2026年11月15日(日)に開催される、NiEW主催のサーキットイベント『exPoP!!!!!再会 2026』。音楽ライター / 批評家3人に、見逃せない出演アーティストや、注目のポイント、おすすめの過ごし方などを語り合ってもらった。
これを読めば『exPoP!!!!!再会 2026』をより楽しめること間違いなし、座談会「What’s NiEW MUSIC」第21回。
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世界で話題沸騰中のバンドに、オーディション枠のニューカマー
—『exPoP!!!!!再会 2026』に出演するさまざまなアーティストの中でも、このアーティストは要チェックという、おすすめのアクトをみなさんにお伺いできたらなと思います。まず風間さんはいかがですか?

風間:僕は個人的に取材したことのあるバンドも多いし、普段からライブ見ているバンドも多いので、このラインナップを見て、本当に時間の隙間がないな……という感じです。出演者オーディション枠で出演が決まった京都のOoは、先日ちょうど関西でライブを観て、すごくいいバンドだなと思ってCDも買ったところだったんです。ダンエレクトロを持ってガシャガシャやる感じのパンキッシュなバンドで、メロディーもすごくいいです。
風間:O-EASTは1発目からTrooper Saluteで、彼らは「Album of the Year」(※ユーザー投票型のレーティングサイト)でいま世界3位になってますからね。最初からめちゃめちゃ混むと思います。
柴崎:Trooper Saluteはめっちゃブレイクしそうですよね。いわゆるJ-POP感をてらいなくオルタナロックに混ぜているように聴こえるところにすごく新世代感を感じます。J-POPの朱雀大路を行くぞ、という感じのメロディーで、ライブを観てみたいと前から思っていて、まだ観れていないんですけど……。
柴崎:個人的には、たぶん風間くんも推してたと思うんですけど、タデクイというバンドは素晴らしいですよね。はじめて聴いたときにびっくりしました。ジャズとかブラジル音楽の要素があったり、アンサンブルも非常に練り上げられていてしなやかでいながら、それでいてクールな佇まいもあって、非常にライブを観てみたいなと思っているバンドです。
風間:そうですね。各々のソロ回しもあるし、ライブで本当に映えるバンドだと思います。前回の座談会で座布団忍者の話が出ましたけど、それよりもさらに下の世代なのかな? 20歳とか21歳とか。
TUDA:それくらいですね。北海道出身で。
風間:それで、前身のバンドも含めて5年くらい前からすでに同じようなことをしていて。
柴崎:そんなに若いんですね。そういう人が出てくるのはすごいね。
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この会場でこのアーティストを? という面白さ
風間:タデクイはしかも、今回club asiaでやるんですね。TUDAさんはasiaによく行かれていそうな印象がありますけど……。
TUDA:クラブに行き出した頃によく行ってましたね。『AVYSS』のイベントとかもasiaでやってたし、そういう「みんな集合」系のイベントで行く場所というイメージです。メインフロアは天井がめっちゃ高くて、タデクイのようなちょっとミニマルな感じだとちょうどいいんじゃないかな、という気がする。
風間:今回asiaに出るバンドは、ちょっとチル系が多いというか。
TUDA:そうですね。スカートがasiaに出ることなんてあんまりないんじゃないかな。
柴崎:たしかに。あとWOMBも会場なんですね。WOMBには思い出があって、正しくはWOMB=ウームと読むところをウォンブと誤読して、あえてそれをそのままタイトルにしたイベントがあったんです(=『月刊ウォンブ!』)。前回のテーマだったいわゆる「東京インディ」周辺の人たちが続々と出て。あの空間で弾き語り系の人たちもやる、みたいなイベントで、すごく幸せな時間だったですね。WOMBで聴く生音っぽい音もね、すごくよかったですよ。
TUDA:そうなんですね。想像できない。
柴崎:今回(のWOMBの出演者)は比較的クラブっぽい人が多いですけど。
風間:はい。がっつりDJというよりは、Le MakeupとかiVyとか、クラブ的な文脈も持ってるけど生音も使うような人たちが並んでますね。
柴崎:でも最後はmaya ongakuなんですね。
風間:WOMBでmaya ongakuは想像できない!
TUDA:しかもけっこう長尺ですね。
風間:maya ongakuは今年のツアーで場所にすごくこだわっていて。環境によって音楽が変わるということを考えている人たちだから、大小問わずに、会場を一個一個ちゃんと選んでいますよね。北海道はモエレ沼公園ガラスのピラミッド、長野の上田映劇、岡山の陰涼寺……。
TUDA:もしかすると全部円形の場所なんじゃないですか?
柴崎:WOMBも、ど真ん中にステージを組むことはできると思うんだけど、今回どうなってるんでしょうね。
TUDA:そうなったらすごいですね。いいかも。
風間:たしかにこのツアーからの流れで見るmaya ongakuはめちゃくちゃ面白そうな感じがします。
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エレクトロミュージック系の注目アクト
TUDA:WOMBに出ている人で言うと、Le Makeupは、行く方はぜったい観た方がいいよ、と思ってますね。わりとずっと個人的なことを歌う方ではあるんですけど、個人的なことを歌うレベルが上がりすぎると全てのことを歌える、みたいな状態になることがあるじゃないですか。何か月か前に出た『The Crying Xpress』という新しい作品は、そういう意味でキャリアハイというか、すごい地点にいる感じがするアルバムなんです。
サウンド的には、エレクトロニカとかをベースに、さっき風間さんが言ったようにギターも入れたりしています。柔らかい音の中で、自分の出した言葉と自分の感情が接続していないみたいな、そういうズレについて歌っているような人だと思っているんですけど、それがいまかなり極まっているので、ライブでぜひ観てもらいたいですね。「そこらへんで友達が歌ってる」ような、親密な感じも楽しいです。
風間:Le Makeupの前に出るCwondoさんも、No Busesというバンドでのキャリアがある一方、どんどんフレッシュになっているというか、マシンライブの可能性としてだいぶ面白いことをしていますよね。クラブで活動している人たちともたくさん接点があるし、Cwondoさんのつながりは面白いです。
風間:『exPoP!!!!!再会 2026』は今回、事前に「時間が被ってほしくないアーティストいますか?」というアンケートをSNSで取ってましたけど、個人的にはHUGENとCwondoさんが若干重なるのはもったいない感じがします。でも会場が近いから、がんばれば両方行けるかな。
柴崎:ホテル街を駆け抜ければなんとかなるね! HUGENさんってライブはどういうセッティングなんですか?
風間:HUGENはけっこうバンドでやってます。パーカッションがいて、サックスがいて、ラップトップはもちろん据えてはいるんですけど。
柴崎:そうなんですね。なんというか祝祭感みたいなものがけっこう重要なキーになりそうな気がするので、それはすごく良さそう。しかも7th Floorでやるんだ。すごい濃密な空間になりそうですね。
風間:そうですね。たとえば大石晴子さんは7th Floor然としていて、空間に馴染むのはわかるんですけど、Meg Bonusとかもいろんな形態でのライブがある人で。今年、野口文さんとの2マンライブを、高輪ゲートウェイ直結の施設の中(※MoN Takanawa内のBox300)で見ました。お互いにほぼアンビエントセットなんだけど、Meg Bonusの方はバンドとハードを合わせながら自分の曲も一連の1時間の中に組み込んでいくみたいな、壮大なライブをしていました。それを7th Floorでやるとどうなるんだろう? というのはすごく気になります。けっこう「この場所でこれってどうなるんだろう?」という注目ポイントはあるかもしれないですね。
TUDA:Peterparker69が一番大きいステージっていうのは、すごいですね。彼らは「気づいたらいつの間にかすごいことになっていた」の筆頭で。
風間:今年Zepp Yokohamaでやったのも話題になりましたね。僕も音源は聴いてるし、フェスでたまに観ていましたけど、近いところを大事にする人たちなんだろうなと思います。そのまま着実に求心力が高まっていっている。
TUDA:5年前くらいにContactだったか、大きめのクラブのひとステージで見た記憶が最後で。そこから今Zeppでやっているのは、めっちゃびっくりしますし、O-EASTでどういう感じでステージングするのか気になりますね。
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この時代だから、「人間にしかできないこと」を。身体感覚を感じるアクト
—柴崎さんはこのラインナップの中で、ライブが印象に残っていたり、観てみたいアーティストはいますか?
柴崎:そうですね、さっき言ったタデクイと、あ、あと、先日NiEWでインタビューもさせてもらったんですが、ここへきてグッとハードロック化しているDYGL。新作は、いまの時代にこれ以上正しいカウンターがあるのだろうか、という感じがしました。いま、ロックバンドたるロックバンドである矜持、というか……。秋山さんのボーカルが本当にロバート・プラントみたいになっている瞬間があるんです。

https://niewmedia.com/specials/2611dygl_edokd_wrsbs/
風間:そうなんだ(笑)。全然イメージわかないですけど。
柴崎:本当に。これをステージで歌い続けるのはハードかも、みたいなことも言ってて(笑)、実際どうなるんだろう、って。
風間:本当に歌えるのかどうか、っていう。DYGLも前作くらいからモードが変わって、それが良い方向に傾いていますよね。ギターの下中さんは、高中正義のオマージュみたいなソロアルバムも出しました。
柴崎:そうそう。やっぱり人間にしかできないことをやる、ということの原点を突き詰めると、そうなるんじゃん、っていう。(DYGLの『All Tomorrows』は)ジャケットも1980年代の産業プログレみたいで。
TUDA:うん。レスポールが真ん中で光っていて。
柴崎:もはや武道館とかでやってほしいですもんね。あの内容はライブで映えそうだなと思いました。
風間:たしかに。『Live At Budokan』出してほしいですよね(笑)。
柴崎:あと、幽体コミュニケーションズは今年観ました。すごいよね、あの身体能力というか……。
風間:幽体コミュニケーションズこそ、小さい親密な会場での映え方がすごいと思います。
柴崎:新作を聴かせてもらったんですけど、けっこうラテン色が入ってきてたんですよね。打ち込みとかも使うけど、あんまりスクウェアなビートというより、わりと揺らぐというか、ダイナミクスみたいなものを大事にしている人たちなんだと思うんです。それがライブでどうなるんだろうというのを、観てみたいです。
風間:どういうラテンなんですか?
柴崎:現在進行形の主流ラテンポップというよりは、どちらかというと伝統的なラテンのリズムとかネオフォルクローレ的なフレーズを取り入れていくみたいな感じというか。ポストDTM的な潮流の中で、再び身体性とか肉体性をブーストする装置として、ラテンミュージックの躍動感を用いる動きが、なんとなく世界的にある気がしていて。彼らみたいな、いわゆるパーティー感が前面にあるような人たちではない場合でも、それを入れ込んでいるっていうのは、面白い動きだなと思って。そういう意味では、新作を経てどんなライブになるのか、楽しみですね。
風間:たしかに。あと、まだ話に出ていないところだと、BREIMEN、えんぷてい、w.o.d.のような、R&Bとかを咀嚼した若いバンドの流れもあったりして、いろんな線の見方ができるラインナップだと思いますね。
柴崎:しかし本当にラインナップが多彩で、正直僕が存じ上げない若手の方も多いですけど、ざっとあらかた聴かせていただいた感じだと、基本的にはNiEWが掲げているオルタナティブなカラーがあるんですね。やっぱり。
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2010年代のO-nestの空気と『exPoP!!!!!』
風間:柴崎さんは『exPoP!!!!!』が始まった頃の風景を知っているかも、と思うんですけど、いかがですか?
柴崎:丸山町の思い出って言うと、すごい酒飲んで翌朝つらいなという印象がまず……(笑)。あの辺で二日酔いになっている印象がぱっと浮かんじゃう。僕がよく行っていたのは、やっぱり仕事(=A&Rを担当していた国内インディアーティスト)の関係が多かったんで、2010年代が多いと思いますけど、2007年からやってたんですね。
いま調べるとDE DE MOUSEさんとか口ロロとかの名前が出てきたり、あとは2008年に相対性理論が出ていたり、のちのちブレイクする人たちが無料で観れていたということですよね。そう考えるとすごいよね。当時O-nestには、とにかく多い時は週2とかで行ってたんです(笑)。だから、あれが『exPoP!!!!!』だったのかそうじゃなかったのかって、記憶がぐちゃぐちゃになっちゃってるんだけど……。
風間:僕は2020年に上京したので、O-nestが特殊な箱だったというニュアンスはあまりわからなくて、どんな感じだったのか気になります。
柴崎:O-nestは本当に溜まり場みたいになってたんです。階段を下りてフロアに行く(※)でしょ? その前の(上階の)ラウンジが、厨房で働いている人たちとかも友達だったし、ふつうに飲みに行く感じだったんですよ。ときにはチケットを持ってなくて、下にライブを見には行かないんだけど、そのときに来てるお客さんに友達がいて一緒に飲んだりとか。
※O-nestは6階が入り口 / 受付で、5階にメインのライブスペースがある構造になっている。
柴崎:当時岸本(純一)さんという方が店長でいらっしゃって、本当にお世話になり尽くしたという感じで。岸本さんが、本当にインディアーティストをものすごく応援するという心意気のある方で、だからこそ『exPoP!!!!!』みたいな企画が成り立っていたと思うんです。ステップアップのために次は2マンでやってみようか、とか、じゃあ次はワンマンだね、今度はO-WEST狙ってみたら? みたいに、アーティストのキャリア形成にまでコミットしてくれるような、それでいていわゆる昔のライブハウスのおじさんみたいな感じじゃなくて、優しい先輩みたいな感覚で親身にアドバイスしてくれる人だったので、すごく慕われていて。
その岸本さんが作り上げたカラーがあって、そこで当時のCINRAが一緒になって『exPoP!!!!!』をやっていて、インディのエコ経済のようなものができていたなという印象があります。
参考記事:文化を作り上げた名店ライブハウスO-nestの20年を店長らに訊く. CINRA, 2016
https://www.cinra.net/article/interview-201602-onest
参考記事:震災もコロナも乗り越えた20年。Spotify O-EAST店長が語るライブハウスの生存戦略と、新たな変化. CINRA, 2023
https://www.cinra.net/article/202305-oeast_skkskcl
風間:それを聞くと『exPoP!!!!!』がなんで無料でやり続けているのかちょっとわかる気がします。O-nestは来日公演とかもやっていたんですよね?
柴崎:そうそう。USインディ系とかいろいろ来てて、当時は小中規模の呼び屋さんがO-nestを使うのは定番化してましたよね。僕もいろいろ観に行きましたよ。SUPERCHUNKとかQUASIとか。そういうインディ的なものを応援しようという気持ちを持ったライブハウスが渋谷にはいくつもあって、個人的な経験に照らして言えば、(O-EAST系列を運営する)シブヤテレビジョンという会社の現場の人たちは、本当にみんなめちゃくちゃ優しいんですよ。とてもお世話になったし、そうしたモードや空気が『exPoP!!!!!』のような形でみなさんの世代にもずっと受け継がれていったら、素晴らしいことだと思います。本当に。
しかしこうしてラインナップを見てみると、昔の『exPoP!!!!!』って、もっといい意味でバリがあるというか、飛んでる人がたくさんいた印象もあって。そう考えると最近のアーティストさんは、みなさんシュッとしてなという感じがします(笑)。仕上がりが素晴らしい人たちが多いな、と。下手するとサニーデイ・サービスが一番ごつごつしている可能性すらある(笑)。
風間:たしかに。最後のサニーデイがどうぶち壊すのか、楽しみです。