メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

『オッペンハイマー』から『異人たち』まで。2024年上半期のおすすめ映画を振り返る

2024.7.10

#MOVIE

パーソナルに訴える映画の台頭を伝える『異人たち』『パストライブス/再会』

木津:長内さんは、この上半期で印象的だった俳優はいましたか?

長内:アンドリュー・スコットがMVPですね。『異人たち』(アンドリュー・ヘイ監督)、ドラマ『リプリー』、そしてナショナル・シアター・ライブでの『ワー二ャ』の1人芝居と、上半期だけで3つも作品があり、どれも素晴らしかったです。この半年は、彼が一番気持ちを高めてくれる俳優でした。

『異人たち』予告編
『リプリー』予告編(英語版)

木津:僕は『パスト ライブス/再会』(セリーヌ・ソン監督)のジョン・マガロです。それは男性として好きというのもあるんですけど(笑)、インディー寄りの俳優の活躍が目立ってきていることを歓迎しているからなんです。少し前までは、誰もがマーベル作品に出演する、みたいな流れもありましたけど、例えばポール・メスカルは「インディーズ作品寄りの作品をメインに活動したい」というような趣旨の発言をしているそうです。

『パスト ライブス/再会』予告編

長内:ポール・メスカルもいいですね。『異人たち』は、10歳年下の友人と観に行ったんですが、その友人は直前に『aftersun/アフターサン』(シャーロット・ウェルズ監督)を観ていたので、同じ人だったのかと驚いていました。作品選びもいいし、今後も注目したいですね。次が『グラディエーター2』(リドリー・スコット監督)ということで、毛色が異なるので心配もありますが。

ポール・メスカル / Photo by Kevin Kunze is licensed under CC BY 3.0.

木津:ポール・メスカルも、これまでのスター同様に体つきも顔つきも整ってはいますが、心の弱さやフラジャイルさも感じられて、それが現代的だなと思います。その意味で『グラディエーター2』で描かれるヒーロー像もこれまでと違うものになるのかなと。日本ではハリウッドのスター像がジョニー・デップやディカプリオの時代から止まっていて、ティモシー・シャラメを知らない人も多いという話もあります。でも新しいタイプのスターがどんどん出てきていて、そこもここ数年のおもしろい現象ですよね。

ちなみに『異人たち』は、アンドリュー・ヘイのテイストにグッと寄せてはいるんですが、ゲイカルチャー、ゲイヒストリーにおけるディテールの細かさによって、ジェンダー、セクシュアリティーに関係なく伝わる作品にまで昇華されている点が素晴らしかったです。『パスト ライブス/再会』『異人たち』など、最近は映画の中身自体がよりパーソナルに響く、いい映画が増えている傾向にあると思います。『オッペンハイマー』のように多くの人に見られて、話題になる映画があるのはもちろんいいのですが、一方でパーソナルな映画を、本来届いてほしい層にまで届けるにはどうすべきか、映画ライターをしている人間としてはよく頭を悩まします。

『異人たち』より ©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
「アンドリュー・ヘイ監督が語る『異人たち』。クィアたちの孤独の共振が、つながりを生む」(NiEW)を読む

―ストリーミングが一般的になり、作品の量も増えているので、よりどう作品を届けるかは重要な課題になっています。

長内:俳優や作り手に関して、ストリーミング作品から注目される人々も増えてきましたよね。今、活躍している俳優がどんな作品から注目されたのか知るにはストリーミング作品をチェックしないといけない時代になりました。だから「今後、この人が出てくるな」というのは自分も拾っていきたいんです。

上半期のストリーミング作品で特に挙げたいと思ったのは『ロードハウス/孤独の街』(ダグ・リーマン監督)。週末に気楽に見られる、肩の凝らないアクション映画です。主演のジェイク・ギレンホールは作品選びもいいですね。上半期に『コヴェナント/約束の救出』(ガイ・リッチー監督)というシリアスな戦争映画も公開されていました。どちらも2時間くらいでサクッとみられる「普通のハリウッド映画」で、そうした作品に意識的に出演しているのが伝わってきて、しっかり届いてほしいと思えた作品でした。

『ロードハウス 孤独の街』予告編

長内:あと配信映画だと、『ミュージック ~僕だけに聴こえる音~』(ルディ・マンキューゾ監督)もよかったです。監督、主演の方がYouTuber出身ということで、新しい才能が出てきているのが伝わる現代ミュージカル映画でした。

『ミュージック ~僕だけに聴こえる音~』予告編

木津:僕はストリーミング作品を見落としてしまうことも多いです。新作がいつ、どのストリーミングサービスに入るのか、整理しきれなくて。ドラマは海外で話題になっているものを追いかけるということができるんですが、映画は見落としてしまうものが多いです。

ー劇場で上映される作品と違って、あまり宣伝もされないですもんね。

木津:そうなんです。こればかりは映画ファン同士の「助け合い」が必要なんですよね。

長内:本当に。映画が好きな人がドラマも含めて助け合って「これがよかった」とか発信していかないと、見落とされる作品がどんどん増えていってしまいますよね。

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS