キャラクタービジネス業界の知られざる側面をポップに描き続けてきた『君の好きは無敵』(TBS系)がいよいよ最終回。
元コンサルのキャリア女性・草壁杏奈(松本若菜)と、偏屈で変人な訳ありキャラクターデザイナー・瀬尾深月の偶然の出会いからはじまった「お仕事ドラマ」は、回を重ねるごとに「ラブコメディ」の色を強めていった。
最終回直前、草壁の過去を公にされたことで崩壊寸前となった「デザイン瀬尾」と、草壁と瀬尾の関係。2人が生み出したキャラクター「チュチュチュエラ」の行く末も気になる本作について、文筆家・折田侑駿がレビューする。
※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
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ラブコメディ化する展開に最初はガッカリしたものの……

推し活文化がますます盛んになるこの社会において、私たちが見るべきドラマが終わってしまう。火曜ドラマ『君の好きは無敵』が最終回を迎える。
本作は、キャラクタービジネス業界を舞台にしたラブコメディ。私たちの「好き」がどのようにして生まれているのか、その裏側をコミカルに描く作品だ。元コンサルのキャリア女性・草壁(松本若菜)と、才能はあるが変わり者のキャラクターデザイナー・瀬尾(佐野勇斗)がひょんなことから出会い、「最強にかわいいキャラクター」を生み出すべく奔走してきた。ちぐはぐな男女のバディものとしてスタートしたが、その後、2人はかけがえのないビジネスパートナーとなった。
「ラブコメディ」の色が強くなったのは、全10話の折り返し、第6話あたりから。それまでの草壁と瀬尾の関係はあくまで「好き」のために奔走するちぐはぐなビジネスパートナー関係だった。

正直なところ、瀬尾の好意が草壁に初めて向いたとき、少しガッカリしてしまった。前半を振り返った記事で書いた通り、本作は、推し活文化が隆盛の現代において、お仕事ドラマとして学びのある作品だと感じていて、無理にラブストーリーの展開を盛り込まなくてもいいと思ったからだ。
しかし、さすがは『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(2025年)、『逃げるは恥だが役に立つ』(2016年)などが放送されてきた「火曜ドラマ」。話が進む中で、筆者の落胆した気分はたちまち消えた。恋愛要素を大胆に取り入れながらも、変わらず描いているのはキャラクタービジネスの世界。この作品が光を当てているのは、あくまで、そこに生きる人々の人生だからだ。
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多様な「好き」を描くための恋愛要素

折り返し地点までは、本作に恋愛要素を見出すことはできなかった。草壁と瀬尾の「好き」が向かうのは、キャラクターたちに対してのみ。特に草壁には、「好き」とともに生きてきた経験がなく、夢中になれるものとは無縁のまま、これまでの人生を歩んできた。そんな彼女が瀬尾と出会い、キャラクタービジネスの世界で奮闘していくうちに、やがて「チュチュチュエラ」という愛すべき存在とも出会うことになった。
ところが、瀬尾の中で草壁に対する恋愛感情が芽生えたことで、ドラマは一気にラブストーリー全開に……とはならない。草壁に対する瀬尾の好意は一方的なものであり、彼が不器用なこともあって、本作があからさまな「恋愛ドラマ」として盛り上がることはなかった。ひとつの目標に向かって邁進していれば、その旅路をともにするパートナーに心惹かれるのはごく自然なこと。草壁と瀬尾の関係が強固になってから愛情が芽生えるというのは、何らおかしなところはないが、草壁から瀬尾に対する恋愛感情は描かれず、最終回直前の第9話の終盤では草壁が瀬尾の元から離れてしまう展開に。

ドラマに恋愛要素を取り入れるため、登場人物たちに無理やり恋愛をさせる作品は少なくない。それらに比べて本作は、恋愛要素が鮮やかに機能していると思う。身近な他者に対する「好き」の感情と、かわいい推しへの「好き」の気持ちは、当然ながら異なるものだ。多様な「好き」を描き、前者にフォーカスすることで、後者が際立つ構造になっている。
本作は「ラブコメディ」を謳いながら、推し活ブームのこの社会において、私たちの「好き」がどのようにつくられているのかを描くドラマであり、むしろ恋愛要素はなくてはならないもので、本作を描くためには、この「ラブコメディ」のスタイルほどマッチするものはないだろう。
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ドラマの持つリズムと演者の身体

本作は非常にリズミカルな作品でもある。チュチュチュエラが誕生して以降、草壁はしきりにこの名前をリズムに乗せて口ずさんでいる。単純なリズムだが、いやだからこそ記憶に残るものだ。それから草壁が生み出すリズムといえば、ときおり彼女は自宅の押入れの中で「ミッドナイト押入れアカペラ女」として自作の歌を口ずさんできた。それらはいつも唐突だからこそ、個々のシーンがより際立ち、私たち視聴者にリズムを印象づけるものになっていると思う。
松本若菜の生み出すこうしたリズムは本作を活気づけ、このドラマならではの特徴になっている。加えて、瀬尾を演じる佐野勇斗は、大人気ボーイズグループ「M!LK」のメンバーであり、日頃から歌と踊りに向き合っている彼の声や身体はどこか常にリズミカルだ。草壁の言動に対する瀬尾のリアクションを思い出してみてほしい。そのどれもが瀬尾という人間の大胆さや不器用さを示しながら、同時にタイミングよく、気持ちのいいリズムを持っていることに思い当たるはずである。
もちろん、本作の持つリズムは、オリジナル脚本を手掛けた宮本武史の作劇によるところは大きいだろう。ストーリーは絶えずアップテンポだ。そして、草壁らの人生を、ときに振り切れた演技を交えながら、松本たちがキャッチーに体現している。星野源による主題歌“好き”に合わせて草壁と瀬尾、そして本作に登場するキャラクターたちがパペットダンスを披露するエンディングも象徴的だ。全編を貫くリズムこそが、本作をよりポップに見せている。