INDEX
「DJっぽさ」と「ジャズファンっぽさ」の両面を併せ持つ選曲
それはそうと、僕がこの店を気に入った理由は、その選曲と音の良さだった。tonlistで流れているのはほぼすべてジャズのレコード。新しいものから古いものまで幅広くかかっているのだが、幅は広くてもなんだか必然性を感じさせるまとまりが感じられる。店主の好みが滲み出ていて、スタイルや時代はバラバラでもしっかりこの店の枠に収めてあるのがとてもいいのだ。
僕がこの5年くらいの間に見つけて気に入っている場所にはいくつかの共通点がある。ひとつは「ヒップホップやDJのカルチャーを通過していること」。1950年代のモダンジャズをかけるにしても、それらを通過していることで生まれる感性が感じられる選曲に出会うと僕はグっときてしまう。宇野さんは昔、DJをやっていたことがあって、デヴィッド・マンキューソやDJハーヴィーが好きだったとのこと。どうりで選曲の流れが自然だし、音量などへの細やかな配慮が感じられて居心地がいいわけだ。それと同時にマンキューソやハーヴィーが好きそうなサイケデリックなフックがあるレコードも時々かかる。絶妙な塩梅には理由があるのだ。

近年、僕が気に入っている店のもう一つの共通点に「1980〜2000年代のジャズもかけていること」がある。この辺のレコードを選ぶ店は多くはないし、DJからも敬遠されがち。人気がないのでレコードは安いのだが、内容がいいものが少なくない。ブルーノートと契約する前のカサンドラ・ウィルソンのレコードのすばらしさを僕に再確認させてくれたり、ウィントン・マルサリスが参加しているレコードにハッとさせられたりしたのはtonlistだった。こういう出会いを作ってくれた店にはおのずと何度も足が向く。
宇野さんは「僕は詳しくないですよ」と謙遜するけど、ある面ではDJ的でありながら、ある面ではDJ的ではない文脈も持っている。いろんな引き出しがあることは、選曲から自ずとわかってしまうものだ。
