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時代やスタイルの違う音楽が自然につながる選曲
そして、その選曲の幅はものすごく広くても、決して「雑多」ではないバランスに落とし込まれている。いーぐるが長年生き残ってこられた理由は、すべての選曲が計算されたもので、ほぼすべての選曲に意図や配慮が込められているからだと僕は思っている。
おそらくほとんどのジャズ喫茶は、店主がその場で都度アルバムを選び、流しているだろう。しかし、いーぐるはそうではない。後藤さんは数多くのアルバムからいーぐるにふさわしいアルバムを厳選し、それを考え抜いた順序で流すために独自の仕組みを作っている。

いーぐるには膨大なパターンの選曲のリストがあり、ここでは常にその順番にアルバムがかけられている。新譜がローテーションに加えられれば、新たなリストが作られ、それに沿って流されることになる。そうやっていーぐるの選曲は幾度となくアップデートされ、ブラッシュアップされている。後藤さんが不在の時もスタッフは後藤さんが準備しておいたリストの順番にかけているので、どんな時でも彼が作った選曲を楽しむことができる。いつ、どの時間に行っても、常にいーぐるらしさが保たれているのはそのためだ。後藤さんは何十年もの間、DJというよりはコンピレーション職人もしくはプレイリスト職人のような感覚で選曲をし続けている。
様々なスタイルや時代、地域のジャズが選曲されるのだが、それは全ていーぐるの雰囲気に合うアルバムであり、その選曲の流れにフィットするアルバムだ。最新のUKジャズや、90年代にDJから人気だったアルバムや、ヒップホップの名盤にサンプリングされたアルバムが流れることもある。それらが計算された流れの中でバド・パウエルやジョン・コルトレーンの名盤と共に自然に鳴っている。
