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大回顧展『田名網敬一 記憶の冒険』レポート 日本が誇る現代アーティストの軌跡

2024.8.19

#ART

新しい手法と爆裂するコラージュ魂

田名網敬一にとって重要な作品制作法であるコラージュの手法は、そもそも若き日に個人的な楽しみのために始まったものだという。本展では第2章で初期のコラージュ作品を見ることができるが、注目したいのは第7章から展示されている2000年台以降の作品である。

『アルチンボルドの迷宮』2024年

こちらは野菜を組み合わせて肖像画を描いたアルチンボルドよろしく、自らの「記憶畑」で実った野菜で人物を組み上げたインスタレーション『アルチンボルドの迷宮』。本作は構想画の段階では人物の胸や小屋の真ん中にトンネルが開通し、円形の線路が敷かれていた。作家は、そこをイメージの出荷・入荷を繰り返す貨物列車が走るインスタレーションを構想していたようだが、立体化の段階で変更されたようだ(ちょっと残念)。奥にある、作家のアトリエの一部を再現した小屋をそっと覗いてみよう。

同・内部

小屋には田名網の描いた様々なパーツ、そして作家独特の「色指定原画」が所狭しと並べられている。怪物のような女、飛行機などのモチーフは切り抜いた状態でストックされているものもあり、作家がそれらの無限に近い組み合わせを試行錯誤しながら画面を構成していることがよくわかる。

第7章展示風景(色指定原画)

「色指定原画」とは、手描きのドローイングを白黒コピーしたものをコラージュし、色鉛筆で着彩、その後で色見本のチップを貼り付けたものだ。2000年代からは、まず田名網が「色指定原画」を作成し、アシスタントがそれを元にPCでデータを作成するという制作方法が取られているそうな。データをこね回して完成形を探るのではなく、あくまで脳内で完成させたイメージを出力するための効率的な方法としてデジタル技術を導入しているのである。これはデザインとアートに境界線を引きたくない、と考える田名網らしさが詰まった、「アートの版下」とでもいうべきものである。

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