メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

『ラーメンどんぶり展』レポート。ラーメンから地球の未来に思いを馳せる充実の展覧会

2025.3.20

#ART

美濃と土と、広がる宇宙

「MINO COSMOS」

展示室を移動すると、ここから先は後半戦だ。本展は『ラーメンどんぶり展』だが、ラーメンどんぶりのほかに、もうひとつの明確なテーマがある。それは「美濃のやきもの」である。

そもそもは、美濃焼の多様さゆえの個性の曖昧さに悩む関係者たちが、ブランディングの相談を佐藤氏に持ちかけたのがこの企画の始まりだったそうだ。美濃焼に向き合う中で、佐藤氏がピンと来たのが「日本のラーメンどんぶりの9割は美濃で作られている」という衝撃の事実だった。そこから、誰にとっても身近な器であるラーメンどんぶりを入口にして、美濃のやきものの世界を紹介する企画が考案されたのだ。確かに『美濃のやきもの展』と『ラーメンどんぶり展』とでは、インパクトの差はものすごく大きい。ちなみに、先ほど見たアーティストラーメンどんぶりも勿論、美濃の企業によって実現したものである。

やきものに使う土が採れる鉱山。9割のラーメンどんぶりたちの、いわば故郷だ。

以降のエリアは、ついでの産地紹介などでは決してなく、本気で思考を促してくる展示で、非常に興味深い。おすすめは、まずモニターの短い映像を見てスケール感を掴むことだ。太古の昔は湖だった美濃エリアで、どれだけの年月をかけて豊かな土や粘土が形成されていったかを知ることができる。

「MINO COSMOS」(部分)

「MINO COSMOS」は展示室ほぼ全体を使ったインスタレーションだ。その中央には、やきものの原料となる土と石を集めたサークルが鎮座する。そして、この素材の小宇宙から放射状に「クラフト」「マスプロダクト」「アート」「タイル」「工業用セラミックス」の展示台が広がり、ジャンルごとに実際の作例が展示されている。食器も洗面台も壁のタイルも、考えてみれば美濃のやきものはそこにあることを忘れてしまうくらい、私たちの生活に深く根ざしている。土の変幻自在ぶりと、自分の陶器への無自覚ぶりに改めて驚かされる。

「MINO COSMOS」(部分)

壁面には、やきもの作りの様子を捉えた写真の展示が。やきもの作りの写真というと大体がろくろを回している手元だが(偏見?)、ここではなかなかピックアップされないような瞬間が切り取られていて面白い。例えば、外側にだけ釉薬をかけるために、大きな吸盤を使ってどんぶりを浸しているところ、あるいはマグカップ工場で、完成品を空中に張り巡らされたゴンドラで運んでいるところ、といった具合だ。全てに意味のあるたくさんの瞬間を経て、やきものは私たちの手元にあるのである。

「美濃焼曼荼羅」

そしてそんな「MINO COSMOS」と呼応するように、向かいの壁には「美濃焼曼荼羅」と題された大型の作品が。土から生まれた美濃焼の小宇宙をイラストで総覧する曼荼羅だ。この展示室の内容を2次元に落とし込んだもの、と言えるかもしれない。

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS