加藤修平がNOT WONK / SADFRANKとして活動してきたこと、そのすべてのアクションに通底してきたのは、「自分 / あなたの価値を誰かの手に委ねてはいけない」という姿勢である。彼がパンクに共鳴してきたのも、オルタナティブという言葉を単なるジャンルとしてではなく「生きる道の選択肢」として表明してきたのも、構造とシステムによって命に値札が貼られ存在が数値化されていくばかりの現代を生き抜くための新たなユニティを求める精神性からだった。2019年に地元・苫小牧で開催された『YOUR NAME』では、個々の存在のミニマムな証明である「名前」を掲げ、名前を呼び合い対話を重ねることから生まれる信頼と自治を求めた。さらに2023年に『gel』をリリースしたSADFRANKでは、人々に投げかけた「存在とは」という問いを自らに向けるようにして、自己の輪郭を求めながら音楽の宇宙を旅し続けた。常に個人に向き合い、そして個人の存在を押し流さんとするものにNOを突きつけ、生きて生きて生き続けることを鼓舞する視座が彼の表現を前に推し進めてきたのだ。
そんな加藤が興した新たな祭りが『FAHDAY 2024』であり、開催発表とともに放たれたステイトメントの言葉を借りれば「表現の交換市」という看板のもとに人が集う新たな広場だ。
2020年から数年続いたコロナ禍によって半ば強制的に地元・苫小牧で長い時間を過ごしたこと。その日々の中で、加藤が見過ごしていた人の営み。そして、その営みこそが個々の命の主張であり、止まることなく積み重ねられてきた文化そのものなのだという視座——それらを束ね、街という文化の中で交わった人々と手を取り、人と人の連鎖によって大きな円を描きたいという精神性が表されるであろうこの市場について、加藤に洗いざらい語ってもらったのがこのインタビューである。結果として、加藤という人間の一切変わらぬ人間観と、今我々が手元に手繰り寄せるべきものがクリアに見えてくる語録となった。
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