INDEX
小さな成功体験が、人生の大きな波になる
ーSIRUPになってから7年。音楽を始めたときに描いていた理想の自分とはまた違う、心地いい自分を形成していると思いますが、今の自分をどのように捉えていますか?
SIRUP:今の自分がすっごく好き(笑)。同じように感じている人も多いと思うんですけど、30歳を越えてから、人生が楽しくなっていくんですよね。ある程度いろんな経験をしたのもあって、いろんなしがらみから解放される感覚があって。あとは、自分がもともと持っている感覚と似ていたり、楽しいなと思える人って、自分よりも歳下の人が多いんですけど、常にそういう友達といるから、日々アップデートされている感覚があります。
ー今の自分が好きと言えるのは素敵なことですね。この社会で生きていく上で、自分らしさや自分の選択に自信を持てない人はまだまだ多いと思うのですが、そこにはどのような背景があると思いますか?
SIRUP:この社会への絶望みたいなものを、僕自身もだし、特に若い世代は持っているなと思います。例えば、コロナの影響で入学式、卒業式を経験していない学生もいると思うし、自然災害や、不平等な法制度など、絶望することがめちゃくちゃにある。僕自身もこの数年で、これまでの人生で一番落ち込んだタイミングがあって、そのなかでも自分のツアーを回さなくちゃいけなかったり、音楽シーンを止めたくないと思いいろんな発言をしてきたんですけど、その度にSNSでアンチコメントが届いたりもして。「こういう社会だからそういった意見を言う人がいるんだよな」って現象として捉えているから、「叩かれる」という感覚ではないんですけど、とはいえ、攻撃的な言葉を見ると心はすごくやられる。

ーこの社会やあらゆる現状に絶望を感じているなかで、どのように希望や自信を持ち続けていますか?
SIRUP:その落ち込んだタイミングでは、人と関わること自体が無理になって、10日間くらい1人で過ごしてみたんですけど、それって今までの話と真逆じゃないですか。人と関わることで回復したり、前進することができたのに、人との関係を絶ってしまったら、僕の場合は本末転倒で。そのときに「どうせ死ぬし、好きなことやろ」と吹っ切れた感じがあったんです。
「どうせ死ぬ」ってよく言われる言葉だし、みんなも分かっちゃいるけど、その感覚を体に入れるのが難しい。死って絶望みたいに考えさせられているけど、水を火にかけたら沸騰するくらいシンプルなこと。現実として人生に終わりがあるから、いろんなこと悩んで躊躇したまま止まってしまうのはもったいないっていう、何百年と言われてきた本当にシンプルな話なんですけど。

SIRUP:この社会で生きていく上では、働いてお金を稼がないといけないけど、その中で自分を殺さずに楽しんでやっていくことが大切で、何かをやり続けることが健康的じゃなかったら、休んだ方がいいし、そうやって自分の好きなように生きていいと思います。その上で大切なのは、他者や自分を加害することは絶対にあってはいけないということ。誰かの人生を踏みにじること、差別や偏見、不平等が存在しているなかで自分だけが特権を行使していくことは正しくないと思っています。
ー好きなことをしていくことに、なかなか一歩を踏み出せなかったり、先延ばしにしてしまう人も多いと思うんですけど、そういった人にアドバイスがあれば教えてください。
SIRUP:小さいことからトレーニングしていくのがいいと思います。例えば、いつも同じ靴ばかり履いているけど、今日は違う靴を履いてみるとか。そういう、小さな変化を起こすこと、それを成功体験として認識すること、それが人生の大きな波になっていくと思います。大きな決断をして間違ったなと感じても、人生においての1フェーズなので、全然大丈夫。特に10代だったら、全然ここから巻き返せるから、大きい決断をしてみた方がいいかもしれない。無限の可能性があるから、怖がらなくていいと伝えたいですね。でも、まずは小さいことからやっていくことをおすすめします。

新たな一歩やチャレンジを前向きに踏み出すことを応援するFRISK「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」では、11組のアーティストやタレント、クリエイターが「あの頃」の自分に宛てた手紙を執筆。手紙の内容について、CINRA、J-WAVE、me and you、ナタリー、NiEW、QJWebでインタビューやトークをお届け。直筆の手紙全文は4月11日(木)から下北沢BONUS TRACKで開催されるFRISK『あの頃のジブンに届けたいコトバ展』で展示される(詳細はこちら)