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岸野雄一×出口亮太対談 「楽しい」からやり直す、芸術文化と地域コミュニティ

2024.5.8

長崎市北公民館・チトセピアホール・市民活動センター

#PR #ART

自主性を重視するからこそ、「建築家のようにではなく、庭師のようにデザインする」

—お話を聞いていると、さきほど出口さんが仰った「不可分性」と「越境」がキーワードという指摘が響きます。岸野さんのようにそれをしなやかに実践できる方もいれば、必要を感じながらもその手前でもがく人もいる。それがリアルな現在地なんだな、と。

出口:最近、若い世代で地方公務員の離職率が増加しているというニュースもありましたが、実際にみなさん非常に忙しいとは思うんです。

岸野:その忙しさのなかで、出口さんはよくやっているね。

出口:いえいえ。でも施設を運営していて思うのは、ガチガチに決めすぎないことです。完璧な立て付けを作るのは代理店とかの方が上手いんだろうけど、僕は最近は、最初だけコーディネートして、あとはそちらで仲良くやってくださいというのを大事にしています。

—手を離すというか。

出口:そう。たしかブライアン・イーノが、建築家のようにではなく、庭師のようにデザインしようということを言っていて。つまり、完成品を出すのではなく、最初だけデザインして、あとは植物の成長に合わせて剪定したり軌道修正をしたりすればいいと。たしかにホールの場合はある程度パッケージされたものが必要だけど、公民館や市民活動に関しては途中で手放すことが大事だと思うんです。どうせ思い通りにはならないですからね。

岸野:そりゃそうですよ。僕も公園のDJは自分の趣味の世界を作っているわけではない。ヒップホップを流す子もいれば、萌え系のアニソンを流す子もいる。それでいいんです。流石に公園にハーシュノイズとか流す子がいたら、「ちょっと考えようか」となりますけど。

—客観性も大事だぞ、と(笑)。

岸野:客観性というよりも公共性ですよね。そこは伸びすぎた枝なので、ちょっと整えて。自分の趣味的な範疇ではハーシュノイズは大好きなんですけれども、公共空間は自分の趣味性を発露する場所ではない、ということが、実際にやってみると分かるんですね。反応がダイレクトにきますから。ですので、一度やってみてもらう、体験してもらう、というかたちにしています。個人の表現自体には何の制限も加えたくないですから。

さらに言うと、音楽で街をジャックするという考え方は、現在では有効性を欠いているとも思います。地元の音楽フェスで「俺たちのロックで爺さんたちをガツンと言わせてやろう」と50代のおっさんが言ってたりするのですが、若者たちは「もうちょっと静かな場所に移りましょう」と後退りしていなくなるだけです。現在のように趣味嗜好の小さな島宇宙が無数に存在し、それらが交わらない世界では、他者の意識変革を目指すのは音楽の役割として向いていない、と考えます。興味を持ってもらうとしても、アプローチの仕方や別のフレームづくりを考えないと。ネット空間では簡単にできる「同好の志を募る」というのが、公共空間ではいかに困難になるか、そのことがあらわになるのが興味深いですね。

出口:枠組みだけ作って、あとは自主性に委ねるのが良いのかなと。それで言うと、2023年末に市民活動センターがコーディネーターになり、子どもの貧困問題を扱うNPOやボランティア団体と、障害者の方や障害者支援施設、子ども食堂が集うクリスマス交流会を長崎市役所を会場に開催したんです。これも個別の団体からクリスマスに何かしたいという情報があって、どうせならみんなでやってみようと実施したものでしたが、子育てや教育、障害者福祉のような分野がゆるい枠組みで交わる場が生まれて可能性を感じました。

—そのきっかけがクリスマスというのもいいですね。それなら多くの人、いろんな属性の人が気軽に参加できる。

出口:そうなんです。その一つひとつは小さな活動かもしれないけど、こうした試みが新聞やSNSなどで広がれば、個別の活動を知ってもらうきっかけになるかもしれない。

というか、社会ってそもそもいろんな人が混在している場所だよなと思うんです。障害のある人もいるし、貧困の家庭もある。それを、貧困の家庭は生活福祉課で見ましょうとなるところに一種の限界が生まれてしまう。だったらそれらをゆるくつなげてみることができないか。最近はそうした中間支援的な活動にも力を入れていきたいと考えています。

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