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大回顧展『田名網敬一 記憶の冒険』レポート 日本が誇る現代アーティストの軌跡

2024.8.19

#ART

国立新美術館にて、田名網敬一の大回顧展『田名網敬一 記憶の冒険』が開催されている。

まず名前を聞いて、恥ずかしながらパッとどんな作品か出てこない。でもチラシや公式サイトをひと目見れば、「これか」と見覚えがある……そんな人が多いのではないだろうか。田名網敬一は戦後日本を代表するアーティストのひとり。活動開始の時期でいうと岡本太郎のちょっと後で、横尾忠則とほぼ同世代だ。そして御年88歳という2024年現在も、デザインとアートの垣根を超えてバリバリに現役の御仁である。

同展は画家の60年以上にわたる創造活動を総覧する初の回顧展だ。展示作品数は厳選を重ねても500点をゆうに越え、11章仕立ての大規模な展示となっている(内覧の時間は90分以上あったのに、それでも全てを鑑賞し尽くすことはできなかった)。そのため、後で図録に掲載されていた田名網本人のコメントを見た時は本当にひっくり返りそうになった。

「自分の人生は結局、これだけだったのか」

これだけのものをぶちまけておきながら、なおそんな事を言うなんて。いったい田名網敬一とは何者なのか。以下、心が震えたポイント全てに触れることはできないが、できる限り率直に本展の見どころをレポートしていきたい。長文になるが、お付き合いいただければ幸いである。

会場エントランス

橋を渡って、田名網ワールドへ

冒頭で来場者を迎えるのは、新作インスタレーション『百橋図』。ガウディの放物線アーチを思わせる太鼓橋が何層にも重なり、トコトコ歩く奇怪な生き物や、水飛沫をあげて滝を登る鯉がプロジェクションマッピングで描かれる。よく見ると、さりげなく鯉にまたがって金髪のセクシー美女が登場しているところが面白い(写真右下にご注目)。

『百橋図』2024年

作品そのものだけではなく、そばのパネルに記されている田名網自身の解説コメントを見逃さないでほしい。こちら側とあちら側、聖と俗、生と死を繋ぐ「橋」のモチーフについて、作家の原風景や夢想がエッセイのように丁寧に綴られており、それはこの先の展示を読み解くうえでとても重要なヒントになるからだ。

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