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水滴を音に変換する

同じく坂本龍一+高谷史郎による『water state 1』も示唆的だ。一見すると何が何やら分からない対象だが、これは展示室中央の水盤に天井の装置から水滴を落下させ、その波紋の変化を音に変換しているものだ。水滴の落下は、本作が展示される関東地域の降水量データを元に制御されているらしい。長く留まっていれば、雨量の変化やそれに伴う照明の変化を実感できるだろう。

水の波紋を眺めながら耳を澄ませば、それと全く同じタイミング、同じ速度で広がっていく音の輪を感じる。次第に、波紋が立っているのはこの水盤なのか、自分の体なのか境界があやふやになっていく。人体は60%が水だというし、音を受け止めるとき、私たちの身体は少なからずこんな風になっているのかもしれない。