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岡田利規と中村佳穂、それぞれの立場から語るチェルフィッチュの音楽劇

2024.9.18

東京芸術祭

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チェルフィッチュ主宰の岡田利規が作 / 演出を行い、作曲家の藤倉大と組んだ『リビングルームのメタモルフォーシス』が、『東京芸術祭 2024』にあわせて再演される。音楽劇というふれこみの同作だが、岡田がインタビューでも述べている通り、音楽と演劇が抜き差しならぬ関係で共存している、実に稀有で希少な作品である。藤倉の手による室内楽的な音楽は演劇ファンにもリーチするだろうし、普段演劇を観ない音楽ファンにも訴求力を持ち得るだろう。弦楽四重奏の重厚な響きに多くの人が感嘆するはずである。そして、この度、この作品を2023年にドイツで観ていたというミュージシャンでシンガーソングライターの中村佳穂を招来し、岡田との対談を行った。果たして、音楽家だからこそ分かること、演出家だからこそ見えるものが浮き彫りになる、非常に濃密なクロストークが為されたのだった。

岡田利規と中村佳穂、お互いのクリエイションを意識したきっかけ

―おふたりともお互いの作品を観たり聴いたりされていたそうですね?

中村:はい。私が最初に観たのは2020年のチェルフィッチュ×金氏徹平『消しゴム森』です。「明日オフ日だな、どこか行きたいな」と思った時に、チラシが気になって観に行ったんです。

チェルフィッチュ×金氏徹平『消しゴム森』撮影:木奥惠三 写真提供:金沢21世紀美術館

中村:そのあと、友人でもある(七尾)旅人さんが出ていたので『未練の幽霊と怪物―「挫波」「敦賀」―』も観ました。旅人さんの使い方が絶妙だったのを覚えています。旅人さんって音楽を伝える力とか場を掌握する能力がすごく高い吟遊詩人のような方だから、ライブでも終電すぎるくらいまで弾くようなことをスパッとやってのけちゃう んですよ。でも『未練の幽霊と怪物』では、彼が劇中にパッと現れてすぐに消えるっていうのを何回も繰り返していたことで、逆に彼のミュージシャンシップが際立っている感じがしました。

中村佳穂(なかむら かほ)
1992年生まれ、ミュージシャン。20歳から京都にて音楽活動をスタート。ソロ、デュオ、バンド、様々な形態で、その音楽性を拡張させ続けている。見るたびに新しい発見があるその姿は、今後も国内外問わず、共鳴の輪を広げていく。2018年アルバム『AINOU』を発表。2019年に配信シングルを3曲リリース、CDも発表。2019年『FUJI ROCK FESTIVAL』出演、同年12月東京・新木場スタジオコーストにて自主企画『うたのげんざいち2019』を開催する等、数々の公演を行っている。2021年6月「アイミル」リリース。細田守監督最新作『竜とそばかすの姫』主人公すず / Belle の声、うたを担当。

岡田:僕は中村さんの曲を愛聴していました。最初に聴いたのは“きっとね!”という曲なんですけど、「苦しいくらいの痛みを頂戴」というフレーズの「だ」の部分を聴いたときに、「あっ!」って心を摑まれまして。一回そういう経験をさせられると、もう、特別な存在になっちゃうじゃないですか。

岡田利規(おかだ としき)
演劇作家 / 小説家 / チェルフィッチュ主宰。その手法における言葉と身体の独特な関係が注目され、2005年『三月の5日間』で第49回岸田國士戯曲賞を受賞。2016年からはドイツの公立劇場レパートリー作品の作・演出も継続的に務める。近年は​​様々な分野のアーティストとの協働を積極的に行い、歌劇『夕鶴』(2021年)でオペラの演出を、木ノ下歌舞伎『桜姫東文章』(2023年)で歌舞伎演目の脚本・演出を手がけるなど、活動の幅をさらに広げている。小説家としては、2007年に『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(新潮社)で第2回大江健三郎賞受賞。2022年に『ブロッコリーレボリューション』(新潮社)で第35回三島由紀夫賞および第64回熊日文学賞を受賞。

中村:嬉しいです。

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