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ビヨンセ『COWBOY CARTER』――「アメリカ音楽」を再定義する広大な80分間の旅

2024.4.3

#MUSIC

ジャンルを超えた客演と引用

“Spaghettii”のイントロで、黒人カントリーのアイコンであるリンダ・マーテル(Linda Martell)はこのようにスピーチをする。

Genres are a funny little concept, aren’t they?(ジャンルって変な考え方じゃない?)

Yes, they are(そうだわ)

In theory, they have a simple definition that’s easy to understand(単純な定義があって理解しやすいけど)

But in practice, well, some may feel confined(窮屈に感じる人だっているわ)

“Spaghettii”

もしビヨンセが単にメインストリームのカントリーヒットを作りたかったのなら、経験豊富なナッシュビルのプロデューサーやミュージック・ロウのベテランソングライターを雇っていただろう。しかし、『COWBOY CARTER』にはもっと壮大な野望がある。

公民権運動について書かれたThe Beatlesの”Blackbird”のカバーにはタナー・エデル(Tanner Adell)、ブリトニー・スペンサー(Brittney Spencer)、レイナ・ロバーツ(Reyna Roberts)、ティエラ・ケネディ(Tiera Kennedy)といった若い黒人カントリーアーティストたちが参加。”Spaghettii”では、バージニア州のカントリー・ラップアーティスト、シャブージー(Shaboozey)がアウトローな雰囲気のドリルビートを乗りこなす。ポスト・マローン(Post Malone)が参加する“Levii’s Jeans”やマイリー・サイラス(Miley Cyrus)が参加する”II Most Wanted”ではスムーズなR&Bとカントリーバラードの融合とも言えるサウンドを作っている。

「これはカントリーのアルバムではない、ビヨンセのアルバムだ」(This ain’t a Country album. This is a “Beyoncé” album)

Instagramより

その言葉通り、ジャズからブルース、ヒップホップまでさまざまなスタイルがカントリーミュージックと交わるテキサスで育ったからこその感覚で、あるいはジャンルの境界を壊していくポップスの代名詞であるアーティストとして、様々なエッセンスを織り交ぜていく。

The Beach Boysの”Good Vibration”からの引用や、ナンシー・シナトラ(Nancy Sinatra)の”These Boots Are Made for Walkin’”がサンプリングされている”YA YA”は1960年代の香りが色濃く感じられる。歌詞に登場する「rodeo chitlin circuit」は人種隔離された南部を中心に設けられた劇場で、黒人たちが独自に築いたショービズのシンボルである。

From Texas (From Texas)(テキサスから)

To Gary (To Gary)(ゲイリーまで)

All the way down to New York City (New York City)(はるばる下ってニューヨークまで)

”YA YA”

インディアナ州ゲイリーは、ビヨンセが多大な影響を受けたマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)の故郷だ。

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