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令和ならではの学園ドラマ『御上先生』が突きつける無関心と思い込み

2025.2.23

#MOVIE

©TBS
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TBSの日曜劇場としては、『ドラゴン桜』(2021年)以来の学園ドラマとなった松坂桃李主演『御上先生』。オープニングからエンドロールまでクールな映像と、教育現場の問題を強く問うメッセージ性も含めて話題となっている。

『ドラゴン桜』に続いて『マイファミリー』(2022年)、『VIVANT』(2023年)、『アンチヒーロー』(2024年)など、話題となった日曜劇場作品を担当してきた飯田和孝がプロデューサーを務めた本作。脚本は、長らく演劇界で活躍し、同じく松坂桃李が主演した映画『新聞記者』の脚本を担当した詩森ろばが執筆した。

「エヴァンゲリオン」シリーズや映画「進撃の巨人」などの鷺巣詩郎が15年ぶりにドラマのテーマ曲を手掛け、ONE OK ROCKによって書き下ろされた主題歌”Puppets Can’t Control You”も人気となっている本作の第5話までをドラマ映画ライターの古澤椋子がレビューする。

※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

「考えて」で生徒を導く令和ならではの学園ドラマ

自らを取り上げた校内新聞を手にする御上孝(松坂桃李)©TBS
自らを取り上げた校内新聞を手にする御上孝(松坂桃李)©TBS

『御上先生』(TBS系)では第1話から「パーソナル・イズ・ポリティカル」という言葉が、繰り返し登場する。これは「個人的なことは政治的なこと」という意味だが、第5話まで見ていくうちに、鋭く研ぎ澄まされた刃として、この言葉が心に深く刺さっていった。時に、自分の中にある思い込みに切り込んで来て、血が流れるような感覚になる。それでも見るのを止められない。見なければいけない、そして向き合わなければいけないと、テレビの前で姿勢を正す。

昭和の『3年B組金八先生』(TBS系)、平成の『ごくせん』(日本テレビ系)など、教師が全身全霊で生徒と向き合う学園ドラマは、その時代の社会を映してきた。その点において、『御上先生』は、令和を代表する学園ドラマになりそうだ。御上先生は、生徒を救わない。その代わりに導く。彼がよく言う「考えて」は、決して相手任せにする言葉ではない。その言葉からは、生徒自身の思考を刺激し、他人に委ねず、自ら考え、責任を持つ意識を育てようという意志が伝わって来る。

はじまりはONE OK ROCKと『VIVANT』プロデューサーの出会いから

生徒に語りかける御上と副担任の是枝文香(吉岡里帆)©TBS
生徒に語りかける御上と副担任の是枝文香(吉岡里帆)©TBS

『御上先生』は、『VIVANT』(TBS系)や『アンチヒーロー』(TBS系)などを手掛けてきた飯田和孝プロデューサーが企画したドラマである。本人へのインタビューによれば、企画の発端は、飯田が2016年にNHKで放送された、1,000人の18歳世代が、アーティスト・ONE OK ROCKと共に1回限りのパフォーマンスを行うイベント「ONE OK ROCK 18祭 2016」を見たことで、それを見て、声をあげる18歳の若者と、それを支える大人の姿を描きたいと強く感じ、企画を立ち上げたという。そして、この企画に社会派要素を吹き込んだのは、劇作家・舞台演出家・脚本家として活躍し、映画『新聞記者』で第43回日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞した詩森ろば。「官僚教師」というあまり見たことがない設定を生み出したことで、違和感なく社会と接続する学園ドラマに仕上がっている。

主題歌は、先のONE OK ROCKによる書き下ろし曲” Puppets Can’t Control You”。涼やかに見えて高温で燃えている青白い炎のような本作の最後に、力強いロックサウンドが鳴り響く。主人公・御上孝(松坂桃李)と生徒たちの叫びを聞いているような感覚になる。

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