INDEX
「やりたいこととか趣味とか夢って、べつに大きくなくてもいいと思うんです」
─今すぐ能動的にやりたいことがないという人には、どんな言葉をかけたいですか?
アユニ・D:今やりたいことがない、生きる楽しみがないと思ってる人には、「何か少しでも行動に移してみたら意外と楽しいかもしれないよ」って声を大にして言いたいです。
本当に最初は単純なことでいいと思うんです。いつもと違う帰り道を選んでみるとか、普段は聴かないような音楽を、誰かの影響で聴いてみるとか。お金を出してちょっといいものを買って形から入ってみるとか。そういうことも挑戦に繋がっていくんじゃないかと思います。
趣味がないという人も、いろんなことに目を向ければそれが趣味になるかもしれない。たとえばご飯を食べることって死ぬまでやり続けるじゃないですか。せっかく毎日することなら、目の前にあるものを食べるだけではなく、ちゃんと自分が好きなものを作って食べてみようと意識したり。明日はあの気になる店に行ってみようって思ったり。それがちょっと明日の希望に繋がるかもしれない。
やりたいこととか趣味とか夢ってべつに大きくなくてもいいし、お金にできることを探さなきゃとか重く考えなくてもいいのかもしれないって最近思うんです。だから、もっと気楽に、今できること、今あるものに目を向けて、それを面白がってみたら何かのきっかけになるのかもしれないって思います。

─アユニさん自身がとめどなく挑戦や変化をしていくのに比例して、自分が作るPEDROの楽曲が内包しているメッセージ性の強度もどんどん変化していってることを感じていると思うんです。
アユニ・D:そうですね。この地球や社会が流動的なように、自分自身も流動的な生き物なので。歌詞の言葉の使い方、入れ込み方、考え方、あとやりたい音楽ジャンルも自分が想像つかないくらい、進化というよりも「深化」していると思っていて。でも、根底には変わらない部分もありますね。
─それはどういう部分ですか?
アユニ・D:私の目標は「いい人になりたい」なんですけど、いつまで経っても世界を斜に構えて見てしまう部分は変わらないなって思います。
─ただ、斜に構えて見た世界から出てくる表現のイメージやワードが一番変化している部分でもあるのではないかと思います。
アユニ・D:そうですね。前はただ愚痴を吐き出すような感じがあったと思うんですけど、今は自分とは違う考え方への気づきがどんどん生まれていますね。それでも私は皮肉も好きですし、温かい朗らかな心も好きで。
最近すごく思ったのが、少し前までは「喜怒哀楽」の「喜楽」だけの、穏やか重視の暮らしをしたいと思っていたんですけど、それが自分的にかなりしんどくて。生きた心地がしないというか。安全すぎるのも自分には合ってないということに気づいたんですよね。
自然には四季が必要なように、私には「喜怒哀楽」という4つの感情が必要なんだなと気づきました。だからこそ刺激もたっぷり浴びて、いろんな気づきや発見を毎日たくさん味わって、怒りのパワーも悲しみのパワーもまた自分の表現に変えていく楽しさを追求したいと最近すごく思ってます。
─怒りや悲しみの熱量もどう昇華するかで最終的にはポジティブなものにアウトプットできると、今のアユニさんは知っているのではないかと思います。
アユニ・D:ありがとうございます。そうだと思います。結局は全部自分で抱擁して、昇華して表現していきたいという思いが一番大きくありますね。

─『還る』のなかでスタッフさんに「ゆっくり進めばいいんだよ」という言葉をもらったときに、アユニさんは「その言葉をずっと聞きたかったのかもしれない」と言っていて。あのシーンがすごく印象的でした。
アユニ・D:BiSHのときは一番年下ということもあって、常に生き急いでいたと思うし、とにかく走るのを止めたら許されないって自分で自分の首を絞めるようにやってきていたので。その癖がついちゃっていて。
でも、独り立ちしていく上でいろんな人の話を聞いて、「あ、人生ってまだまだ長いんだ。100歳まで生きていこうと思ったらまだ自分なんか赤ん坊だ。今生き急いだところで何になるんだろう?」って思ったんです。もっと自分の心と身体の声を聞いて、人の話もたくさん聞いて、ゆっくりいろんな人に出会って、いろんなことに挑戦していいんだ」と思って。
その一方で刺激がないと自分は進めないということにも気づきつつ、だからこそバランスが大事なんだなって今は思いますね。「あのとき生き急いでいたからこそ、いろんなことに挑戦できたな」とも思うので。それこそ生き急ぎすぎて切羽詰まってるときは「ゆっくりでいいんだよ」という言葉が支えになりますし、自分がゆっくりに甘んじて生きた心地がしなくなったときはまためっちゃ走って、ちょっと背伸びして挑戦してみたいですし。本当にバランスですね。

新たな一歩やチャレンジを前向きに踏み出すことを応援するFRISK「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」では、11組のアーティストやタレント、クリエイターが「あの頃」の自分に宛てた手紙を執筆。手紙の内容について、CINRA、J-WAVE、me and you、ナタリー、NiEW、QJWebでインタビューやトークをお届け。直筆の手紙全文は4月11日(木)から下北沢BONUS TRACKで開催されるFRISK『あの頃のジブンに届けたいコトバ展』で展示される。またアユニ・Dが登壇するトークショーを4月14日(日)に開催(詳細はこちら)
これからも愛おしく歌い、熱く叫び、淡々と語り、悶々と悩み、もりもりと食べ、ざくざくと学び、堂々と休み、清々と働き、ニコニコと笑っていたいです。16歳の私へ、生きるのをやめないでいてくれてありがとう。長生きしましょう、この惑星にて。
アユニ・Dの手紙抜粋(「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」presented by FRISK より)