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社会への無関心と性別への思い込みを突きつける

本作の生徒たちが置かれている「18歳」とは、絶妙な年齢だ。選挙権は与えられたものの、大人の庇護下に置かれ、子ども扱いされる。政治的なこと、社会的なことに言及すると苦言を呈されることも多く、行動の責任を追及されることも少ない。『御上先生』での各エピソードからは、日本に生きる18歳が置かれた独特の感覚が伝わってくる。
一方で、その社会への無関心さに年齢は関係ないことも痛感させられる。どこかで起きた殺人事件、教師の不祥事による家庭の崩壊、金融マンのリストラ。ニュースで取り上げられるような事件だが、当事者として巻き込まれなければ、他人事に過ぎないと思っている人がほとんどだろう。『御上先生』を見ていると、「テレビの前のお前もそう思っていないか?」と、喉元に刃を突きつけられるような気分になる。

物語のはじまりは、ある殺人事件。国家公務員試験会場で、ある受験生が、別の受験生によって刺し殺された。犯人の母親・冴島悠子(常磐貴子)は、隣徳学院に勤務していた時、隣徳学院生徒・神崎拓斗(奥平大兼)に自身の不倫を暴露され、学院と家庭を追われていた。神崎は、報道部の部員としての正義感に従って、学院の事件を校内新聞という形で報道してきた。その神崎の行動が、殺人事件につながった可能性を、御上は「バタフライエフェクト」という言葉を用いて指摘する。自分の行動が社会と繋がる可能性があるという意識の欠如。第1話から、これまで無関係だと切り捨てて来た事件の数々が脳裏をよぎった。神崎は、その後、御上の指摘なども踏まえて自身の行動を省みて以降、真摯に殺人事件の調査に向き合っていく。
『御上先生』は、無関心さだけではなく、無意識にある性別への思い込みにも切り込んで来る。冴島は、隣徳学院の同僚男性教師と不倫していたにも関わらず、男性教師は学院系列の学習塾に左遷されるだけで、冴島は学院からはおろか、教育業界からも姿を消していた。また、御上が官僚兼教師として担任を任されたクラスは、前年まで若い女性教師である是枝文香(吉岡里帆)が担当していたクラスだった。なぜ女性ばかりが仕事上の不利益を被るのか。御上が、是枝や生徒たちが当たり前に受け入れていたことを指摘するたびに、社会にある不均衡に思いを馳せる。

さらに、第1話、第2話で描かれてきた殺人事件についてのエピソードの締めとして、第2話の最後では、事件の犯人・真山弓弦(堀田真由)が女性だったことが明かされる。ドラマを見ていた自分も、勝手に犯人は男性ではないかという無意識の思い込みをしていたと、自覚させられた。