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「伝統とは、火を守ること」
後藤さんはこれまで数多くのジャズ関連本を出版しているのだが、2015年に出版した『厳選500ジャズ喫茶の名盤』あたりから21世紀以降のジャズを積極的に紹介するようになっていて、2023年の『ジャズ喫茶いーぐるの現代ジャズ入門』ではそのディスク選をすべて21世以降のジャズだけで行った。そこからはいーぐるの選曲への考え方と同じものを読みとることができる。新しいジャズの新しさを書くのではなく、その新しいジャズがいかに過去のジャズとつながっていて、過去のジャズを聴いてきたリスナーにはより深く楽しめる音楽だということを丁寧に説明しているのだ。
つまり、この本は自身と同じように長い間ジャズを聴き続けてきた同世代への親切な提案になっているわけだ。そして同時に、若いリスナーを、新譜をきっかけにしてジャズ史へといざなうためのガイドにもなっている。過去と現在を巧みかつ自然につなぎ、幅広いリスナーにジャズを楽しんでもらうこと。この本の核心はまさにいーぐるで日々行っている選曲の哲学そのものだと僕は思う。

僕がアレハンドロ・アヤラをいーぐるに連れて行ったのは、その後藤さんの哲学がInternational Anthemの志向とも通じるものがあると思ったからだ。実際にアレハンドロは後藤さんの姿勢にいたく感動していて、ふたりは深く語り合い、親交を深めた。後日、彼のInstagramには写真と共に以下の言葉が添えられていた。
“Tradition is not the worship of ashes, but the preservation of fire”(伝統とは火を守ることであり、 灰を崇拝することではない。)
Gustav Mahler(グスタフ・マーラー)
《いーぐるが選ぶ5枚》

(左上から時計回り)
・Eric Dolphy『Here And There』
・Jackie McLean『Right Now!』
・Bill Evans Trio『Sunday at the Village Vanguard』
・Julian Lage『Speak To Me』
・Makaya McCraven『In These Times』
いーぐる
住所:東京都新宿区四谷1-8
営業時間:月~金=11:30~23:20 土=12:00~23:20
定休日:日・祝日
※開店から18:00までの時間は、会話はご遠慮ください。
http://www.jazz-eagle.com