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最も美しい映画館「Kino International」が物語るベルリンの過去、現在、そして、未来

2024.5.14

#MOVIE

Photo by Ben Kaden

都市開発により、変わりゆくベルリンの姿

昨年、生誕60周年を迎えた「Kino International」は、ドイツの映画史に残る名作を期間限定で上映するイベントが開催されたのち、約2年間に及ぶ改装工事に着手するという。改装前に駆け込むように同館を訪れている人も多いが、長期間に渡る改装工事ではどのようなことが行われるのだろうか? 同館を含めた14の映画館を運営する「Yorck Kinogruppe(キノ・グルッペ)」の広報担当者にいくつかの質問を投げかけた。

ー「Kino International」は、歴史を物語る美しい建造物としてファンも多いと思いますが、改装後は姿を変えてしまうのでしょうか?

当館は、有形文化財に指定されており、国の重要な記念碑とされている歴史的建造物です。そのため、大幅に改修することは法律によって禁じられており、外観が変わることはありません。キレイに洗浄され、必要に応じて修復されるだけです。損傷が大き過ぎて修復が不可能な場合は、当時の風情を壊さないように伝統文化に従って再現されることがあります。改装ではなく、修復と言った方が正しいかもしれません。なぜなら、表面的な部分ではなく、その下にある電線や暖房、その他のインフラ全体を見直して、新しくする必要があるからです。

突き出た2階部分が圧巻の存在感を放つ外観

法律が変わらない限り、ベルリンで最も有名で希少価値のある映画館が姿を変えてしまう心配はないようだ。しかし、ベルリンはすでに何年も前から都市開発に躍起になっており、文化財に指定されていない廃墟同然の古い建物が次々と解体され、高級感漂う現代的な高層ビルの建設が後を経たない。

ー歴史的建造物を大切にする文化が根付いている一方で、都市開発によるジェントリフィケーションが進んでいると感じています。それについてはどう思いますか?

都市開発は街を活性化させるために必要なことだと思いますが、ベルリン全体としてはまだまだ改善の余地があると思っています。パリやオランダの多くの街では都市全体の生活の質を向上させるための大きなビジョンを持っています。ベルリンでもミッテ区のように活気があり、持続可能な街づくりを目指すコミュニティのある地域はたくさんあります。当館はミッテ区のランドマーク的存在であり、地域を改善するための取り組みにおける重要な一翼を担っていると考えています。

ー日本ではIMAXや4DXといった最新のテクノロジーを投入した映画館が主流となり、歴史も風情もある単館系の映画館が次々と閉館しています。ドイツとは真逆な傾向にありますが、それについてどう思いますか?

日本の映画事情には詳しくありませんが、ヨーロッパには「Kino International」と同じように歴史ある映画館が多数あり、映画鑑賞に素晴らしい雰囲気をもたらしてくれる美しい映画館ばかりです。しかし、歴史ある映画館のほとんどは、技術的な面において現代に適応する最新の状態を維持していたからこそこれほど長い間生き残ることができたのです。日本のように技術的な部分を重要視することも映画体験では重要な要素だと思っています。私たちは、映写室や音響から座席や売店に至るまで、映画館のすべてを定期的に更新しています。そうすることで単に美しいだけでなく、観客の皆さんに満足してもらえる映画館としても維持できるのです。

カフェのようにリラックス出来る美しいラウンジスペース
ベルリン国際映画祭のパーティーの様子

1989年にベルリンの壁は崩壊され、翌年の1990年にドイツは再統一された。旧西ドイツが旧東ドイツを吸収合併する結果となったことから、社会主義国家を象徴する建造物は次々と取り壊され、それと同時に旧東ドイツの面影も失われていった。「Kino International」は、まさに激動の時代を生き抜いた証としてこれからも大切に保存されていくだろう。壁のあった時代の痕跡が今も残るベルリンはどこかミステリアスで不思議な魅力がある。古さと新しさが共存し、ドイツの他都市にはない独自のカルチャーを確立するこの街の変化に今後も目が離せない。

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