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デジタル盆栽と「対話」する
ではあらためて『Sleeping Memory』という作品を見てみよう。大きなスクリーンの前に立つと、粒子と音が蠢いている。鑑賞者の動きに応じて作品が変化するようになっていて、右手の動きは映像に、左手の動きは音響に影響を与えるという。ゲームなどで使用される「キネクト」というセンサーを使用しているそうだ。

インタラクティブな映像の元になっているのは、大宮盆栽美術館が所蔵する推定樹齢100年の「黒松」を3Dスキャンして得られたデータを粒子状にしたもの。音響は、さいたま市内で採集した環境音をもとに構成されている。断片化されているのではっきりとは分からないが、大宮公園のセミの声、電車の音、走る救急車の音などが使われているそうだ。
人の動きに敏感に反応し、ゆっくりと粒子が集まっては、盆栽の形になっていく。かと思えば、盆栽が揺れ、飛散する。視点がぐっと近寄って、盆栽の中に入り込んだようになる瞬間も。気が付けばデジタル盆栽との対話に夢中になってしまう。

この他に、作品の基本コンセプトを表現した映像、鑑賞者の姿もリアルタイムで投影される映像の各モニターと、使用された音源を再生する装置が併置されており、それらを合わせてひとつの展示空間が構成されている。