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岡田利規と中村佳穂、それぞれの立場から語るチェルフィッチュの音楽劇

2024.9.18

東京芸術祭

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中村佳穂は、演劇の長時間のリハーサルが羨ましい

―お互いに、羨ましく思うことありますか。

中村:演劇に対して羨ましいというか、私がやってみたいなと思うのが、長時間稽古に入ること。

岡田:それな、って感じです(笑)。

中村:(笑)。音楽のライブは、たった一日でステージをあり得ないスピードで組み立てて破壊する、ということの繰り返しなので。

―おふたりとも海外で公演やライブをされていますが、海外と日本の観客の反応の違いなどについてはいかがですか?

中村:日本だと、演奏がかっちりしているほうが伝わりやすいですね。決められたテンポや流れに則った方が、照明などの演出も照準を合わせやすい。かつ、日本だと観客から観ても完成品として分かりやすいものが受け入れられやすい傾向はありますね。もしステージで感情的な部分が表に出て、尺がすごく長くなったりする場合は、「自分のやりたいことにこだわった公演です」と予め表明するか「感情的になっている」雰囲気を出してあげないと、困惑されたりする。逆にヨーロッパや台湾はそういう雰囲気を出さなくても伝わった感じがしました。

岡田:それってライブのやり方はオーディエンスの雰囲気を見てその瞬間に決めるんですか? 

中村:そうですね、私はDJっぽい感覚でライブを構成するので、1曲目を演奏している間に3、4曲目のことを考えています。「次、何まわそうかな」って。前回のヨーロッパツアーだとスローな曲を選びがちでした。日本語のMCが伝わりづらい分、曲の間で伝えていた気がします。

岡田:これは音楽が羨ましいなって思うことの一つなんですけど、音楽の現場ってジャンルを問わず、演劇よりはるかにデジタル化が進んでいると思うんです。デジタル化というのは、コンピューターのことではなくて、例えば楽譜には「これをこういう風に弾けばいいんですよ」って書いてあるじゃないですか。強く / 弱く、とか、速く / 遅くというのも含めて。そのニュアンスを楽譜に書き込める。それに匹敵する演劇のフォーマットっていうのはないんです。つまり、戯曲って、楽譜とは比べ物にならないくらいデジタル化の度合いは低い。

中村:確かに。楽譜はある種すぐに音を合わせれる言葉のようではありますね。ですが、各セクションと音に注目すると、楽譜を見て演奏している人と、観客を見て演奏している人と、舞台監督に気を遣って演奏している人が違っていたりしますね。

岡田:なるほど。

中村:人によってボーカルを聴いて演奏しているのか、客を見て演奏しているのかが違うから、本番でバラバラに感じる事があって。リハーサルスタジオに入ったときにそこを合わせるには時間がかかると思うことがあって。その意味で、私としてはもっと頻繁に集まりたいと思ってます。例えば、単純に「私のボーカルを聴いて!」という言葉で伝えると、プレイヤーがただ歌を聴きながら演奏することになり、道具としてただ機能するだけになってしまうので意図と違うんですよ。

岡田:それはそれで面白くないですね。ツアーってずっと同じメンバーなんですか?

中村:同じメンバーで行くことが多いです。ですが、演劇に比べると短期間で完成できるので、合間に他の仕事をいっぱい入れちゃう人が多いんですよね。

岡田:やりたいことをやるにはどれくらいの期間が必要というイメージですか。

中村:1カ月くらいはやってみたいです。やったことがないのでどれくらいがベストか私も分からないんですけどね。最近は無駄に集まってみることにしています。

岡田:すごくいいじゃないですか。

中村:わざわざしょぼいスタジオを、なるべく地方で取ってみたりするんです。それで、近くの喫茶店で時間をつぶしたりして。そういうプロセスを経たあとのチームってどういう空気になるのかな、っていうのを今試しているところです。

―中村さんはプレイヤーの機能のさせ方もすごく上手いと思いますよ。僕、西田修大さんのギターがすごく好きで色々なバンドでライブを観ているんですけど、中村さんのバンドでの西田さんが一番好きなんです。

中村:ありがとうございます。持論でしかないですけど、この人は楽譜の使い方について打ち合わせするより、一緒に飲みに行った方が音楽が良くなるとか、そういうコントロールの仕方をするのが得意かもしれないです。岡田さんは、リハーサルの間に段々揃っていく感覚があるんですか?

岡田:できていく感じはあります。それを揃っていくと表現するのかどうかは分からないですけど……できていきます。できていくし、育っていく。

中村:今回のような再演の場合、この期間寝かせていた、みたいな感じってあるんですか?

岡田:意識的に寝かせているわけではないけど、結果的に時間をおいたのが良かった、みたいなことが多々あります。かなりの間をとってリハーサルを開始すると、それはそれでまた楽しい。寝かせたり、リハーサルをしたりしながら上演回数を重ねれば作品も育っていくし、そういったことが全部面白いですね。

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