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短期連載:『HOSONO HOUSE』再訪

細野晴臣『HOSONO HOUSE』はなぜ、どのようにして海外での支持を獲得していったか

2025.2.3

#MUSIC

『HOSONO HOUSE』はなぜ今、ここまで国内外の支持を獲得するに至ったか

それにしても、改めて考えさせられるのは、なぜこうした状況が引き起こされるに至ったのか、ということだ。

まずは、これまで見てきたように先駆者たちの熱心なレコメンドと啓蒙があったことは当然として、この間急速に整備されていったオンライン上の視聴環境の充実と、グローバルな情報伝播の加速も大きく寄与しているに違いない。

さらには、そうした状況を背景として、北米を中心とするエンタテインメントビジネスの覇権構造が相対化されつつあること、および、それに伴って各地域の文化的なローカリティーが顕在化し、東アジア地域を含む過去 / 現在の音楽コンテンツに対しての興味関心が高まるという、昨今の欧米エンタメシーン内外の「リベラルな」人々による一種の「ポスト・コロニアル」な意識変化も影響していると考えられる(※)。

※筆者注:他方で、こうした「日本の音楽の発掘」の動きに、ある種のオリエンタリズムや、「日本」や「アジア」を文化的ハイブリディズムと逆転的かつ本質主義的に結びつける眼差しが絡み合っている(あるは顕在化している)可能性も指摘しておくべきだろう。詳しくは、拙編著『シティポップとは何か』の第4章以下等の議論を参照(外部サイトを開く

V.A.『HOSONO HOUSE COVERS』収録曲

しかし、それとは別の根源的な理由も存在するはずだ。その理由とはきっと、一個の作品としての『HOSONO HOUSE』自体に刻まれたサウンドやムードが、現在の音楽シーンを取り巻く空気と不可分な形で混じりあっているからに他ならないだろう。

つまり、ポップミュージックのメインストリームにおいてマキシマリズム的なサウンドが急速に伸長してきた昨今、そうした状況への一種カウンターとして、日本におけるホームレコーディング作品の原点というべき『HOSONO HOUSE』が持つ特別な親密さが、今再び「喧騒」から疎外されている(と感じる)人々の心を捉えているのかもしれない、ということだ。

これは、コロナ禍によって加速された「個」や「内省」への回帰のムードとも浅からぬ関係にあるだろうし(だからこそ、細野のアンビエント期の作品へも同じように関心が寄せられたわけだ)、そうしたムードの中で『HOSONO HOUSE』の魅力に取り憑かれた人々にとっては、同作が、大都市から離れてたどり着いた埼玉県・狭山という「カントリーサイド」で気の置けない仲間たちとともに録音されたというストーリーもまた、心地よく心に響いてくるに違いない。

細野晴臣『HOSONO HOUSE』収録曲
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