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松居大悟×高木ユーナ対談 『不死身ラヴァーズ』で育んだ「実写化と原作の幸福な関係性」

2024.5.16

#MOVIE

監督と原作者が考える「実写化と原作の幸福な関係性」

─高木先生は映画の男女逆転について「姿かたちを変えても、魂が長谷部と甲野であればいい」とコメントされていましたよね。その魂は、作中でどのように結実していると感じましたか?

高木:口にするのがめちゃめちゃ恥ずかしいんですが……「愛」に結実していると思いました。私は自分の作品で、共通してずっと「愛」を描いてきたつもりでして。それは純愛に限った真心の話ではなく、恐怖・切なさ・憎しみなどなど、この世にある愛のすべてを網羅する勢いで。だから愛が表現できていれば、「りの」と「じゅん」が入れ替わっても何の問題もない。映画には、私がマンガで描こうとしていた以上の「愛」が詰め込まれていました。

松居:ありがとうございます。うれしい。

高木:めちゃめちゃよかったです。ずっと伝えたかった。

二人は人生の中で何度も出会い、その度にりのは「好き」と伝え、両想いになり、じゅんが《消える》という出来事を繰り返していく。どこまでも真っ直ぐな「好き」が起こす奇跡の結末とは――。 ©2024「不死身ラヴァーズ」製作委員会 ©高木ユーナ/講談社

─原作から一歩踏み込んだラストでしたよね。「じゅん」が消えるギミックに言及していて。

松居:脚本家やプロデューサーと話すうちに、みんな結局「どうして消えるんだろう」ってところが気になったんですよ。少しでもヒントがあったほうがいいよね、となって。それで話し合いを重ね、「こういうカラクリだったらどうだろう」って落としどころを探りました。

高木:「そうするんだ!」って驚きました。私、実写化は「原作に忠実である必要はない」と思っていて。先ほど言ったように「キャラクターの魂が再現されていることが大切」だから、消えるギミックや男女が入れ替わる設定は、松居さんの再構築に全てお任せ。正解でしたね。

─お二人の話を聞いていると「実写化と原作の幸福な関係性」が浮かんでくるようで。今後、実写化に際して松居さんは監督として、高木さんは原作者として、作品とどのように向き合っていこうと考えていらっしゃいますか?

高木:原作を好きでいてくれて懸命に再構築しようとする人が実写化したら、私と解釈が違っていても絶対に素敵な作品になるんですよ。だから原作の立場から何か口出しする必要はない、と思っています。そうして完成した作品を楽しむのが、原作者冥利に尽きる瞬間ですね。

松居:実写化と原作の幸せな関係といっても、ドラマと映画でニュアンスが違う気がしていて。ドラマは放送枠があって、限られた期間でつくらなきゃいけないですよね。なので時間や予算に追われることがあるけど……映画はうまくいかなかったら解散するし、興行としても勝つ見込みがあるから成立するわけで。という前提で考えると、原作と映画は基本的に「幸せな関係」じゃなければ生まれないと思います。

高木:たしかに。

松居:僕はとにかく、その媒体でしかできない表現に憧れを持つんですよ。「マンガにしかできない表現」とか「小説でしか成立しない言い回し」とか。だから自分も「映画にしかできない表現で、原作の描こうとしているテーマやメッセージを表現してみたい」と思う。それで信頼する人たちと「どうやって表現すれば、原作の魂を再構築できるだろうか」って話し合いながらつくる過程は、大事にしています。

─松居さんの「映画にしかできないこと」って、この『不死身ラヴァーズ』ではどんなところに表れているでしょうか?

松居:僕が大事にしたのは、「りの」の小さな迷いやためらいですね。「じゅん」に対して「好きだ好きだ」と声高に伝えまくるけれど、一方で「こんなに好きって言うの変じゃない?」とも感じている。グイグイ突き進む「りの」でもよかったけれど、「好き」って気持ちは動機が曖昧だから、そこに対して疑いや不安、悩みがあるほうが等身大だよな、って。時に迷いながら、でも走る「りの」が撮りたかった。

高木:わかる。走っている「りの」が、劇中を通していちばん素敵に見えたから。

松居:うれしい感想ですね。この狙い、見上さんには「表情を変えなくていいから、そういう葛藤を胸にしまいながらカメラの前に立ってみて」と伝えました。そこで彼女は「はぁっ」という息遣いや少しだけ目線を横に動かすとか、そういうささやかな動きだけで、簡単に割り切れない「りの」の複雑な心情を表してきた。これは実写で俳優がやるからこそ、感じられるところだろうと思いました。

映画『不死身ラヴァーズ』

5月10日(金)よりテアトル新宿ほか全国公開

Credit
見上愛 / 佐藤寛太
落合モトキ 大関れいか 平井珠生 米良まさひろ 本折最強さとし 岩本晟夢 アダム
青木柚  前田敦子  神野三鈴

監督:松居大悟
原作:高木ユーナ『不死身ラヴァーズ』(講談社「別冊少年マガジン」所載)
脚本:大野敏哉 松居大悟
製作幹事:メ~テレ ポニーキャニオン
配給:ポニーキャニオン
製作プロダクション:ダブ
©2024「不死身ラヴァーズ」製作委員会 ©高木ユーナ/講談社
2024|日本|カラー|103分|5.1ch|ヨーロピアンビスタ|映倫区分:G

<Story>
「消えたっていいよ、私が消さないから」
長谷部りのが“運命の相手”と信じて追いかけるのは、両想いになった瞬間、この世界から忽然と消えてしてしまう甲野じゅん。二人は人生の中で何度も出会い、その度にりのは「好き」と伝え、両想いになり、じゅんが《消える》という出来事を繰り返していく。それでも諦めないりののどこまでも真っ直ぐな「好き」が起こす奇跡の結末とは――。

公式サイト:https://undead-lovers.com/

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