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惨めで不格好な姿も受け入れる、友達だから
約束の当日、時間になっても真壁は現れず、しばらく連絡すら取れなくなってしまう。路上ライブもまた1人で参加することになった吉村のことを、つとむも少し気にかけている。

そんな折、つとむが吉村と真壁の友情をテーマに作った曲を聴いた吉村は、真壁が自殺を図ったのではないかと案じ、彼女の自宅を始めに必死の思いで捜索し、荒川の土手でようやく彼女を発見する。
真壁はそこで、実は調子が良い時に散財したため、お金がなくて約束した日に休んだこと。惨めさ故に、そのことを言い出すことができなかったこと。吉村はきっと自分の明るい面だけを見て自分に好意を持ったに違いなく、そういったことを考えている内に、ずるずると時間が経ち、連絡できなかったことを吐露する。そして死にたいと思ったとも。真壁の心情を受けた吉村は、「生きていてほしい、どうしようもない時は電話をしてほしい」と伝える。その上で吉村の方から「だって、友達じゃないですか」と宣言する。
相手を理解したり尊重することとは、見て見ぬふりをして触れなかったり距離を取ることではない。それでは傷付かないかもしれないが、本当の意味で信頼関係を築くことはない。そのことを吉村は心の底から痛感するのだ。吉村が初めて真壁に「友達になりたいです」と伝えた際、恋人じゃないのに変だねと打ち消すのだが、「何も言わなくても友達だと思っているよ」と真壁が返すシーンがある。
大人になってからの友達関係は、まさに恋人を作るような覚悟で、無粋を承知であえて「友達じゃない?」と問いかけてみることで、自分と相手の恥部をも受け止める、一歩踏み込んだ友達関係がスタートするのかもしれない。再びつとむの路上ライブに駆けつけた吉村と真壁は、彼に「ありがとう」と伝え、3人で歌って幕となる。
