映画 / 映像を中心とした事業を展開する株式会社K2 Picturesが本格始動し、ともに映画製作を進める参加クリエイターが発表された。
元東映プロデューサーの紀伊宗之が代表取締役を務め、2023年8月より事業を開始した同社。「日本映画の新しい生態系をつくる」ことを掲げ、新たな国内外投資家の日本映画産業への参入促進やクリエイターへの利益還元を行いつつ、日本映画を世界の市場に向けて展開していくことを大きな目標としている。
今回発表されたのは、日本発の映画製作ファンド「K2P Film Fund Ⅰ(ケーツーピー フィルム ファンド ファースト)」の立ち上げと、映画製作が進行中の参加クリエイター。クリエイターは、紀伊とともに『キリエのうた』などを手がけた岩井俊二、『万引き家族』で2018年の『カンヌ国際映画祭』パルムドールを受賞し、2024年は同映画祭の審査員を務める是枝裕和、最新作『碁盤斬り』がイタリアの『ウディネ・ファーイースト映画祭』でブラック・ドラゴン賞(批評家賞)を受賞した白石和彌、『素晴らしき世界』で『第45回日本アカデミー賞』7部門受賞や『第56回シカゴ国際映画祭』と『第47回シアトル国際映画祭』の観客賞を受賞した西川美和、『呪術廻戦』や『チェンソーマン』などのアニメーション制作会社・MAPPA、紀伊プロデュースの『初恋』など数多くの作品を手がけ、手塚治虫の漫画『ミッドナイト』を実写化したことでも話題になった三池崇史が名を連ねている。発表に際し、岩井、是枝、白石、西川、三池からのコメントも到着している。
・岩井俊二
紀伊宗之のやりたいことなら絶対に応援したい。それがこのプロジェクトに参加した僕の純粋なる動機だ。
プロデューサーとしての彼は無類に頼もしい。彼にかかったら開かない鍵なんかないかのようだ。
彼とする仕事は無類に楽しい。それは彼に人を信じる力があるからだと思う。いつの時代も破天荒な発明家が時代を塗り替えて行く。今回、彼は僕らのために新しい乗り物を作ってくれた。K2 Pictures。
それは自動車のようでもあり、船のようでもある。飛行機にも潜水艦にもなり得る。
山に登ればそれはピッケルとアイゼンに変身してくれる。
そんな変幻自在、臨機応変なしなやかさがK2 Picturesの持ち味になることだろう。
そんなチームだったらフィルムメーカーだって本気で頑張れる。
僕も思いつく限りのアイディアを投じてこの恩に報いたい。
どんな冒険が僕らを待ち受けているだろう。
10年後、どんなチームに成長しているだろう。
とにかく今から何もかもが待ち遠しくて仕方がない。・是枝裕和
30年映画を作って来て感じていた既成の作り方への疑問や、違和感をどうしたら改善出来るか模索している途上で、紀伊さんたちの取り組みに出会いました。このチャレンジが成功して、映画界に良い風が吹き、新しい才能にチャンスが開かれる。そんな未来を実現しようとしている心意気に共感して、仲間に加えて頂きました。
共闘を楽しみにしています。・白石和彌
K2 Picturesの勇気ある船出に心から拍手を送ります。日本の映画界に革命を起こし、見えない壁を壊して下さい。今までの日本映画では実現不可能だった企画や、突出したユニークな才能が生まれることを期待しています。私も並走して世界を驚かせる映画を作りたい。よろしくお願いします。・西川美和
日本の映画の世界でキャリアを重ねながら抱くようになったのは、なぜか自信や希望よりも行き止まりのロープにつんのめるような感覚でした。これ以上映画を撮るのはなんとなく怖いような気がしていました。
それで「映画」から背を向けるように、従来の映画会社や出資者が決して歓迎しないような話を書いていたんです。すると紀伊さんという人が立ち上げたK2 Picturesが新しい投資で資金繰りしてそれを映画にする、と言ってくれた。本気だろうか、と思いました。
しかも若い作り手の独創的な企画にもチャンスの扉を開いているという。安全牌で固める発想ではなく、新しい人やきわどいものに必要十分な資金と環境で機会を作ることを目指すK2 Picturesの挑戦には乗ってみる価値があると思いました。
ある意味、K2 Picturesのファンドや新しい配給の仕組みは、危険な冒険にも思えます。実際、一筋縄ではいかないこともあるでしょう。でもそれが映画作りだし、どうせ映画を作るなら私は冒険をするチームと組みたい。それがこれから先に日本で映画を作っていく人たちの、新しい活路になっていく可能性があるならば尚更です。・三池崇史
『K2 Pictures』。 そして紀伊という怪しげな男について
紀伊=誠実な破壊者。
私はこう見ている。とてもパワフルだ。そして、そのエネルギーの源は、優しさだと思っている。
「もっと面白い映画を創って、もっと幸せになろうよ」
紀伊さんの笑顔に、そんなシンプルなメッセージを感じる。
だから私は『K2 Pictures』を信じている。
また、ファンドについての詳細は、『カンヌ国際映画祭』開催中の現地時間5月18日(土)に、映画祭メイン会場に近接するJWマリオット・カンヌで実施の記者会見で発表。会見には紀伊、三池、西川が登壇。「K2 Pictures」で監督デビューを果たす新人も同じ場で明らかになる。