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『今夜すきやきだよ』に通じるご飯を軸に社会を描く物語

『晩餐ブルース』を第1話から第5話までを前半パート、第6話以降を後半パートと分けて考えてみると、高校時代の旧友同士である優太、耕助、葵の3人で行う晩活の醍醐味そのものは前半でほぼ完成していたと言っていい。「元々食事は1人派なんで」と言ってそれまで参加してこなかった葵も第3話から晩活に加わるようになった。優太は晩活のお裾分けをするように、耕助から教わったレシピで作った唐揚げを振舞うことで、同僚の上野の心を動かしたりもした。そんな彼らの「食パン一斤もらったら分け合えるような」関係性の心地よさは、大人になったからこそ、より心に沁みるものなのかもしれない。
では後半で何を描こうとしたかと言うと、そのテーマは「晩活と社会」ではないだろうか。本作は、同世代の男性3人が夜な夜な集い、美味しい食べ物を作る個人的な集まりである晩活のみでは終わらなかった。それは本作と同じく本間かなみプロデューサーが手掛けた2023年のドラマ『今夜すきやきだよ』(テレビ東京系、谷口菜津子原作)が、ご飯が繋ぐ女性2人の友情を主軸に置きつつ、彼女たちを取り巻く様々な問題の数々を呈示するとともに、いかにそれらと向き合い、サバイブしていくかを模索する作品だったことを思い起こさせる。『晩餐ブルース』もまた、彼らが作って食べる美味しそうなご飯の数々を主軸に置きつつ、彼らと彼らが出会う人々それぞれが抱える生きづらさに向き合っていった。