり向き合えるきっかけになると思ったんです。同時に、最近兄のお嫁さんが、急にお寺を継ぎたいと言い出して。驚いたけれど、これまでいろんな人の節目の話を聞いてきた中で、最高にいいなと思ったんですね。それも僕の中で仏教へのスイッチが入ったきっかけでした。それからは仏教の本を読んだりする中で、自分なりにゆっくり理解が進みました。「南無阿弥陀仏」って唱えますか?

ー自分で唱えたことはないです。お葬式で聞く、くらいですね。

高木:意味わかります?

ーいや、あまりわかってないです。「仏さま」みたいな感じですか?

高木:そう思いますよね。僕も同じように思ってました。漢字で書かれていますが、元々はインドで唱えられていた音なんですね。サンスクリット語で南無は「このうえない」「他にない」という最上級の意味で、阿弥陀仏は「すんごい光」という意味らしいんですよ。だから意味は「この上なくすんごい光」。いいイメージですよね。亡くなった方やお墓を前にしてそれを唱えていたんだって(笑)。

ー全然「仏さま」じゃないですね。

高木:そう、人のイメージじゃないんですね。すごく純粋なんですね。亡くなった人のお墓の前で「すんごい光、すんごい光」って言っている。それっていいな、分かると思って、知れば知るほど、今まで自分が興味があったり、音楽でやってきたことだったりと、そんなに違わないと思いました。

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