ディズニー最新作『ビリーと魔法のはじまり』が、12月4日(金)に日本で公開。あわせて予告編が解禁された。
同作のヒロインであるビリーは、ディズニー長編アニメーションの歴史において初となる「現代の高校生」。彼女は歴代のヒロインたちと比べても明らかに異色の存在となっている。これまでディズニー作品のヒロインたちが非日常の冒険へ足を踏み入れる瞬間は、常にドラマチックに描かれてきた。真夜中の階段にガラスの靴を置き忘れるシンデレラや、夜空に舞う灯りを求めて高い塔から飛び出すラプンツェルなど、そこには大いなる自己犠牲やロマンチックな運命の引力を感じる。
しかし、同作の物語は、ビリーが学校のトイレの床に落ちた携帯を拾おうとして、壁の隙間にブレスレットが引っかかるという極めて日常的なアクシデントから始まる。ディズニー作品における、「星に願いをかける」ような動機を一切持たずに、これほど生活感のあるトラブルから物語が始まるヒロインは過去作品を見ても前例がない。
同作は、このアクシデントをきっかけに魔法が暴走し異世界へ誘われる物語だが、この幕開けによってビリーに突きつけられるペナルティも、トイレを損壊したことによる「一発退学処分」という、事務的でスケールの小さなものとなっている。
しかし、現代の学生にとって学校というコミュニティや人間関係は、生活におけるすべて。歴代ヒロインにおいて国を失うことが致命的であるように、高校生であるヒロインにとって退学は自分の世界が崩壊することと同義となる。かつてのヒロインたちが背負ったのは「国が滅びる」といった国家レベルの危機であったが、同作における「学校からの追放」もまた、過去の作品と同じレベルの絶望として機能している。
従来の王道ストーリーであれば、こうした絶望を前に「自分が変わることで誤解を解き、再び社会に認められて居場所を取り戻す」という展開が一般的。しかしビリーの行動は異なり、部屋に現れた扉から「ヘックス」と呼ばれる異世界へ吸い込まれると、「私が変なんじゃない。この世界こそ、私の居場所なんだ」と肯定する。彼女が辿り着いたヘックスは、美しいお城などではなく、沢山の目玉をもつ生き物や謎の魔女たちがうごめく不気味な空間。それでも彼女はあっさりとその環境を受け入れた。現代の若者は、社会に馴染めなくても自分を許容してくれる界隈を見つけて、そこを新たな世界の中心に据える。このコミュニティを身軽に乗り換える感覚は、極めて現代的なリアルを描いている。
ディズニー作品の歴代ヒロインたちは、試練に耐える忍耐力、未知の世界へ飛び出す勇気、あるいは社会の不平等を打破する力など、時代ごとに異なる「強さ」を描いてきた。では、現代を生きる高校生であるビリーが提示する強さとは何か。それは、別の界隈へと圧倒的なスピード感でシフトしてみせる自己肯定感にほかならない。
同作における、ディズニーが描く最新のヒロイン像は、この「しなやかな図太さ」という現代的な強さを体現しているのだろう。
映画『ビリーと魔法のはじまり』

2026 年 12 月 4 日(金)公開
原題:Hexed /全米公開:11 月 25 日/配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
コピーライト表記© 2026 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
監督:ファウン・ヴィーラスンソーン(『ウィッシュ』)/ジェイソン・ハンド(『モアナと伝説の海2』)