かわいいコンビニ店員飯田さんの舞台『空腹』が7月11日(木)から21日(日)まで、東京・下北沢のOFFOFFシアターで上演される。
2011年に、池内風主宰の1人ユニットとして旗揚げされた、かわいいコンビニ店員飯田さん。「1秒でも多く心が動く瞬間を」をテーマに、創作し発表を続ける企画団体となっている。
同公演のテーマは「貧困」となっており、ハラスメントをテーマに2022年に上演された『とりあって』、いじめと自殺をテーマに2023年に上演された『悼むば尊し』に続く、現代のストレスを描いた物語の3作品目にあたる。作・演出を務めるのは池内風。出演者には、宇野愛海、小林れい、長南洸生、橋本菜摘、廣瀬智晴、吉田悟郎、渡辺翔が名を連ねている。
【池内風のコメント】
以前、本当の心の底から貧しかった時に、ある知り合いからラフティング(川下り)に誘われて断り続けていたのですが、あまりのしつこさに心が折れ一緒に奥多摩へ行ったことがありました。
自然に囲まれ、清流をゴムボートで降りながらフッと思ったのです。「帰りたい。これで交通費込みで8,000円くらいかぁ」と。金銭的な貧困はまさに心の底の底まで貧しくさせるんだと緩やかに流れるボートと、はしゃぐ若者に囲まれながら思ったのです。
「石油王だったら俺もこのラフティングを楽しめたのだろうなぁ」と。そして気がつきました。
「人間は何かを楽しむためにも楽しむ分の心の容量が必要なのだ」と。パソコンの容量が残っていないと動きが遅くなるのと一緒なのだと。その時は邪心が働き、他の参加者と交流を持とうとはしゃぐ若者たちに向かって無表情で眺めて「皆さんの欲望、私は見透かしていますよ。」という態度でテンションを下げることしか対抗策がなく、その行為でも更に人としての貧しさを自分に植え付ける形に終わりました。
そして時は過ぎ、今年。『子供部屋おじさん』という肩書きでやや居直りつつ実家に居座っている私は、堂々と母の作ったカレーうどんを食べながら「買ったものに10%かかり、収入に対して10%取られ、そこから源泉徴収税10.21%。市民税と国民健康保険、年金、電気代は上がっている。物価もグイグイと……」
と思い、これまでで一番複雑な味のカレーうどんになってしまいました。
これで一人暮らしの方はここに家賃がかかってくる。どうしたら良いんだ。地獄じゃないか。
演劇も物価が上がり、消費税もアップ。つまりは資材代や劇場費、電気代、弁当代も上がり、少しずつチケット代が高騰しています。世の中調べればアフィリエイトや広告収入、投資など、稼ぐための方法が出回ってるけど、それらを発見できない人たち、これまでの『真面目にコツコツ働く』ことが良しとされていた考え方からアップデートできない方は、『無能』『頭が悪い』などと切り捨てられ、肩身の狭い惨めな気持ちのまま生きていく。果たしてそんなことで良いのだろうか。でも、金銭的貧さと心の貧しさって直結しないだろうか。特別裕福でなくても、生活に困らずに何かあったときに耐えられる貯蓄があれば良いと思うけれど、それ、実は前より難しくなってないか。などと思いながら今の生活を守るために生きています、僕が。
今回貧困を通して、今、改めてこの世界で生きていく上での幸せのあり方を探りたいと思っています。