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路上ミュージシャンのライブをきっかけに出会った2人の人生が交錯していく
本作に登場する正社員の事務職員・吉村(A 飯尾朋花 / B中島梓織 / C小澤南穂子)も、誰かが夜中にふと寂しくなった時、自分に電話をしてくれるような友達を求めている。しかし彼女は、人から嫌われることも、人を嫌うことも避けるあまり、人と距離を置いて生きている。
過剰に気を遣って人と接する吉村は、同僚の有山(Aタナカエミ / B百瀬葉 / C冨岡英香)と小川(A中島 / B小澤 / C飯尾)から飲み会やランチに誘われても、遠慮がちに断ってしまう。そんな彼女の唯一の楽しみは、路上ミュージシャン・つとむ(A小林駿 / Bてっぺい右利き / C藤家矢麻刀)のライブを聴くこと。吉村は、ゆったりとした曲調で孤独を歌うつとむの歌詞に共感しているのだが、いつも観客は彼女ただ1人しかいない。
そんなある日、自転車で通りかかったフリーター(倉庫作業員)・真壁(A冨岡 / Bタナカ / C百瀬)が聴き入る。つとむの歌にいたく感動した真壁は、グイグイと彼に話しかけてツーショット写真を撮る。その光景を羨ましそうに見ている吉村に真壁は話しかけ、つとむとのツーショットの写真を撮ってあげる。そしてつとむのXアカウントを吉村から聞き出した真壁は、その日以来、つとむがXで王子や赤羽、十条駅前で行うというライブ告知を掴んでは、現地に現れるようになる。

明るくリードしてくれる年上の真壁のSNSやブログをチェックするようになった吉村は、彼女と友達になりたいと思うようになる。真壁から誘われて飲みに行った際に奢られても、自然に身を任せられる安心感を得る。本作は偶然に出会った吉村と真壁が、互いの距離感に思い悩みながらも徐々に理解し合う過程が丁寧に描かれる。そんな2人をつないだつとむが、彼女たちを優しく見守る物語である。