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出版レーベル「地下BOOKS」の小野寺伝助は、ZINEのあり方も「パンク的」と考える

2024.10.31

#BOOK

グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。

9月3日は、浅草のデザインホテル「TOE LIBRARY」のニシオヨシアキさんからの紹介で、出版レーベル「地下BOOKS」の小野寺伝助さんが登場。「地下BOOKS」立ち上げのきっかけになったZINEについてや、おすすめの本に感じるパンク精神について伺いました。

ZINEを出版するために、「地下BOOKS」を立ち上げ

Celeina(MC):出版レーベル「地下BOOKS」は、どんな経緯でスタートされたのですか?

小野寺:ずっと文章を書いているんですが、それをZINEにまとめた時に、本屋さんに置いてほしいと思って、2018年にレーベルという形で立ち上げました。

タカノ(MC):きっかけになったZINEはどういう内容なんですか?

小野寺:クソみたいな世界を生き抜くためのパンク的読書』というタイトルです。

タカノ:そのZINEを持ってきていただいていますが、パンチがあるタイトルなのに、スタイリッシュで、カフェに置いてあるようなすごく素敵な装丁です。

Celeina:そのギャップがすごく素敵ですよね。どんな内容になっているんでしょうか?

小野寺:一言で言うと、本を紹介する本です。

Celeina:見開きで本を1冊ずつ紹介されていて、考察コンテンツにも繋がる要素を感じます。YouTubeで映画の考察をしている動画がありますが、ちょっと似ている雰囲気がありますね。

ZINEのあり方も「パンク的」だと思う

タカノ:この「パンク的」という概念はどういった考え方なんですか?

小野寺:僕はずっとパンクバンドをやっていて、パンクが大好きなんです。パンクってカウンターカルチャーで、大きなものに反抗したり、既存のシステムに対抗する文化として生まれたという側面が、僕は好きなんです。ただ単に1つの音楽ジャンルというだけじゃなくて、個人の生き方や哲学にも通ずる部分があって、考え方や思想、あり方というところにまで、大きく広げて捉えることができる文化だと考えています。この本では、その「パンク的」な概念に通ずる本を紹介しています。

タカノ:よく考えたら、ZINEという媒体も、インディーズメディアというか、個人が出しているものじゃないですか。大手出版社の流通には乗らないというところで、「パンク的」という概念に通ずる部分がありそうですよね。

小野寺:まさに、ZINEのあり方も僕はパンクだと思っています。

タカノ:ZINEはパンク。良いですね。概念が広がる感じで。

Celeina:このZINEはどこで読めますか?

小野寺:いわゆる一般的な本屋さんには置いていませんが、独立系書店と呼ばれるようなリトルプレスやZINEをよく扱っている本屋さんで販売していただいています。今は100店舗以上で買えると思いますし、いろんな本屋さんの通販でも扱ってくださっているので、ネットで調べていただければ手に入ると思います。

芥川賞受賞作品から感じる、パンク要素

Celeina:ちなみに、「パンク的」なおすすめの最新の本はありますか?

小野寺:今日、何冊か持ってきました。つい最近、芥川賞を受賞された松永K三蔵さんの『バリ山行』という小説なんですが、パンクの要素を感じるところがあるので持ってきました。登山道から外れた道なき道であるバリエーションルートを行く登山のことを「バリ山行」というのですが、それがテーマになっている山岳小説です。

会社員の主人公の職場に、周囲から浮いている男性がいて、その人がバリエーションルートの山行をやっているらしいと知るところから、その方とどんどん仲良くなって、一緒に登山へ行くことにり、登山道じゃない道へ入っていくというシナリオになっています。決められた道や常識から外れて、危険な道を行くことで感じられる本質的な体験が描かれていて、そこにパンクに通ずるようなドキドキ感や、あり方と通ずる気がしました。

タカノ:なるほど、パンク文学ですね。僕もこの本を読んでるんですが、その視点では読んでいなかったので、新たな着眼点を知りました。バリエーションルートで登山をしている、メガさんという男性がね。

小野寺:そうなんです。メガさんのことをパンクだと思いました。職場で浮いているメガさんというおじさんが、登山アプリでは「メガデス」というハンドルネームを使っているんです。パンクじゃなくて、メタルのバンドの名前なんですけど(笑)。職場で浮いていて、マイペースで周りに流されないとか、常識にとらわれず価値判断の基準が自分の内側にあるとか、僕はそういう人に惹かれてしまいます。

『ガザ日記』から見えてくる戦争のリアルさ

タカノ:まさかの『バリ山行』がパンク文学として紹介していただけるとは。そして、もう1冊は何ですか?

小野寺:これは最近読んだ『ガザ日記』という本です。パレスチナ人の作家の方が、イスラエルの侵攻が始まってからの3ヶ月間を書いた、本当に生々しい日記です。パンクの方たちってNO WAR、反戦、戦争反対が基本のスタンスとしてあるんです。でもNO WARと言うのは簡単ですが、なぜ戦争が起きてしまうのか、自分には何ができるのか、ということをちゃんと考えた上で、NO WARと言わなきゃいけないと僕は思っているんです。それを知る上でも、『ガザ日記』という本は、今ガザで何が起きているのかということをわかりやすく知ることができます。

これを読んでいると、戦争映画を観ている気持ちになってくるんです。例えば、この本の冒頭は、主人公が地元へ帰って海水浴をしているところから始まるんです。向こうの軍艦からミサイルが打ち込まれて、それを見ながら「また、ただの嫌がらせだろう」と、いつも通りみたいな感じで海を泳いでいるんですが、どんどんミサイルが打ち込まれてきて、「やべえ、やべえ」と逃げ出すんですよ。ついさっきまでいた場所に、コンクリート片が落ちてきたりとかもして。「映画じゃん」と思ってしまうんですが、これが映画じゃなくてリアルで起きているということに、結構びっくりします。作家の方が書いた日記なので、ぐいぐい引き込まれて読めるのと同時に、今何が起きているのかを、わかりやすく知ることができるので、すごくおすすめです。

タカノ:背景も含めて、全部知って考えた上でNO WARと言うべきという小野寺さんのスタンスが素晴らしいなと思いました。僕も読んでみます。

Celeina:気になる2冊のご紹介ありがとうございます。さて「FIST BUMP」はグータッチで繋ぐ友達の輪ということで、お友達をご紹介してもらっています。どんな方をご紹介していただけますか?

小野寺:今年の7月に、『『百年の孤独』を代わりに読む』という本をハヤカワ文庫から出版された、作家で編集者の友田とんさんをご紹介します。

Celeina:代わりに読む、という視点が気になりますね。今日は出版レーベル「地下BOOKS」の小野寺伝助さんをお迎えしました。ありがとうございました。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann

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