「ケンティー」こと中島健人。『SUMMER SONIC 2026』では話題のアイドルを一目見るべく、国籍・性別問わず多様な観客が押し寄せ、フロアは満員になった。出演後にSNS上でも話題をかっさらっていた彼のステージを振り返り、「ケンティー」という存在が、今どうして多くの人の熱狂を集めているのか考える。
INDEX
アジアツアー目前。『サマソニ』で「ケンティー」を見せつける
2024年のSexy Zone(現:timelesz)卒業後、ソロデビューから歩みを止めることなく精力的に活動し続ける中島健人。グループ時代から海外志向を公言してきた彼は、2026年、一段とギアを上げようとしているようだ。
2026年2月にリリースした2ndアルバム『IDOL1ST』は、ソロアーティスト・中島健人が「アイドルであることそのもの」をテーマに据えた1作であり、「ケンティー」という自身のアイドル像を背負ってさらなる歩みを進めていくことの宣言だった。
自身で作詞作曲を手がけた収録曲“最初はキュン!”は、中島ならではの言葉遊びとキャッチーな振付でSNSやショート動画においてバズ曲となり、7月にはアルバムを提げた全国ツアーを大盛況で終えた。8月末からの台北、バンコク、ソウルを巡る自身初のアジアツアーを目前に控え、迎えたのが『SUMMER SONIC 2026』(以下、『サマソニ』)初出演のステージだ。
アジアツアーの開催発表時、中島は「日本のアイドルとして、一本のマイクに愛と魂を込めて」「世界に全力で僕をぶつけます」とコメントしていた。その言葉を踏まえれば、海外のアーティストたちと肩を並べるこの日のステージは、大きな意味を持つ機会だったはずだ。

東京公演で中島が立ったPACIFIC STAGEには、ラウドロック系のバンドからボーイズグループまで、ジャンル、国籍ともに多彩な顔ぶれが並んでいた。客席には熱心なファンもいれば、なんとなく足を止めた人、たまたま居合わせた人もいる。中島は、知名度こそずば抜けているかもしれないが、必ずしも「ホーム」とは言えない場でのパフォーマンスだった。
INDEX
大歓声の中、現れた王子
開演数分前、U:nity(※)と思しきフロア前方のファンたちから「健人コール」が上がる。待ちわびたその声に応えるように、スクリーンには「KENTO NAKAJIMA」の文字が浮かび、本人が姿を現した。
※U:nity:公式ファンネーム。ファンと中島健人さんが一つに繋がるという意味や、一体感を表す名称となっている。

フェスとあって舞台上に特別な装飾はなく、スクリーンと照明のみのシンプルなセット。中島は、キラキラと輝くたくさんのビジューがついた白ジャケットに黒のパンツ、そして大きな王冠のバングルが目を引く、スタイリッシュな出立ちだ。
「騒げんの、サマソニ!?」開口一番、客席を煽ると、少年隊“仮面舞踏会”のお馴染みのフレーズをサンプリングしたイントロが華やかなミドルテンポの楽曲“XTC”でステージの幕が開けた。
そのままダンサー「N’s Performer」を従えて“IDOLIC”へ。ジャジーな跳ねるピアノが心地いいこの曲は、アイドルとしての「仮面」や「影」を歌う“XTC”と対をなす、光に満ちた1曲だ。キレのあるダンスブレイクで客席を沸かせ、ジャケットプレイで肩をのぞかせると歓声はさらに大きくなる。アイドルとして「ver2.0」へと進化を遂げる中島の「いま」を表す2曲で、早くも『サマソニ』のオーディエンスの心を掴んでいく。

「初めての『サマソニ』で胸がドキドキしていたけど、いまは僕がみなさんの胸をドキドキさせているみたいです」。
MCでは「ケンティー節」全開のトークに、いつのまにか満員になったフロアが歓声で応える。海外からの観客にも得意の英語で挨拶を忘れない。2025年には香港のフェス『Clockenflap』に出演し、『サマソニ』直前にはバンコクとソウルでのプロモーションツアーで、バスキングもこなしてきた中島。言葉が通じない見ず知らずの観客の前でパフォーマンスを重ねてきた経験があるからこそ、初見の観客も多いであろうフェスのステージでも、その堂々とした佇まいは揺るがない。
バンコクではゲリラパフォーマンスを披露した他、現地の花屋13店舗で購入したバラを配布。「ビラじゃなくてバラを配ろうと思って」とインスタライブで実況したことが話題となった。またソウルでは漢江エリアなどで路上ライブを実施し、1,000人規模の観客が集まった。
INDEX
アニソンもバッチリ。世界への入り口を開いていく
マイクスタンドが運ばれると、盟友キタニタツヤ提供のバラード“Waraigusa”でのびやかな歌声をじっくり聴かせる。それまでの熱気がクールダウンしたかと思えば、一転、キタニとのユニットGEMN(ジェム)の楽曲“ファタール”へ。この曲はアニメ『【推しの子】』第2期のオープニング主題歌。疾走感のあるビートに自然と手拍子が起こり、中島も「心の底から叫べ!」とシャウトでさらに煽ってみせる。

勢いはそのまま最新曲でアニメ『逃げ上手の若君』のオープニングテーマでもある“鬼事”を披露。アニソンが世界に開かれた入口であることを、中島もまた意識しているのかもしれない。ここまでひとりで歌い踊り続ける中島だが、激しい運動量にもブレない歌声に、アーティストとしての経験値と底力を感じさせる。
ふたたびのMCタイムでは、男性ファンからも上がる大きな声に満足げな表情を浮かべる中島。ジャケットを脱ぎ黒タンクトップ姿になると、会場全体から黄色い歓声が湧く。

「N’s Performer」を呼び込み、もう一つの新曲“Fiction Love”が流れ出す。作詞作曲に加えて振付も中島自身の手によるこの曲では、イントロからU:nityが掛け声で盛り上げる。ステージ上ではこれまでのクールな雰囲気から一変。中島はダンサーと笑顔を交わしながらキュートな一面をのぞかせ、会場全体がハッピーなムードに満ちていく。
INDEX
「最強のアイドルになる男です」(中島)
その空気は<LOVE KENTY!>の掛け声練習から始まった“CANDY ~Can U be my BABY~”でさらに加速。声を合わせて客席が一体となるなか、中島は「初めて僕のことを見た人も覚えておいてください。最強のアイドルになる男です」と宣言し、熱量をもっと引き上げてみせる。
続いてアイドルソングを畳みかけ、フェス初披露の“Hey!! Summer Honey”というファンには嬉しいサプライズ。いずれもグループ時代のソロ曲で、初めて聴く人も多いはずだが、それでも自然と手が挙がる光景は、楽曲のキャッチーさ、そして「ケンティー」のエンターテインメントの理屈抜きの楽しさを物語っている。

最後のMCでは、「フェスって超楽しい!」と素直な本音をのぞかせつつ、「まだ全然経験がない身なんですけど、こうして中島健人としてステージに挑んでいます。今日の自分をどうか受け止めてください」とまっすぐ語りかける中島。
さらなる歓声を受けて始まったのは、『ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック』でTEAM JAPAN公式応援ソングとなった“結唱”だ。選手にエールを届けたシンガロングパートは、フェスのステージによく似合う。見る者を魅了するセクシーさとキュートさだけでなく、背中を押してくれる力強さまで、中島が持つアイドルとしての多面的な魅力を、短い時間にいかんなく発揮させるセットリストだ。
INDEX
自分だけのアイドル像を絶えず模索し、更新し続ける
あっという間の40分間を締めくくったのは、“最初はキュン!”。中島は「みんな、キュンできんの?」と呼びかけながら、じゃんけん風の振付を「N’s Performer」とともに披露し、盛り上がりも最高潮に。ラストまでキレの衰えないダンスはダンサーたちとの息もぴったりで、歌唱も終始安定したまま。汗だくになりながら観客を楽しませ、「最強のアイドルになる男」の名にふさわしい姿を見せ切った。

「ラブ?」「ケンティー!」のコールで去っていく中島を見送りながら、その場にいた多くの人がきっと、気づけば「ケンティー!」と返していたはずだ。そんな「お決まり」に自然と人を引き込んでしまう力が、中島のライブにはある。そして、その力の原動力となっているのは、観客が感じた「楽しさ」なのではないだろうか。そんなことをあらためて思わされるステージだった。
身体で感じた「楽しい」は、先入観も様々な境界も、やすやすと超えていく。その「楽しさ」を成立させていたのは、歌も踊りも終始全力ながら崩れることのない完成度の高いパフォーマンスと、ファンが求める「ケンティー」像を惜しみなく見せてくれる姿勢だろう。

“IDOLIC”で「偶像を超える」と歌った中島だが、彼が目指しているのは誰かに作られた偶像ではなく、これまでの経験や感情が刻まれた生身の身体を持って自分だけのアイドル像を絶えず模索し、更新し続けることなのかもしれない。
その姿勢は、ライブの冒頭を飾った“XTC”にも表れている。中島は自身のルーツにある日本のアイドル文化を背景にしながら、国外のアーティストたちとも積極的に交流を重ねている。『サマソニ』同日にはフィリピンのボーイズグループ・SB19のステージにも飛び入り参加した。

SB19の楽曲“GENTO”を「KENTO」の替え歌で参入して双方のファンから熱狂を生んだ
貪欲に新しいものを取り込んで、自らの道を切り開いていく。その姿勢のまま、きっと唯一無二のアイドル「ケンティー」として世界にも挑んでいくのだろう。まだまだ中島健人の姿から、目が離せそうにない。